

イメージは、どこへ行くのだろう――浅間国際フォトフェスティバル「After the Image」を歩いて
浅間国際フォトフェスティバル2026 PHOTO MIYOTAへ行った。毎年足を運んでいる。御代田は軽井沢のすぐお隣。 今年のテーマは、「After the Image――イメージのその後」。 写真は、シャッターを切った瞬間に完成するのだろうか。展示を歩きながら、そんなことが頭に浮かんだ。 写真は、ある瞬間を切り取るものだと思われている。しかし実際には、その瞬間から写真の長い旅が始まる。誰かに見られ、記憶され、忘れられ、別の時代に発見される。複製され、加工され、ときには本来とは違う意味を与えられる。 そう考えると、写真とは「過去を保存するもの」というより、過去から未来へ送り出された、小さな舟のようなものなのかもしれない。 今回、とりわけ印象に残ったのが石橋英之の《Trails》だった。 https://asamaphotofes.jp/exhibitions/02-%E7%9F%B3%E6%A9%8B-%E8%8B%B1%E4%B9%8B/ 石橋は、古典写真技法と現代のテクノロジーを行き来しながら、アーカイブやファウンドフォト、物質そのものへの実


「束芋画 国宝」後期展示@ポーラ ミュージアム アネックス
銀座のポーラ ミュージアム アネックスで、束芋「束芋画 国宝」展の後期展示を見た。 →●前期展示の感想 束芋さんの作品を見ていると、いつも「私たちは何をもって人間を見ているのだろう」と思う。 今回、ことさら印象に残ったのは、顔がないことだった。 人間を描くとき、私たちはどうしても顔を見ようとする。 顔からその人の感情を読み、性格を想像し、喜びや悲しみを理解しようとする。肖像画の歴史もまた、顔を通して人間の内面へ近づこうとしてきた歴史だったのかもしれない。 ところが束芋さんの世界では、顔が消えている。 それなのに、不思議なほど「人間」がいる。 むしろ顔がないことで、その人が何者なのかという社会的な情報が剥がれ落ち、もっと深いところにある人間そのものが現れてくる。 肉体を描いているようで、肉体を描いていない。 そこにあるのは、皮膚の下に隠されていた記憶や感情、欲望、不安、孤独、あるいは死者の気配のようなものだ。 人間の身体を借りながら、束芋さんが描いているのは、霊魂の側から見た人間の真実なのではないか、とさえ思った。 そして、その世界を支えているのが


湯治文化 温泉の楽園 松本@松本市立博物館
松本の街を歩いていると、ときどき不思議な感覚になる。 目の前には城下町の整然とした道があり、少し顔を上げれば、その向こうに北アルプスの山々が連なっている。人間がつくった街と、人間よりはるか以前からそこにある山。その二つが、同じ風景の中に静かに収まっている。 けれども、松本という土地を本当に理解するためには、目に見える風景だけでは足りない。その地下には、もう一つの松本がある。 火山があり、断層があり、複雑な地質がある。何万年、何十万年という時間をかけて、大地の内部を水がめぐり、熱を受け、岩石の成分を溶かし込み、再び地上へと戻ってくる。 それが、温泉である。 温泉とは、単なる「温かい水」ではない。地下深くに隠されていた土地の記憶が、液体となって地上へ現れたものだ。 松本市立博物館の常設展示も素晴らしかった。 松本市立博物館の展示を見ながら、松本はまさに「温泉の楽園」だったのだと知った。 明治時代につくられた温泉番付には、全国409か所もの温泉が並んでいる。その中には、浅間温泉、白糸の湯と呼ばれた現在の美ヶ原温泉、そして白骨温泉など、松本周辺の名湯が名


