村上春樹ライブラリー(早稲田大学国際文学館)
- inaba

- 10月10日
- 読了時間: 3分
村上春樹ライブラリー(早稲田大学国際文学館)は、コロナ禍の2021年10月に開館。当時、公務員でもあった私は県外に出るだけで制限がかかっていた。そもそも。都内に行く余裕もなかった。そして、4年が経った。
2025年の10月、村上春樹ライブラリーにいる夢を見た。目覚めても現実感が残っていて、さあ行こう、と思い立ち、村上春樹ライブラリーに行ってきた。きっかけとは、そうしたものだ。
村上春樹ライブラリーは早稲田大学の中にある。
正門にはグリーンベレーのような不思議な出で立ちの警備員がいる。彼女の仕事は何なのだろう。どういう面接を経てああした仕事に就くのだろうか。
そもそも、馴染みのない大学に入るときは緊張する。不審者と思われないよう、堂々と入る。私は村上春樹ライブラリーに行くんだ、と顔に書かれているかのような素振りで。
そして現地にたどり着いた。
隈研吾さんが設計されている。早稲田の雰囲気に見事に自然に溶け込んでいた。
ライブラリーの中でアンニュイな表情でたたずんでいる女性たちが、すべて笠原メイに見えてくるのは、『ねじまき鳥クロニクル』を読み込みすぎたせいかもしれない。
いづれにせよ、春樹さんの指示通りなのか、センスよくコンパクトにまとまった建物は居心地がよい空間だった。何度でも訪れるような呼吸するような空間を目指したそうだ。「息をしやすい学び場」に。
また春樹作品を読み返したくなって、ウズウズした。
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(笠原メイ)
「つまり――私は思うんだけど、自分がいつかは死んでしまうんだとわかっているからこそ、人は自分がここにこうして生きていることの意味について真剣に考えないわけにはいかないんじゃないのかな。」
「だから私たちが進化するためには、死というものがどうしても必要なのよ。私はそう思うな。死というものの存在が鮮やかで巨体であればあるほど、私たちは死にもの狂いでものを考えるわけ」
(『ねじまき鳥クロニクル』)
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村上春樹ライブラリー(早稲田大学国際文学館)にはレコードを聴ける空間があり、外が暑かったこともあり、歩き疲れたこともあり、レコードの振動音を身体に深く染み込ませた。
自分も高校時代、レコードの音色に魅せられ、ウッドペッカーという伝説的なレコード屋が熊本にあったこともあり、音楽のすべてはこのカルト的なレコード屋で学んだ。そんな当時を思い出した。「意識の振れ幅」のようなものを音楽から学んだ気がする。意識の深海に深く潜るように。
春樹さんがJAZZ喫茶をやっていた当時のLP(PeterCat)も置いてあった。




レコードは、ながら聞き、というのができない。否応なしに1対1で音楽と向き合うことになる。伝統芸能の稽古で師匠と膝をつきあわせて指導を受けるようなスタイルで。
今度、だれか一階のカフェに行きましょう。栗原はるみさんのレシピのランチもありました。レコードを聞きすぎて立ち寄れず残念。
素敵な空間に、素敵な早稲田生たちが集っていました。
毎日いい夢が見れそうで、うらやましかです。
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「流れに逆らうことなく、上に行くべきは上に行き、下に行くべきは下に行く。上に行くべきときには、いちばん高い塔をみつけてそのてっぺんに登ればよろしい。下に行くべきとには、いちばん深い井戸をみつけてその底に下りればよろしい。流れがないときには、じっとしておればよろしい。流れにさからえばすべては涸れる。すべてが涸れればこの世は闇だ。」(本田さん)
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「正確に言えば、僕は君に会うためにここに来たわけじゃない。君をここから取り戻すために来たんだ」(僕)
『ねじまき鳥クロニクル』
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村上春樹ライブラリー(早稲田大学国際文学館)
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1丁目64号館
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