

伝統食は、土地といのちの記憶である。―長寿県・長野から考える食とウェルビーイング
長野大学で「長寿県長野―ウェルビーイングな暮らしと伝統食の可能性」というテーマで講義をしました。 新校舎もできたばかりで、通っている学生さんも羨ましいですね。 長野県は、日本有数の長寿県です。平均寿命は男性全国2位、女性4位(2020年)。さらに、介護を必要とせず自立して暮らせる期間を示す「平均自立期間」は、男女とも全国トップ(2024年)。 なぜ、長野県では人々が健やかに長く生きられるのでしょうか。 その答えは、医療だけではなく、土地の自然、日々の暮らし、食文化、そして人と人とのつながりの中に隠されているように思います。 今回、特に注目したのは「伝統食」です。 ■伝統食は、自然の制約から生まれた知恵 長野県は海のない山国。標高差が大きく、冬は厳しく、地域によって気候も大きく異なります。 しかし、こうした自然の制約こそが、独自の食文化を育ててきました。 たとえば「野沢菜漬け」。 野沢温泉では、温泉の湯を利用して野沢菜を洗う「お菜洗い」という文化があります。温泉が単なる入浴施設ではなく、生活を支える資源だったのです。 「おやき」は、季節の野菜や山菜


一本の柿の木が、未来の食卓を育てる
甘柿を収穫した。 枝から手に受け取るとずっしり重い。ひと口かじると、秋の光が甘さになったようだった。 「柿が赤くなると医者が青くなる」 昔の人は、柿の実る季節をこんな言葉で表した。栄養の乏しかった時代、身近な木から得られる果実がどれほど身体を支えていたことだろう。医者の出番が減るほど暮らしが豊かになるのは、うれしいことだ。 柿はビタミンCが豊富で、カロテノイドや食物繊維も含まれる。ビタミンCはコラーゲンの合成に必要で、食物繊維は腸の働きを支える。果実の甘さはエネルギー源にもなる。 ところで、軽井沢では甘柿は採れないのだろうか。ちょっとお隣の上田に甘柿を取りに行ったから。 「渋柿しか育たない」と言い切ることはできないが、冷涼な高原では、甘柿の渋が自然に抜ける暖かさが不足しやすいから渋みが残るようだ。 そもそも、甘柿と渋柿の違いは、砂糖の量だけでは説明できない。 渋みのもとは、唾液のたんぱく質と結びつく水溶性のタンニン。甘柿にもタンニンはあるが、育つ過程で水に溶けにくくなり渋く感じなくなる。渋柿は食べ頃になっても水溶性のタンニンが残る。甘さがあっても


「長寿県・長野―ウェルビーイングな暮らしと伝統食の可能性」@長野大学
長寿県・長野の「おいしい暮らし」には、どんな知恵があるのでしょうか。 10月23日(金)、客員教授を務める長野大学で、「長寿県・長野―ウェルビーイングな暮らしと伝統食の可能性」というテーマでお話しします。一般の方も無料で参加できる講義です(事前登録は必要になります)。 今回の講義は、長野大学を中心に、信州東信エリアの食文化と人材育成を考える「美食シティ・教育研究プロジェクト」の一環です。 長野大学は、1966年に地元自治体の出資による「公設民営」の大学として誕生し、2017年に公立大学となった、上田市に根ざす大学です。福祉、環境、地域づくりなど、暮らしに直結する学びを大切にし、地域そのものを学びの場としてきました。2026年には新しい学部も誕生し、地域とともに未来をつくる大学として進化を続けています。こうした「学問を暮らしの中にひらく」姿勢は、私自身の考える健康学とも深く響き合うものです。 「美食」と聞くと特別な料理を思い浮かべるかもしれません。 でも、私が関心を持っているのは、土地の気候の中で育った食材、発酵の知恵、食卓を囲む時間など、暮らしの