「さくらももこ展」@松本市立博物館
「さくらももこ展」@松本市立博物館に行った。 我が家族は、「ちびまるこ」「コジコジ」の大ファンである。 私も小学生のころから、さくらももこファンだ。 さくらももこ展を見ながら、あらためて不思議に思った。 なぜ、こんなにも長いあいだ、さくらももこの作品は古びないのだろう。 『ちびまる子ちゃん』に描かれているのは、決して特別な世界ではない。 世界を救う英雄もいなければ、大事件が起きるわけでもない。 学校へ行き、宿題を忘れ、家族に叱られ、友だちに嫉妬し、くだらないことで笑い、時にはひどく落ち込む。 そこにあるのは、誰の人生にもあるような「たいしたことのない出来事」ばかりだ。 けれども、さくらももこの目を通すと、その「たいしたことのなさ」が、突然、人生そのもののように見えてくる。 さくらももこは、人間を美化しなかった。 子どもは純真で、大人は分別がある、というような描き方をしない。 子どもはずるいし、怠けるし、見栄を張る。 大人もまた、嫉妬し、失敗し、妙なことにこだわる。 家族だからといっていつも愛し合っているわけではないし、友だちだからといっていつも仲


8/20(Thr)(19:00-19:30):「保護者のリアルな声を聴く かざこし と」(Insta Live)
軽井沢風越学園(かざこしがくえん)ってご存じですか? 2020年4月に軽井沢町に開校した、幼稚園から中学校までの13年間(2歳〜15歳)の一貫教育を行う私立の「幼小中混在校」です。本城慎之介さん(楽天の創業メンバー)によって設立され、義務教育学校と幼稚園を一体化した新しい形態の学校として注目を集めています。 広大な森をキャンパスと見立てて、野性的で混沌としたカオスなところ、あまり子どもをコントロールしようとしていないところが気に入っています。 そもそも、私が長く勤めていた古巣の東大病院を辞めようと決断したのも、この学校の存在のおかげです。 子どもを自由に伸び伸びと育てたい。ダメとか禁止用語で縛りたくない。自然や宇宙から学び取るような地球とつながった環境で子どもを育てたいと思い、子どもが幼稚園に入るタイミングで直観的に軽井沢に移住することを決断したのです。決断時間は、軽井沢に着いて高原の空気を吸って、ほんの2-3秒だったと思います。笑 風越は、とてもユニークで楽しい自由でカオスな学校なのですが、より広く学園入園者を募るため、今年から学校でLive


内藤愛「午時葵の子守唄 A Lullaby for Cistus」@ポーラギンザ
「束芋画 国宝」と同じポーラミュージアムアネックス1階では、美術作家・内藤愛さんによる作品展「午時葵の子守唄 A Lullaby for Cistus」が開催されています(6月2日〜8月3日)。 自然や生命でも、「静」の中には、ミクロ世界での「動」があり、静の中の動、動の中の静、静の中の動・・・ミクロにもマクロにも入れ子状になりながら生命は循環している。静と動は対立概念ではなくて相補概念。 生と死を含む自然界の循環や調和が、繭のような儚いSoft sculptureや、動く彫刻の中で、絶え間ない生命運動を感じさせる没入的な空間となっている。 銀座の喧騒の中、生命の息吹と、自己の身体感覚、自然とのつながりに静かに向き合える展示空間。 束芋さんの展示のあとに改めて見ると、ミクロの決死圏のように、生命体の中に入りこんだような気持になるから不思議だった。 内藤 愛 「午時葵の子守唄 A Lullaby for Cistus」 ポーラ ギンザ 2026年6月2日(火)~8月3日(月) https://www.pola.co.jp/about/news/2


「束芋画 国宝」@ポーラ ミュージアム アネックス
束芋さんの展覧会「束芋画 国宝」@ポーラ ミュージアム アネックス(東京・中央区銀座)。 束芋さんの緻密な絵。そして人間からあえて魂を抜いたような浄土のような世界観にしびれた。 話題になっている「国宝」は小説も映画もまだ見てないけれど、束芋さんの「国宝」は人形浄瑠璃のよう。 人間の魂とはなんぞや?と考えさせられる素晴らしい展示。 今は前期(7/17-8/9)で挿絵500点の半分。8/11-8/30から後期で残りが展示される。 展示形式も素敵だったし、何より束芋さんの肉筆のデッサンが和紙?巻物?の上に生々しく刻印されて、目と心を奪われた。 束芋さんは、「風呂」に関しても映像インスタレーション作品『にっぽんの湯屋(男湯)』もあり、コンテンポラリーダンス作品『FURO』(イスラエルのバットシェヴァ舞踊団)もあり、いつか風呂つながりで何か生まれるといいな。 「束芋画 国宝」 2026年7月17日(金)〜2026年8月30日(日) 入場料 無料 会場 ポーラ ミュージアム アネックス http://www.po-holdings.co.jp/m-annex


