

W. ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代@東京都写真美術館
東京都写真美術館2F「W. ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代」 ユージン・スミス(W. Eugene Smith, 1918–1978)は、アメリカのフォトジャーナリストで、日本の公害病である水俣病の実態を世界に知らしめた人物としても知られている。 水俣病は1956年の公式確認(その前の1953年頃から人体への健康被害が見られていた)と1968年の政府による公害病認定という二段階がある。 ユージン・スミスが水俣に滞在したのは、1968年の政府による公害病認定の後になる1971年から1974年にかけて。アイリーン・美緒子・スミスさんと共に熊本県水俣市に移り住み、患者やその家族の生活を記録した。教科書で見る水俣病の写真は、ユージン・スミスの撮影によるものも多い(「入浴する智子と母」など)。 1975年に出版された写真集『MINAMATA』も、いま見ても驚くような写真が多く、写真は当時の息吹をそのまま閉じ込めているなぁ、と驚くことがある。 ユージン・スミスも、取材中に会社の暴行で重傷を負い、その後の視力低下など後遺症に苦しんでいた。...


TOPコレクション Don't think. Feel@東京都写真美術館
せっかく恵比寿に来たので、東京都写真美術館(TOP MUSEUM)@恵比寿ガーデンプレイスへ。 ここは日本で唯一の写真と映像を専門とする美術館。 写真はあまり難しいことを考えず気軽に見れることもあり、都内に住んでいた時には年間パスポートを買ってすべての会期に見に行っていたほど。場所が広くて都内でほっとできる数少ない場所。 東京都庭園美術館にも歩いて20分くらいで行けるし、「恵比寿」という名前自体が、七福神の中で日本由来の神様である恵比寿様(えびす様)(福の神)を思わせるので、名前の縁起がいい。 東京都写真美術館は、3Fの「TOPコレクション Don't think. Feel.」、2Fの「W. ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代」、B1F「養老孟司と小檜山賢二の虫展」と、どれも面白い展示だった。 3Fの「Don’t think. Feel.(考えるな、感じろ)」は、武術家・俳優・哲学者であるブルース・リーが『燃えよドラゴン』(1973年)の冒頭シーンで弟子に放ったセリフ。 --------------------------- Don’


YOGA TRIATHLON 2026@恵比寿
GW中に、世界で活躍するヨガ指導者ニーマル先生による「YOGA TRIATHLON 2026」@恵比寿(by.スワル(石古暢良さん))に参加した。 トライアスロンが水泳・自転車・ランニングの3種目を一日で完走するように、ヨガ(Body)・呼吸(Mind)・瞑想(Emotion)という3つの実践を、1時間ずつ、ひとつの流れとして体験する企画。 合計3時間以上!も、100人以上の人!と一堂に介して自分の心身と対話する時間は貴重で深い時間だった。 ・・・・・・・・ もう30年近く前になるけれど、大学生時代に、インド哲学科にもぐりこんだ(東大のイン哲はすごい人ばかりだった)。 サンスクリット語含めインド哲学の古典(「ヴェーダ」「ウパニシャッド」「叙事詩(『マハーバーラタ』、『ラーマーヤナ』)」「学派の根本経典(『ヨーガ・スートラ』、『サーンキヤ・カーリカー』)」)・・・を共に学ばせてもらったのも良き思い出。深く無意識に刷り込むような時間。 あの頃は、とにかくこの世界の真理が知りたかった。 インド哲学だけではなく、東洋思想などを広範に学んだ。そこには西洋哲


