top of page

夢をみる島

自分は、人生の重要な転換点で見た「夢」を大切にしている。

それは奥底の自分のイメージ世界が提示した、自分への呼びかけとして。大いなるメタファーとして。

時にそれを絵として定着させている。

(これは、結婚した時に見た夢。

一つの水滴を二人が引き伸ばしてレンズのようにして支えている。

一滴の水は、海の一滴でしかない。その程度しか僕らは知ることはできない。ただ、その一滴の中にもミクロレベルでは無限の水の粒子が入って、一滴の水を形づくっている。

そうしたものを、二人で支え、大切にしていく、という夢か? と勝手に受け取った。)

加計呂麻島(かけろまじま)という、奄美群島内の島がある。

かつて、日本と琉球とを結ぶ海上交通路の要衝だった諸鈍は、奄美大島の南、加計呂麻島の東南端部に位置する。

「諸鈍長浜に打ちゃげ引く波や諸鈍ミヤラビの目笑歯口」

と琉球歌にもうたわれた美しく静かな集落。

日本内地の芸能と琉球古来の神遊びや祭式舞踊がルーツの村踊りや村芝居などが伝播し、奄美特有の感性豊かな民俗芸能「諸鈍シバヤ」として開花している。

諸鈍シバヤは謎の芸能で、平家の落人・平資盛が土地の人を招いて. 上演したのが始まりと言い伝えられている。以前、民俗学の上映会でも取り上げた。

→動画 【民族文化映像研究所フィルム作品紹介】No.9諸鈍シバヤ 1978年/40分/鹿児島県大島郡瀬戸内町諸鈍瀬戸内町教育委員会委嘱

【演目】

諸鈍シバヤ

①イッソウ=楽屋入り 

②サンバト=三番叟 

③ククワ節=平家の残党が平敦盛の墓を訪ねて須磨の浦をさまよう様子を表す踊り 

④シンジョウ節=種子島の名高い法師シンジョウが踊ったという踊り 

⑤キンコウ節=吉田兼好が歌った唄と踊り 

⑧シシキリ=浮かれている美女をシシが襲おうとすると、狩人が来てシシを退治する 

⑦ダットドン=座頭殿がすりかえられた琵琶を探し歩く 

⑧スクテングワ=唐の天下統一を祝って踊ったという棒踊り 

⑨タマティユ=中国の美女玉露姫は親不孝で、酒を飲んでは踊り狂っていた。その天罰がくだって大蛇にのまれるという人形芝居 

⑩鎌踊り=豊年を祝う踊り 

⑪高き山=仁徳天皇の遺徳を偲ぶという歌謡と太鼓踊り

民族文化映像研究所より

 

歌手のUAさんは祖先が奄美大島であり、自分も母系は同じルーツを持つが、先日UAさんと話していて、加計呂麻島は夢見の島だと言っていた。夢で様々なリアリティーとアクセスするお婆さん達が多くいる島である、と。

なんと素敵な島だろう。 いい夢を見るために、加計呂麻島へいつか行きたい。

UAさんの7年ぶりのオリジナル・アルバムである「JaPo」は、日本の島が育んだ太古のリズムが現代風にアレンジされて存分に秘められている。淡い夢のように深く強く。

室町時代まで、いい夢は吉夢として売り買いされていたほどだ。 きっと、それは現代では小説や唄や詩となっていくのだろう。作者がどれほど深く自分の内的イメージと交流しているか、それが包み隠さず作品として表に出てくる。

村上春樹さんの小説を読んでいると、夢が重要な意味を持っていた古代の残滓を感じる。

「騎士団長殺し」上下二巻のボリュームは、夢の世界では一瞬の体験として行われるのだろうが、それを現実世界に引っ張り出して時系列で並べていく作業の中で、あれだけの分量になってしまうのだろう。時間をかけて読みこむ体験にこそ、意味がある。

自分の夢と日常的にアクセスしている自分は思うのだが、村上春樹の小説世界のような場所を、どんな人でも日々、夢見の世界で体験している。

そして、それはその人本来の生き方へと影響を与えている。生きざまが、表現そのものだから。 

たとえ、覚えていようとも覚えていまいとも。

bottom of page