「ビート&アートたけし展」「蔦重FIRST SELECTION」@銀座 蔦屋書店
銀座 蔦屋書店にて、北野武(ビートたけし)さんの絵画展示「ビート&アートたけし展」が2026年7月20日(月)〜7月21日(火)の2日間だけ開催された。ちょうどその時に銀座にいたこともあり、事前応募した上で見てきた。 たけしさんの質感をともなった絵画は恐ろしく素敵なものばかりで驚いた。テーマも多彩で、漫才の風景、心象風景、龍、シュールなど、たけしさんの脳内を覗くような展示だった。 さらに驚いたのは、ほぼ原画そのもの?!と思えるような国宝や重要文化財のデジタル保存に使われる超高精細技術(最大180億画素)を現代アートに応用した展示だったこと。株式会社サビアの技術は驚くべきもの。原画は大切に保存し、展示や巡回展はサビアの画像技術を作った展示用作品をつくることで、世界中で同時に展覧会もできるようになるだろう。 これはまさに浮世絵の考え方と同じ。浮世絵の原画は厳重補完し、摺師の技術で正式な複製品が世にでていく。そのために、CCCさんは『株式会社蔦屋重三郎商店』という会社まで作っているし、この技術は世界を驚かせるだろう。油絵のタッチまでも再現されていて驚愕


ワンヘルス(One Health)+DAO(分散型自律組織) =anima DAO
北海道の旅は温泉旅行ではなく、【ワンヘルスサミット】が主な目的! ワンヘルス(One Health)とは、「人の健康」「動物の健康」「環境の健全性」を1つの健康として一体的に守っていくという世界的な考え方。 人間の眼だけではなく、動物の眼、地球の眼、3つの眼から見て「三方良し」にしていく、という考え方は極めて重要だと思う。 「ワンヘルス(One Health)」のように複雑な要素が同時に関わっているものを、具体的にどう実現するのか? 今回のシンポジウムは【DAO(分散型自律組織)】を一つの突破口にしようというアイディアがあり、そこに強く共鳴した。私も、温泉の未来を「コモンズ(共有財産)」考える上で【DAO(分散型自律組織)】が突破口だと思っているから。 DAO(分散型自律組織)とは、中央管理者が存在せず、参加者同士がブロックチェーン上で自律的に運営する場のこと。 株式会社のようなトップダウン型ではなく、フラットな関係を大切にする。 温泉で言えば、温泉資源を守る(源泉の適正管理、配管の修繕、景観保全・・・)には多額の資金や人手が必要だけど、人口減


びえい白金温泉 白ひげの滝@北海道美瑛町
美瑛町にある白金温泉にも足を運んだ。 美瑛町は、北海道のほぼ中央(大雪山国立公園のふもと)で、「日本で最も美しい村」連合にも加盟している町。 白金温泉は標高約600メートルの山麓にあり、「杖忘れの湯」と称される名湯。 1950年に湧出した際、当時の美瑛町長が「泥の中から貴重なプラチナ(白金)を見つけた思いだ」と喜んだことからその名が付けられたらしい。実際にプラチナが出ているわけではないけれど、水の美しさはそのイメージをつたえている。 泉質: ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-硫酸塩・塩化物泉(低張性中性高温泉) 溶存物質総量(ガス成分を除くミネラル濃度)も5,200mg/kg(5g/L)と非常に豊富な成分を含んでいる。 日本の温泉基準「溶存物質量1,000mg/kg以上」を大きく超えているけれど、体液の浸透圧(約8,800mg/kg)よりは低いので分類は「低張性中性高温泉」となる。 陰イオンの硫酸イオン(SO₄²⁻)が多いので、肌の脂分を洗い流してすべすべにする美肌効果や、血管拡張での血行促進効果が強い。 陽イオンのカルシウムやマグネシウムが