「ロン・ミュエク」展@森美術館
「ロン・ミュエク」展@森美術館。 ロン・ミュエク(Ron Mueck)は、映画や広告業界で特殊効果やモデルビルダーとして20年以上のキャリアを積み、アーティストに転じた。 生命感あふれる質感を、異常なサイズ感で強調するように表現する。 表面上でのリアルを追求しながら、内側にある命を表現しようとしている。特に、孤独、不安、弱さ、そして強さなど。人間なら誰もが抱える内面的な感情を彫刻に投影する。 多くの作品は誰にも視線を合わせず瞑想的なポーズをとっている。能舞台や菩薩像のように、他者との不思議な距離感がある。 だからこそ、観る者が自らの内面を鏡のように見つめ直す機会となるのだろう。 生きているように見えるが人工物。という作品は、リアルとバーチャル、真実とフェイクが入り混じる現実世界を象徴しているようにも思える。 きっと、多くの人が作品に並んで記念撮影したい欲望に駆られるだろう。 ・・・・ 作品を観ていてふと頭に浮かんだのが、村上春樹さんの『象の消滅』という作品。 町の象徴であった象と飼育係が、ある日突然消えてしまう。主人公の「僕」は、消滅の直前に象舎


BAYFM 78.0MHz『てぃだきゃん』(ナビゲーター:きゃんひとみ)
5月の月曜早朝ですが、10分ずつラジオに出てます。 BAYFM 78.0MHz『てぃだきゃん』(ナビゲーター:きゃんひとみ)というラジオ番組です。 番組はAM5:00~5:57という早朝なのですが、私は後半寄りの5時40分くらいから10分ほど話しています。 5/4+5/11+5/18+5/25(月曜)の全4回。 『てぃだきゃん』(「でぃだ(=太陽)きゃん」)は、1989年のbayfm開局以来、続いている長寿番組。すごいです。 5月は『5月病』と言われるように、4月の入学や就職、異動などで環境が大きく変わった後、ゴールデンウィーク(GW)明け頃に感じる心身の不調が起きやすい時期です。そんなときに、私の単著、稲葉俊郎『肯定からあなたの物語は始まる』(講談社)(2025年)でもどうぞ、とのことで、ラジオに読んでいただきました。ありがとうございます。 都内の方はRadikoで1週間以内なら聞けると思いますので、ぜひ! 5/4は放映後になりますが、radikoで言うと、42分~51分くらいの部分で話しておりますので。 ●【Radio】2026/5/4+


竹内整一『「かなしみ」の哲学』 日本精神史の源流へ
北斗の拳で「かなしみ」を知ることこそが奥義であると改めて読んだ。小学生の時の、うっすらした記憶がある。 その後、自分は医学部に入ったものの、学ぶ内容に物足りなさを感じ、宗教学、倫理学、哲学の講義に勝手に潜り込んだ。その中で、東大倫理学の竹内整一教授の講義を一番熱心に聞いた。 というのも、竹内先生の講義は「かなしみ」と日本思想史がテーマだったから。 例えば、『「かなしみ」の哲学』(NHK出版)では、日本人がなぜ古来より「かなしみ」を大切にしてきたのかが書かれている。 「かなし」の語源は「……しかねる」の「カネ」と同根。「かなし」には、自分の力ではどうしようもない「無力さ」や「切なさ」が根底にある。 それは、大切なものを失う「対象喪失」の感情でもあり、「死にゆく自分」という自分自身の死も含まれる。 「かなし」は、同時に「愛(かな)し」でもあって、「悲しい」という否定的な意味だけでなく、「愛(かな)し)」という慈しみの意味も持っていた。どうしようもなく愛おしいという感情は、相手の「かけがえのなさ(有限性)」を実感することから生まれる。...


『北斗の拳』 「愛」と「かなしみ」の物語
イタリア・メローニ首相は『北斗の拳』ファン。 メローニ首相が来日したとき、『北斗の拳』の作者・原哲夫氏との面会を希望し、ケンシロウとラオウが描かれたサインをプレゼントされた。 『北斗の拳』は、週刊少年ジャンプ1983年から1988年まで連載されていたが、イタリアでも80年代から出版され、今でも高い人気を誇るようだ。 自分も小学生の時に熱心に読んだ。当時のPTAや教育委員会関係者は、「あんな暴力漫画を読んだ子供は暴力的になるので禁止だ!」と、騒いでいた。自分はぜんぜん暴力的にはならなかった。 そもそも、子どもは大人よりも本質をより深く理解している存在だ。大人の方こそが、表面にとらわれている、と、子どもながらに思っていた。 そもそも、北斗の拳のテーマは「愛」と「かなしみ」の物語。 核戦争後にすべてが荒廃した時代の中で、「愛」と「かなしみ」に目覚める物語として描いている。子どもの時にも「かなしみ」というテーマ性の深さを感じていた。 ケンシロウは相手を倒すたびに「かなしみ」を自らの血肉へと変えて強くなっていく。戦う相手も悲劇的な過去を抱えているからだ。.


