

『未完で生まれて未完で生きて、未完で死ぬ: 横尾忠則自伝』
横尾忠則さんの自伝『未完で生まれて未完で生きて、未完で死ぬ』を読んだ。 すごい本だ。言葉にしようとすると、一つには絞れない。 三島由紀夫、ジョンとヨーコ、アンディ・ウォーホール、サルバドール・ダリ・・。20世紀という時代そのものをつくった伝説的な人たちが、次々と登場する。 けれども不思議なのは、彼らが「偉人」として登場しないことだ。 横尾さんの人生の中に、ごく自然に現れる。会って、話して、食事をして、仕事をして、ときには喧嘩をし、笑い、別れる。歴史上の人物たちが、歴史前の生身の人間としてそこにいる。その距離感がすごい。 それは、横尾さん自身が彼らを必要以上に神格化しないからなのだと思う。相手がジョン・レノンでもアンディ・ウォーホールでもサルバドール・ダリでも、一人の人間として見ている。 そして同時に、自分自身のことも神格化しない。格好悪いこと、怖かったこと、嫉妬も、迷いも、病気も、死への恐怖も、ありのままを書く。 不思議な出来事に遭遇すれば、「こんなことが起きた」と、そのまま書く。 その徹底した正直さが、この本の大きな魅力だと思った。...


山下完和『咲ける場所に置いてくれ』
『咲かせるのではなく、「咲ける場所」をつくる』 山下完和『咲ける場所に置いてくれ』を読んだ。 私の著書『山のメディスン』と同じ、ライフサイエンス出版(叢書クロニック)の待望の新刊。 「やまなみ工房」の山下完和さんは、福祉の世界の「革命児」なのだと思う。 ただし、革命という言葉から想像するような、何かを声高に破壊する革命ではない。 もっと静かで、もっと根源的な革命だ。 福祉・障害者施設のいつの間にか出来上がってしまった枠組みに対して、「本当にそうなんだろうか?」と問い続けてきた人なのだと思う。 滋賀県甲賀市にある「やまなみ工房」には、知的障害や精神疾患のある人たちが通い、それぞれが表現活動を続けている。その作品は国内だけでなく海外でも高く評価され、展覧会、美術市場、ファッション、音楽など、既存の福祉という枠を軽々と越えて広がってきた。 けれども、『咲ける場所に置いてくれ』を読んで感じるのは、これは決して「障害者アートを成功させた人」のサクセスストーリーではない、ということだ。 むしろこれは、 人間は、どんな場所に置かれれば、その人自身として生きるこ


9/11(Fri):14:00-15:30【学んで応援!熊本チャリティー講座】ことばのくすり(NHKカルチャー名古屋教室)
9月11日、NHKカルチャー名古屋教室で、オンラインのチャリティー講座を行います。 題して、「ことばのくすり」です。 今回の講座は、いつもの講座とは少し違います。 受講料の一部が、令和8年熊本地震の被災地支援のための義援金として寄付されます。 (NHK講座から私に払われる謝礼も全額寄付します) 熊本は18歳までの青春時代を過ごした地でもあり、私にとっても大切な場所です。 震災のあと、遠くに暮らしている私たちに、いったい何ができるのだろう、と考えることがあります。現地へ行くこと。物資を届けること。寄付をすること。いろいろな支援のかたちがあります。 そしてもう一つ、 「学ぶことが、誰かを支えることにつながる」 という支援のかたちがあってもいいのではないかと思います。 今回の講座に参加してくださることが、ほんの少しずつでも集まって、熊本の復興を支える力になります。 一人の力は小さく見えても、小さな力が集まることで、大きな流れが生まれることがあります。 今回お話ししたい「ことば」も、どこかそれに似ています。大きな出来事に出会うと、人の心は、自分でも気づか


『ちびまる子ちゃんゲーム おこづかいちょーだいの巻』
リサイクルショップに行き、昭和レトロゲームを少しずつ買い集めている。 昭和レトロなボードゲーム『ちびまる子ちゃんゲーム おこづかいちょーだいの巻』。1990年前後のアニメ放映初期に、タカラから発売されたファミリー向けのボードゲーム。 もう30年以上前のものだが、格安で発掘。 たいしてどこにも行かない夏休みに、家族で遊んでいる。 さくらももこファンにはヨダレものだった。 当時、我が家にもあった記憶がある。 →【参考】:「さくらももこ展」@松本市立博物館 サイコロを振り、駒を進め、おこづかいをもらったり失ったりする。仕組みは驚くほど単純だ。しかし遊んでいるうちに、これは単なる娯楽ではなく、人間社会を小さくした装置なのではないかと思えてくる。 デジタルゲームでは、ルールの判定も計算も進行も、機械が見えないところで処理してくれる。 ボードゲームでは、自分たちでルールを理解し、順番を待ち、相手の手を読み、ときには曖昧な出来事を話し合って決める。勝って喜ぶ人の隣には負けて悔しがる人がいて、その表情まで含めてゲームなのである。 AIが「正しい答え」を高速に提示


青山ブックセンター(ABC)夏の選書フェア
そういえば。青山ブックセンター(ABC)夏の選書フェア。 私もこの夏の一冊を選定しています。 私が大大大大尊敬するあの方の本です。 夏の選書フェアは12年目を迎え、今年は360人が選んでいます。フェアで5,500円(税込)以上の購入で、コメント掲載の冊子をもらえるようですので、青山に行く機会に、ネットではなくリアル書店でぜひ。 9月30日までの開催予定です。 どうぞよろしくお願いいたします。 https://x.com/Aoyama_book/status/2085581875180122198 https://www.instagram.com/p/DbucE4ikgnc/?igsh=NDEyZWNsZTN0Z2Q0 青山ブックセンター 東京都渋谷区神宮前5丁目53−67 コスモス青山地下 2階 https://aoyamabc.jp/


