Joni Mitchell「MINGUS」(1979年)

ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)はセンスの塊で大好きだ。 センスがセンスを巻き込むような朗読も歌も音楽も絵も、すべてが好きだ。

「MINGUS」(1979年)という不思議なアルバムがある。楽曲が、全体的に未完成と完成の間のバランスを保ち続けている。 アルバム自体の存在感を絵が際立たせているが、Joni Mitchell自身が描いている。

「MINGUS」(1979年)は、Jazzの大御所、チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)に捧げられたアルバムで、ジャコ・パストリアスやウェイン・ショーターらの豪華メンバーと共に作られた。

Joni Mitchellのミンガスへの愛と尊敬からこのアルバムは作られ始めた。(ミンガスがエリオットの詩の朗読をJoni Mitchellに頼んだことから、話がはじまっているらしい) ミンガス本人もレコーディングに立ち会っていたのだが、アルバム完成直前に彼は56歳(1922-1979年)の若さで亡くなってしまう。 結果として、「MINGUS」(1979年)はミンガス自身への追悼盤になった。

Joni Mitchellが命を受け継ぐようにアルバムを作りはじめていることが不思議なことだ。1曲目が「Happy Birthday 1975」という曲で始まるところに、生と死のリンクを感じる。

ミンガスは晩年にALS(筋萎縮性側索硬化症)という全身の筋肉が自発的に動かない難病となりベースを弾けなくなった。ただ、彼は車椅子で移動しながら作曲・編曲活動を続け、ライブや録音にも立ち会っていた。 そうした哀愁のある車椅子姿のミンガスを、Joni Mitchellは絵として、LPの裏にそっと添えている。

そこに彼女なりの優しさを感じる。

絵がそこから飛び出してきそうなほどの魅力がある。もしくは、吸い込まれそうになる。

1979年は、自分が生まれた年でもあるので、こうした1979年という時代に起きた「いのち」のやり取りには関心がある。

音楽や芸術が生まれる母体には、そうした「いのち」のやり取りが、別の次元で行われていると思う。 いのちは、受け継ごうと思った人が受け取って、生と死をつなぎ続けてきた歴史そのものだから。

●Joni Mitchell - Goodbye Pork Pie Hat /Album:Mingus 1979

●Charles Mingus - Goodbye Pork Pie Hat

●Joni Mitchell - God Must Be a Boogie Man /Album:Mingus 1979

Charles Mingus Charles Mingus Presents Charles Mingus 1961

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