ジャッド|マーファ 展
ドナルド・ジャッドのマーファ@ワタリウム美術館。 ドナルド・ジャッド(Donald Judd, 1928–1994)は、アメリカでのミニマリズム(ミニマル・アート)の先駆者。 ジャッドにとってのマーファでのプロジェクトは、アート、建築、周囲の自然環境を一つのまとまりとして融合させる壮大な構想の実践と実験。 1970年代にニューヨークから移住し、軍の施設跡などを自ら購入・改修して、作品が「永遠にその場所に存在し続ける」ための恒久設置の場を創り上げた。 『ニューヨークに神秘的なものは何もない。ただ知識と多くのビジネスがそこにあるだけだ。』 と、彼は語ってニューヨークを去っている。 二次元の抽象絵画から三次元の自然界に舞台をうつす跳躍は興味深く、作品だけが砂漠に密やかに残り、亡くなった彼はいま何を思うだろう。 ジャッド|マーファ 展 会期:2026年2月15日(日)- 7月12日(日) http://www.watarium.co.jp/jp/exhibition/202602/ 主催/会場:ワタリウム美術館 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3


「ミッション∞インフィニティ|宇宙+量子+芸術」+『湿地』(東京都現代美術館)
東京都現代美術館。「ミッション∞インフィニティ|宇宙+量子+芸術」。 宇宙や量子などのサイエンス領域とアートのコラボでの「世界の成り立ち」や「見えない世界」について考える企画展。 量子もつれ(量子エンタングルメント)は、2つ以上の粒子が、互いにどんなに離れていても「一蓮托生」のような特別な関係にあること。量子もつれ(量子エンタングルメント)は2022年のノーベル物理学賞を受賞。 人間関係や、「縁」というものを考える時に示唆に富む話。 常に誰かの行動が誰かへと影響しているとすれば。 2枚の「コイン」が量子もつれの状態にあるとき、1枚を自分の手元に置いて、もう1枚を海外の友人に送る。手元のコインを投げると、回っている間は「表でも裏でもある」状態だが、「表」だと確認した瞬間、海外に郵送された遠方のコインも同時に「裏」と確定する、ということらしい。どちらが表になるかはランダムだが、「一方が決まれば、もう一方が同時に決まる」というペアの関係が、距離に関係なく成立する。 量子もつれも、私たちが住む3次元空間では離れた2つに見えるけれど、もっと深い次元では一つ


角川武蔵野ミュージアム
本好きとしては立ち寄りたい、と思っていた角川武蔵野ミュージアムへ。隈研吾さんがデザイン監修。外壁の「石」は花崗岩約2万枚!を使用し、約1,200トンにもなるらしい。 外観の重厚な「岩」のイメージと対照的に、内部は迷宮のような空間だった。 編集工学者・松岡正剛氏の監修による、約2.5万冊の本には大興奮。 2010年頃、丸善丸の内本店で松岡正剛さんによる「松丸本舗」という実験的書店空間があって、何度も訪れた。今回はその巨大版という感じ。 本の迷宮を歩いているだけで、書影を見ているだけで、読書した気持ちになる。 角川武蔵野ミュージアムの原点ともなる角川春樹さんは、出版・映画界での功績もさることながら、神がかり的なエピソードが多くて好きな方。獄中での神秘体験のエピソードは流石という感じだった。 角川春樹のような規格外、常人ではない方の会社だからこそ、こうしたミュージアムもできたのかな、とも。 角川武蔵野ミュージアムでは色々なレア本も読みふけることができて楽しい時間だった。 三島由紀夫を被写体とした細江英公氏の写真集『薔薇刑』。 初版は1963年に杉浦康平