

地球の身体の動きに美を感じる 黄金の銀杏
慶応日吉キャンパス。 黄金色の銀杏が美しく、大勢の人が記念撮影に。 やはり人は美しいものを求めるのだなぁ、と。 人が持つ美意識については、新刊本でも記載しています。 人の美意識はまず動きのなかで表現されていく。 だからこそ、見る側も、身体の動きの中に美を発見する目をもっていなければいけない。 特に、自由な時間と空間の中で、人は内在する美を最大限に発揮できる。 そう考えると、自然に美を感じているときは、地球が持つ身体の動きとして、自然の美を発見しているときでもある。 ================= 「人間の中にあるいのちや魂は目に見えない。 だからこそ、人は体の動きを通じて、自分のうちにあるものを表現していく。 そうした体の表現には「美」が関係してくる。 動いている本人が、動きによって美的感覚を育てている。だからこそ、成長を待つ側も体の動きに美を感じ発見する目を育てていく必要がある。 自由な空間と時間が保証されると、人間の体も心も何らかの表現を生み出そうとする。そこで生まれてくるものは、本人の意識を大きく超えたものであることもある。それは創造


「オスジェメオス + バリー・マッギー One More 展」@ワタリウム美術館
ワタリウム美術館に「オスジェメオス + バリー・マッギー One More 展」を見に行った。 すごく刺激的で自由で面白い展示だった。 偶然、館長の和多利恵津子さんがおられたので、たくさん話をさせていただいた。 神宮前や原宿にも、商業ビルが増え、大手デベロッパーの大規模開発が増え、唐突に場の雰囲気が変わってしまう。そのことで、文化的な場、創造の場、自由な表現の場が減っていること自体を嘆かれていた。 ワタリウム美術館としてはどんなに規模が小さくとも、ここには自由な場があるよ、ということを伝えていきたい、と。小さい力は誰の中にもある。 目的は儲けではないためいつも経営はカツカツだけれど、あえて収入と支出もトントンになるようにしている。もし展覧会の売り上げが多い場合でも、その余剰分はアーティストの制作費にあてて、ちょうどいいバランスになるようにしている、と。 余剰な富を蓄積させず、自分が儲けをとるのではなく、天から分け与えられた余剰物は創造行為に投資してお返しする、という考えが本当に素晴らしいと思いました。まさに芸術の神髄だとも。 私自身も、「誰かが考


「岡本太郎 生きることは遊ぶこと」@川崎市岡本太郎美術館
川崎市岡本太郎美術館の常設展「岡本太郎 生きることは遊ぶこと」(2025年10月28日 (火)-2026年03月29日 (日))。 生きることは遊ぶこと、という展示の名前が素晴らしい。 遊ぶ。 目的もなく打算もなく計画もない。 動きたいから動き、叫びたいから叫ぶ。 ただ動き、走り、飛び跳ねて、遊ぶ。 そうした純粋な行為を膨らませていくこと自体が、幸福への道だとさえ思う。 太郎さんの絵を見ていると、何かがハッとする。本物の絵が放つ霊力はすさまじい。美術館は霊感を受け取るパワースポット。 川崎市岡本太郎美術館は、来年春から3年!も長期休館にはいってしまうので、ぜひ2026年3月までに一度遊びに行ってほしいですー。 (*2026年3月30日~2029年3月31日の期間、改修工事に伴い展示室での展覧会を休止します。とのこと。) ----------------------- 「つねに死の予感に戦慄する。 だが死に対面した時にこそ。 生の歓喜が ぞくぞくっとわきあがるのだ。 血を流しながら、 にっこり笑おう。」 ----------------------


「タローマン大万博 川崎パビリオン」@川崎市岡本太郎美術館
川崎市岡本太郎美術館では、「タローマン大万博 川崎パビリオン」。もやっていた。 EXPO2025は終わった、と思いきや、ここでは川崎パビリオンとしてタローマン大万博が行われている、と。 しかも、タローマン自体はパロディでありながら、虚実が入り混じって、虚数と実数が融合した複素数平面にようになっていて、オイラーの定理のように、数学における指数関数(e)と虚数(i)と円周率(π)を混ぜ合わせて、実数に戻る(e^iπ=-1)、のような不思議な世界。 芸術をエンタメとパロディとフィクションで包み込みながら、それ自体が現代美術の様相を呈しつつ。能と狂言の関係性のようにシリアスなものをユーモアで相対化するような不思議な位相は、まさに陰と陽の太極図。 映画まで見に行ったファンとしては、太郎(&藤井亮さん)の「真剣に命がけで遊べ」というのがリアルに感じ取れる。 面白かったし、実物見れて感動。 しかも、この展示だけなら無料で見れる!という太っ腹。素晴らしい! 12/14まで。 ----------------------- 常設展「生きることは遊ぶこと」関連展示イ


俳優座「存在証明」@シアタートラム
俳優座の「存在証明」@シアタートラム、を観た。素晴らしい舞台! 絶対的な真理を追求する実在する数学者たちがモデル。 戦争という異常が日常に置き換わった時に、現実世界とどう折り合いをつけていくか。 数学的な真理を追求することを、わたしたちが真善美、理想、あるべきもの、に置き換えて考えてみると、誰にでも心当たりがある事柄だと思えた。 「ことば」というものも考えさせられた。 特殊なことばを扱う人は、状況次第ではあたまがおかしい、とされ、排除や隔離の対象になる。ただ、そのことばは、日常とは違う層では深い真実の響きを含んだもので、そのことばの深層の意味を発見できる人がいるかどうかで、ことばは違う意味を帯びる。 ことばは時に数学であり詩であり芸術であり、呪術でもあり。 ことば自体も出会うべき人を待っているのかもしれない、とも思った。 「存在証明」というタイトルが暗示するように、わたしはここにいる、という存在の地平は、より深い次元にある「いのち」のことばとの出会いを求めているようだ。それはルーツ、根、と言ってもよいかもしれない。 素晴らしい演劇体験。まさに魂の