「さくらももこ展」@松本市立博物館
「さくらももこ展」@松本市立博物館に行った。 我が家族は、「ちびまるこ」「コジコジ」の大ファンである。 私も小学生のころから、さくらももこファンだ。 さくらももこ展を見ながら、あらためて不思議に思った。 なぜ、こんなにも長いあいだ、さくらももこの作品は古びないのだろう。 『ちびまる子ちゃん』に描かれているのは、決して特別な世界ではない。 世界を救う英雄もいなければ、大事件が起きるわけでもない。 学校へ行き、宿題を忘れ、家族に叱られ、友だちに嫉妬し、くだらないことで笑い、時にはひどく落ち込む。 そこにあるのは、誰の人生にもあるような「たいしたことのない出来事」ばかりだ。 けれども、さくらももこの目を通すと、その「たいしたことのなさ」が、突然、人生そのもののように見えてくる。 さくらももこは、人間を美化しなかった。 子どもは純真で、大人は分別がある、というような描き方をしない。 子どもはずるいし、怠けるし、見栄を張る。 大人もまた、嫉妬し、失敗し、妙なことにこだわる。 家族だからといっていつも愛し合っているわけではないし、友だちだからといっていつも仲


軽井沢書店さん ありがとう
軽井沢書店さん。本店は軽井沢駅の近くに元々あったところで(デリシアの横)、中軽井沢店はKaruizawa Commongrounds内の素敵な場所にある。軽井沢の文化度を支えるありがたい存在。 本店に立ち寄ったら、『肯定からあなたの物語は始まる』(講談社)も含めて、著作をたくさん置いてくれていてうれしかった。本屋さん用のPOP(ポップ)も大切に置いてくれていて光栄。 ネット販売だけでなく、ぜひ本屋さんでもお買い求めください~。


「いのちのリズム、魂のリズム」『CONTE MAGAZINE VOL.3 SUMMER 2026 』
2021年以来、5年ぶり!の発売となる「CONTE MAGAZINE」の3号目は、320ページの読み応えあり!!の1冊。 特集は「息づくリズム。」。 色々なリズム(暮らし、自然、音楽、土地、街、言葉、身体、祭り・・・)を中心に、素敵な写真と文章でしっかりと読み心地十分です。こんなにずっしりくる雑誌は久方ぶり。 沖縄から発行される本なので、特に「沖縄」という土地にも焦点をあてています。 辺戸名直子さん×Coccoさん、大友良英さん、赤阪友昭さんなども寄稿されていますが、 ●稲葉俊郎「いのちのリズム、魂のリズム」 私も渾身のテキストを書きました。 特定の書店さんやOnline販売がメインですので、ぜひお手に取ってお読みいただきたいです! 作り手のみなさんの、手作り感と熱い思いを感じてください! ●【Magazine】2026/6/9:『CONTE MAGAZINE VOL.3 SUMMER 2026 』:稲葉俊郎「いのちのリズム、魂のリズム」 ◆CONTE MAGAZINE Web https://contemagazine.com/ ◆online


札幌南一条病院の広報誌 『肯定からあなたの物語は始まる』
札幌南一条病院の広報誌(電車通り通信)にて、呼吸器内科医長の眞木 賀奈子(まき かなこ)先生が、『肯定からあなたの物語は始まる』(講談社)(2025年)をご紹介いただいています。とてもうれしいです。ありがとうございます。 眞木先生は、西洋医学に加え、日本東洋医学会漢方専門医でもあり現場で漢方診療も積極的に取り入れている素敵な先生です。 子どもが突然はしりだす感覚のことに関する文章を引用してくださっています。 ぜひ単著も含め、お読みいただければ。 ●稲葉俊郎『肯定からあなたの物語は始まる』(講談社)(2025年11月17日) ============== (以下、『肯定からあなたの物語は始まる』から引用) 子どもと歩いていると、突然走り出すことがある。 頭で考えているわけではない。先の場所に何かがあるから走っているわけでもない。何かから逃げようとして走っているわけでもない。 ただ、走りたいから走る。 体が勝手に走ろうとしているのだ。 頭で合理化する必要もない。子どもの体は、そうした目的のない行為に満ちている。 子どもが突然走り出す光景を見ていて、目


『The Complete Posters of Tadanori Yokoo from 1953 to Today』 横尾さんの愛と精神世界
『The Complete Posters of Tadanori Yokoo from 1953 to Today』は、横尾忠則さんのベルリンでのポスター展(2026年)の図録。 高校時代の処女作、1953年から現在までの約1000点を収録。2冊の函入りカタログは全1164ページに及ぶ大ボリューム。 横尾忠則さんは1000点のポスターだけでもあらゆるバリエーションがある(そもそも、ポスター作品だけではなく、本やレコードの装丁、絵画も含めてさらに莫大にある)。 ポスターのデザインの凄さもさることながら、見た目の奇抜さ、だけが大事なのではなくて、作品とつながりある自分自身の内界や精神世界との連動・連結・融合がしっかりとあることが、いつもすごい、と思う。 ・ジョン+ヨーコ・レノンのよびかける愛と平和のクリスマスパーティー (横尾忠則 ポスター/1969年,日比谷野外音楽堂) WAR IS OVER! 戦争は終りだ・・・それは君次第 1969年の時代。 ・『ブッダは捜して見い出されるものではない それ故、己が自身の心を熟視せよ。―ミラレパ』 1976年