松本惠里『夢中になれる小児病棟』英治出版 (2021/6/9)
松本惠里さんの『夢中になれる小児病棟』英治出版 (2021/6/9)。 ささやかながら、私も帯文書かせていただきました。(自分の名前が帯文に乗っても、売り上げに貢献できなさそうで申し訳ないのですが!汗)
松本惠里さんは、病院の院内学級にプロのアーティストを届けるNPO、スマイリングホスピタルジャパン代表です。自分も、ささやかながらの寄付と、東大病院時代には東大小児科病棟へのボランティア橋渡しをさせてもらいました(コロナ禍の中で活動の制約が強くなってなければいいのですが)。
大学病院には、難治性の病気のためになかなか外に出れず、病院内の学校に通う子たちがいます。もちろん、成人になる前に命を落とす子もいます。そうした子は院内学級が日常や外界や社会のすべてになるわけです。
かくいう自分も、病弱だった幼少期、そうした院内学級にお世話になった時期があります。自分は死の淵から生還し、色々なお土産をもらってこの世界に戻り、病院を退院したわけですが、そのときに同室の家族や子どもたちから、受けた視線や伝わってきた感情は、いまだに自分の生命の芯の中に微熱のように残っている気がします。
つまり、生きているだけでも、すでに何か使命を受け取っているのだ、というようなことです。それに気づくか、発見するか、受け止めるか、は、その人次第なのかもしれませんが。
自分はそうした心の内奥にある微かな徴しのようなものを頼りにして、文章を書くことがあります。その光源を頼りにしていれば、自分の生命の核から漂流することが決してないからです。
松本惠里さんのご活動も、自身が病気になり、病人となり、違う視点でこの世界を見たことが大きなきっかけになっています。 わたしたちが生きるこの世界は、一見平板に見えますが、思っている以上の複雑な多面体であり、わたしたちは異なる視点を複数持たないと、この世界の実相を捉えることは難しいようです。
読書により、「院内学級」の視点から、この世界を見直してみる旅に出てみると、いろいろと新しい視点を得ることができるのでは、と思います。
「院内学級」の人をかわいそう、と反射的に思ってしまう人は、ぜひこの本を読んで、今を生きる、今こそ永遠、という感覚をこそ、本の行間から受け取ってもらえれば、と思います。そして、その時に芸術が果たしている役割とは何か、と。
医療業界の人も、アート業界の人も、改めてその源を考え直すためにも、ぜひ読んでいただきたい本です。 自分も、医療業界に生きる存在として、改めて初心を考え直すいい機会になりました。 ぜひお読み下さいませ。
●松本惠里『夢中になれる小児病棟』英治出版 (2021/6/9) https://www.amazon.co.jp/dp/4862762905
著者について [著者]松本惠里 認定NPO法人スマイリングホスピタルジャパン代表理事。外資系銀行勤務ののち、子育て中に教員免許取得。2005年東京大学医学部附属病院内、都立北特別支援学校院内学級英語教員に、09年国立成育医療研究センター内、都立光明特別支援学校院内学級同教員に着任。病院の子どもたちと過ごした経験をもとに、12年、病いや障がいと闘う子どもたちをアートで支援する団体、NPO法人スマイリングホスピタルジャパンを設立。
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