稲葉俊郎『肯定からあなたの物語は始まる』(講談社)(2025年11月17日)
やっと新刊の書影が出てお見せできます。(AmazonはKindle版をクリックすると見れます) 11/17月曜日に、稲葉俊郎『肯定からあなたの物語は始まる』(講談社)という新しい単著が出ます。 私がコロナ禍で必死に診療をしていたとき、否定の言葉の渦があらゆる領域に押し寄せていました。その渦に飲み込まれ心身の傷を負っている人を多数見ました。「ことばのくすり」という本を2023年に大和書房から出したものも、懸命に私なりの抵抗を見せた本でした。今回、コロナが明けた時代の中で、今回の本を書いています。 2024年は、あまりの診療の過酷さからバランスを崩して医療現場から一歩引いた時期でした。 ただ、ちょうどその時に象徴的な死から再生や「蘇り」とも言えることがたくさんありました。それは神仏の力であり、地球(自然や温泉)の力でした。 同じ2023年ころに、「山のメディスン―弱さをゆるし、生きる力をつむぐ―」(ライフサイエンス出版)を書きあげたとき、私は人間を師とするのではなく、自然そのものを師と仰ぎ、師である自然との関係性の中で登山や夏山の山岳医療にも明け暮れ


富士山(不死山)
太郎(or太陽の塔)からの禅の公案として、700万年後の未来の人類をイメージしていたとき、新幹線から富士山(不死山)が顔を見せた。不思議な雲と共に。 人間は、いづれ雲や山のような存在物に溶け込んでいく、有機物と無機物との区別は一時的なもの、この世がそもそも仮の宿(「常世(とこよ)」に対する「現世(うつしよ)」)、と考えていたのは、ほんの100年前くらいのコモンセンス(共通感覚)。 雲には水として、山には菌が分解した養分として、霊は山に帰り祖先として。死者は、土に還り、天に昇り、循環の環そのものとなる。 人間は山や水、自然へと変化することで、過去・現在・未来という「とき」を結び、生類や自然という「いのち」も結び、壮大な円環を結ぶ。しめ縄のように、しっかりと。 そんな時代の記憶は、今でも神話や物語が、コトバという乗り物で遠い太鼓のように語りかけていること。 悠久の過去への眼差しと、未来へのヴィジョンこそが、【現在】を変容させる。 「芸術は呪術だ」 太郎の祈りは、次世代に託された。


ふくろうの湯@ 和歌山市本町
和歌山市のふくろうの湯。 ここも不思議な場にたたずむ、パンチの効いた日本有数の超レア温泉だった。 まず立地が不思議。商店街があり、上には商業ビルが建っている。その地下に温泉がある。 ビルの地下から日本有数!の濃厚な高濃度温泉が見つかっている。日本でも5本の指に入るのでは?という高濃度。すごい価値。 温泉には高張性や低張性という表示がある。 これは、浸透圧が高い、ということで、つまりは水に濃厚に何かが溶けている、ということ。 色々なものが溶け込んでいると、濃度があがり、浸透圧があがる。 浸透圧が高いお湯にはいると、皮膚を介して、水が体から抜けていくので(皮膚が浸透膜になって濃度を一定にしようとする)、脱水になりやすい。湯あたりもしやすいが、効いた~~~という実感が得やすい。 ------------------- ふくろうの湯 泉質:含鉄―ナトリウム―塩化物 炭酸水素塩強塩温泉 分類:中性高張性低温泉 ------------------- 泉質名にたくさんの名前が出ているのは、それだけバラエティーに富んだものが含まれている、ということ。...


花山温泉 薬師の湯@和歌山市
和歌山市街で突然現れる花山温泉。 地下500m(東京タワーより深い場所)から噴き出す炭酸ガスで自噴している。まさに地球の力、地球の音。 花山の薬師如来には、古来から天皇が熊野詣でをするとき立ち寄ったとされる場所。 その時には温泉は出ていなかったようだが、すごい圧が地下から押し出されていて、その見えざる力は古代の人が聖地として守ろうとしたことにもつながっているだろう。 1500年ころにはこの巨大なお寺は戦禍で焼失するも、聖地が聖地であるといわれるところで、1960年代に温泉が噴出。 今でも炭酸ガスの噴き出す力だけで温泉が噴出していて、地球の恩恵を受けて温泉に入らせてもらう。 花山温泉の泉質は【二酸化炭素・鉄-カルシウム・マグネシウム-塩化物泉】。これだけ泉質名に名前がずらずら出てくるのは珍しく、つまり、それだけ多様な物質が混在している、ということ(20%以上含有していると泉質名として表示できる)。 二酸化炭素が溶け込むためには源泉は低い必要があるので、源泉温度は26度くらい。 だから、炭酸ガスがブクブク泡のように出る源泉も冷泉(霊泉)として大切に使


秋から冬へ 軽井沢
軽井沢は少しずつ秋から冬へ、の雰囲気。 1つの葉、そして隣の葉、根っこは同じでも光や養分の影響、あらゆる要素で微妙に違いが出る。まるでひとりひとりの人間の違いのように。 色のグラデーションが興味深くなる時期。 都内(0m近く)と軽井沢(1000m)を往復していると、地球の地...