味噌ジェラート@鹿教湯温泉(イズミヤ ジェラート)
1982年の鹿教湯温泉「’82 マイコン・イン」のことを書いた。古い湯治場に、まだ誰も見たことのない「未来」を持ち込もうとした不思議で魅力的な試み。 →●「’82 マイコン・イン 鹿教湯温泉」&坂本龍一さん 当時のチラシを見つけた場所は、鹿教湯温泉で9月12日(土) にオープンする「イズミヤ ジェラート」。廃業した巨大な「いづみや旅館 鹿教湯温泉」の再生事業。まず1階から。今後は素泊まりも稼働していくらしい。 イズミヤ ジェラートオープン前にご好意で食べさせていただいたが、これが実においしい! 今回いただいて驚いたのが、味噌ジェラートだった。 その味噌をつくっているのが、鹿教湯から近い丸子の大桂商店。ここがまた、とても素晴らしいお味噌屋さんなのです。我が家は、自分で作った手作り味噌と大桂商店の味噌とのマリアージュで食べているほど(小諸の山吹味噌も買います)。自分の腸内細菌は、長野の微生物でできてます。 大桂商店の創業は文政4年、1821年。200年以上にわたって丸子で味噌を造り続けている。原料は大豆、米、塩という、ごくシンプルなもの。麹室で麹蓋を


ハルニレぽっぽ@旭川
One Health Summitで呼んでいただいた「緑の森動物病院」のみなさんがとにかく素晴らしい方々ばかり。 旭川にある「緑の森どうぶつ病院 旭神センター病院」の隣にできた「ハルニレぽっぽ」は、ペットと一緒に過ごせるおしゃれなカフェ。 2024年9月にオープンし、「人・どうぶつ・自然のすべてが健康であること(ワンヘルス)」をコンセプトにしている。 土を敷いて、その上にウッドチップが敷かれた温かみのある店内。ペットがそこでおしっこをしても、次亜塩素酸ですぐに消毒することができるし、飼い主も気兼ねなくゆっくりできる。 そもそも、動物が落ち着く空間は、動物の一種である人間も落ち着くはずで、どうぶつを中心に作られた空間と商品構成には、日本や世界での最先端を行っていると感じる。 特に素敵だったのが、「アニマルウェルフェア牛乳」の飲み比べ。 アニマルウェルフェア(Animal Welfare)とは、動物の「心身の健康」や「幸福」を確保しようという考え方です。 動物を感情や痛みを感じる生きた存在として尊重し、できる限りストレスや苦痛の少ない快適な環境で飼育


ONSEN食堂@豊平峡温泉 藤井聡太 カレー
そして、豊平峡温泉に入ってさらに驚いたのは、ドアを入るとすでにカレーのスパイスに匂いがして、名物の本格インドカレーに大行列ができていたこと。 スタッフもすべてインドの方々、ではなくネパールの方々で、日本の温泉と思えない自然に溶け込んだ雰囲気。 豊平峡温泉の現オーナー(2代目社長)が、札幌・すすきので経営していたインドカレー店のスタッフと機材を、そのまま温泉へ移籍させたからしい。 「ONSEN食堂」では、本場のコック(主にネパール人スタッフ)たちが、数十種類のスパイスと大量の玉ねぎをベースにした絶品カレーと、特大の焼き立てナンを提供し続けている。 現在では「温泉に入るため」ではなく「カレーを食べるため」だけに訪れるリピーターも多いらしく、大行列ができていた。 とにかく、ナンが美味しかった。 2022年に札幌・定山渓温泉で開催された「王位戦七番勝負 第2局」にて、藤井聡太さんが2日目の昼食に選んだのが、豊平峡温泉(ONSEN食堂)の「エビカリー」。自分も将棋好きとしてエビカリーを注文して堪能。美味しかったです。 ちなみに、藤井さんはカレーが好物らしく


