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柏木ハルコ「健康で文化的な最低限度の生活」と「生存権(right to life)」



いまの社会の状況を見ながら、医療の状況を改めて考え直す。

在宅医療をしていて感じること。 実はこの社会には生活保護の人が多い。

そこには勇気をくじかれたり人が数多くいて、今の社会は這い上がれない社会を作っているのではないかと、考えさせらえることが多い。 医療の問題は、こうした社会の現実と無関係なことではなくて。


2017年5月の厚生労働省の発表資料によると、生活保護受給世帯数は164万世帯、受給者数は214万人。1.70%の人が生活保護を受けているらしい。


ふと思う。

生活保護はどういう思想や根拠で成立しているのか、と。


その原点を探ると、「生存権(right to life)」という考え方にあった。

しかも、それは日本国憲法の25条で規定されている学校でも習う有名な文面、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(憲法25条1項)のこと。



「生存権(right to life)」とは、人間が人間らしく生きる権利のこと。ある社会のなかで、健康で文化的な生活を営むことを内容とする権利のこと。

具体的には、どんな人にも勤労・教育の機会が与えられ、社会保障を通じて、健全な環境のもとで心身ともに健康に生きる権利が与えられる。そして、国家はそういう生活を国民に保障する義務が発生する。日本国憲法では,第25条を中心にしてこの権利を保障している。


人間にふさわしい生活の保障を国家に要求する権利は、生存権とも生活権とも言う。

生存権の思想は、近世自然法思想やフランス革命期からあったが、国民の生活の保障を国家の任務とすべきだ、とする社会国家の理念の確立に伴って,第1次大戦以後、基本的人権の一つとして明確に宣言されるようになった。


新刊の内容を必死に書きながら、自分はこういうことを言いたいんだよなぁ、と、ふと思った。

誰もが生存権を持ち、人間が人間らしく生きる権利を持ち、社会とは、健康で文化的な生活を営むことを作り出す場である、ということ。


でも、こういうことを書くと難しくなるのですべて削除した。こうした硬いことをすべて頭に入れたうえで、自分の中から沸き起こってくるもの(中動態)で書きたいと思ったから。



そういうことを悶々と考えているときに、

柏木ハルコさんの「健康で文化的な最低限度の生活」 (ビッグコミックス)という漫画を知る。

面白い!


生活保護を扱う福祉事務所で働くケースワーカーの実像。

現実とフィクションを交差させ、フィクションという通路を介して現実世界の本質を表現する方は、本当に素晴らしい。現場で頑張って働いている人も、勇気づけられるだろうなぁ。

(ちなみに、くさか里樹さんの「ヘルプマン!」という漫画も、介護業界を描いた漫画で素晴らしいです。)




(裏表紙も)





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