「ヒカリヤ」@長野県松本市
長野県松本市にある「ヒカリヤ」は、明治期の商家「光屋」を美しくリノベーションした素敵なレストラン。 同じ敷地内に、中庭を挟んで日本料理の「ヒガシ」とナチュレフレンチの「ニシ」の2つの独立した店舗がある。 「ヒカリヤ ニシ」でお食事させてもらったが、重厚な白壁の漆喰蔵をリノベーションしたモダンな空間。 マクロビオティックの思想を取り入れ、体に優しい「ナチュレフレンチ」を独自の世界でつくりあげている。 すべて信州の野菜をベースにしているので、夜遅い食事でもとっても体によく身体の負担が少ない! お酒を飲まない自分にはペアリングのドリンクも、ボタニカルドリンクで、発酵食材を中心に作られていて、どれだけ飲んでもおいいしかった。 豊かな清流や湧水を使って、信州産フレッシュキャビア(国産チョウザメ養殖)があるなんてびっくり!ガストロノミーで注目されているんですね。わさび農園の綺麗な湧水で6年以上の歳月をかけてチョウザメが育てられて、新たな特産品として信州キャビアが生産されているとは知らず。とても美味しかったです。食の世界も色々と発見が多いなぁ。 「レストラン.


桑の実 桑椹 お蚕さま
桑の実(マルベリー)は、庭に勝手に生えているけれど、高い栄養価と上品な甘みがある。漢方や薬膳でも「桑椹(そうじん)」と呼ばれて、長寿や滋養の生薬として重宝されてきた。体に潤いと栄養を与える「補血」と、エネルギーを補う「補腎(ほじん)」の生薬。 アントシアニンは眼精疲労に効く、と言われているので、スマホやPCで疲れている現代人には必要かも。小さいのに鉄分とビタミンCが豊富なのも不思議だ。自然界で桑の葉にしか含まれない成分「DNJ(1-デオキシノジリマイシン)」は、小腸での糖質の吸収をブロックし、血糖値上昇を抑える効果もある。 手が届くものは手でとるけれど、高い場所にあるものは木をゆする。枝をゆらす。 ぼたぼたと名もなき虫と共に桑の実が落ちてくる。 クワガタとかをとるときと同じ。 洗ってそのまま食べても美味しい。 ドライフルーツにしてヨーグルトのトッピングで食べるのが一番簡単で美味しい。ジャムにも挑戦したい。 桑の実はこうして人間が食べれるけど、もともと、桑の葉はお蚕さまが食べるので、養蚕業が盛んだった長野では桑を育てていた。だから、こうして自然に生


長生の湯(ちょうせいのゆ)@南紀白浜温泉
和歌山県・南紀白浜温泉の「長生の湯(ちょうせいのゆ)」。 まず、名前がいい。 長生きできそう。ロンジェビティ(Longevity)! 泉質はナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉(弱アルカリ性低張性高温泉)(旧泉質名:重曹泉) 弱アルカリ性(pH値 約7.6)+メタケイ酸(111.3mg)が多い美肌の湯。 メインの「長生温泉(源泉温度 約78℃)」に「東谷温泉(源泉温度 約60℃)」の2つの源泉をブレンドしながら温度調整をしているとのことだった。 硫黄臭も漂うので、硫黄効果で体もあたたまり、解毒作用もある。 野外の露天風呂の作り方も美しく(+備長炭風呂も)、源泉をそのまま飲める「飲泉」もあり、さすが源泉を直接お持ちの温泉だった。 同じ敷地に和歌山ラーメンを食べれる場所もあり、ラーメン好きにはたまらないだろう。 和歌山県 白浜温泉「長生の湯」 和歌山県西牟婁郡白浜町2763 泉質:ナトリウムー炭酸水素塩・塩化物温泉(弱アルカリ性低張性高温泉) https://choseinoyu.info/onsen-info/


飛行と玉ねぎの収穫
大分から東京へかえるとき、ふと窓を見たときに空を飛んでいるものがあると、一瞬UFO(未確認飛行物体)かと思うけど、単なる飛行機(既確認飛行物体)だった。飛行機が並走するだけでも新鮮。 空からの遊覧飛行は、地球を見ているだけで、色々と感じることがある。 軽井沢に帰った後、大型の台風が来る、ということで、長野県全体はそこまで影響なさそうだけれど、急いでたまねぎを収穫。乾かしたりして、半年分くらいは自給自足の玉ねぎでもちそう。自分たちでそだてた野菜は、やはり愛着が違う。 すべてを自給自足にはできないけど、だからこその分業制の世界。 東京であらゆる人の胃袋にはいるものも、農家さん百姓さんのたゆまない努力のおかげである、ということは、自分たちで土にふれることで感じることができるもの。