

「ロン・ミュエク」展@森美術館
「ロン・ミュエク」展@森美術館。 ロン・ミュエク(Ron Mueck)は、映画や広告業界で特殊効果やモデルビルダーとして20年以上のキャリアを積み、アーティストに転じた。 生命感あふれる質感を、異常なサイズ感で強調するように表現する。 表面上でのリアルを追求しながら、内側にある命を表現しようとしている。特に、孤独、不安、弱さ、そして強さなど。人間なら誰もが抱える内面的な感情を彫刻に投影する。 多くの作品は誰にも視線を合わせず瞑想的なポーズをとっている。能舞台や菩薩像のように、他者との不思議な距離感がある。 だからこそ、観る者が自らの内面を鏡のように見つめ直す機会となるのだろう。 生きているように見えるが人工物。という作品は、リアルとバーチャル、真実とフェイクが入り混じる現実世界を象徴しているようにも思える。 きっと、多くの人が作品に並んで記念撮影したい欲望に駆られるだろう。 ・・・・ 作品を観ていてふと頭に浮かんだのが、村上春樹さんの『象の消滅』という作品。 町の象徴であった象と飼育係が、ある日突然消えてしまう。主人公の「僕」は、消滅の直前に象舎


『北斗の拳』 「愛」と「かなしみ」の物語
イタリア・メローニ首相は『北斗の拳』ファン。 メローニ首相が来日したとき、『北斗の拳』の作者・原哲夫氏との面会を希望し、ケンシロウとラオウが描かれたサインをプレゼントされた。 『北斗の拳』は、週刊少年ジャンプ1983年から1988年まで連載されていたが、イタリアでも80年代から出版され、今でも高い人気を誇るようだ。 自分も小学生の時に熱心に読んだ。当時のPTAや教育委員会関係者は、「あんな暴力漫画を読んだ子供は暴力的になるので禁止だ!」と、騒いでいた。自分はぜんぜん暴力的にはならなかった。 そもそも、子どもは大人よりも本質をより深く理解している存在だ。大人の方こそが、表面にとらわれている、と、子どもながらに思っていた。 そもそも、北斗の拳のテーマは「愛」と「かなしみ」の物語。 核戦争後にすべてが荒廃した時代の中で、「愛」と「かなしみ」に目覚める物語として描いている。子どもの時にも「かなしみ」というテーマ性の深さを感じていた。 ケンシロウは相手を倒すたびに「かなしみ」を自らの血肉へと変えて強くなっていく。戦う相手も悲劇的な過去を抱えているからだ。.


一年(ichinen_karuizawa)@軽井沢レイクニュータウン
軽井沢で新規オープンしたばかり!の素敵なお店「一年」に。 場所はレイクニュータウン別荘地の中。 軽井沢レイクニュータウンは、1960年代にスイスのリゾートをモデルとして構想され、人造湖のレマン湖を中心に発展。 一時は廃れていた時期もありましたが、「レイクガーデン」やレマン湖周囲の「KOHAN」(小さな商店街エリア)に素敵なお店(Horse and the sunや、今回の一年など)がオープンしてきたことで、大人の隠れ家的な雰囲気に生まれ変わっている! そういえば。 レイクニュータウンには「Sajilo Cafe(サジロカフェ)」を手掛けるニールさんと加世子さんご夫妻が作られたヨーロッパの古城を思わせる「HOTEL CORINTHE(ホテル コリント)」もオープンしていたりする。(今度見学に行きたいー。) 「一年」は、フィンランドのシナモンロールとサーモンスープが楽しめる。 店主は料理家でお菓子作家の吉崎亜紗子さん。 そして、内沼晋太郎さんが選書し厳選された本もあり文化的な場所。 2階には工芸品や衣服などを販売するアート&クラフトギャラリー「fri


ジャッド|マーファ 展
ドナルド・ジャッドのマーファ@ワタリウム美術館。 ドナルド・ジャッド(Donald Judd, 1928–1994)は、アメリカでのミニマリズム(ミニマル・アート)の先駆者。 ジャッドにとってのマーファでのプロジェクトは、アート、建築、周囲の自然環境を一つのまとまりとして融合させる壮大な構想の実践と実験。 1970年代にニューヨークから移住し、軍の施設跡などを自ら購入・改修して、作品が「永遠にその場所に存在し続ける」ための恒久設置の場を創り上げた。 『ニューヨークに神秘的なものは何もない。ただ知識と多くのビジネスがそこにあるだけだ。』 と、彼は語ってニューヨークを去っている。 二次元の抽象絵画から三次元の自然界に舞台をうつす跳躍は興味深く、作品だけが砂漠に密やかに残り、亡くなった彼はいま何を思うだろう。 ジャッド|マーファ 展 会期:2026年2月15日(日)- 7月12日(日) http://www.watarium.co.jp/jp/exhibition/202602/ 主催/会場:ワタリウム美術館 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3


「ミッション∞インフィニティ|宇宙+量子+芸術」+『湿地』(東京都現代美術館)
東京都現代美術館。「ミッション∞インフィニティ|宇宙+量子+芸術」。 宇宙や量子などのサイエンス領域とアートのコラボでの「世界の成り立ち」や「見えない世界」について考える企画展。 量子もつれ(量子エンタングルメント)は、2つ以上の粒子が、互いにどんなに離れていても「一蓮托生」のような特別な関係にあること。量子もつれ(量子エンタングルメント)は2022年のノーベル物理学賞を受賞。 人間関係や、「縁」というものを考える時に示唆に富む話。 常に誰かの行動が誰かへと影響しているとすれば。 2枚の「コイン」が量子もつれの状態にあるとき、1枚を自分の手元に置いて、もう1枚を海外の友人に送る。手元のコインを投げると、回っている間は「表でも裏でもある」状態だが、「表」だと確認した瞬間、海外に郵送された遠方のコインも同時に「裏」と確定する、ということらしい。どちらが表になるかはランダムだが、「一方が決まれば、もう一方が同時に決まる」というペアの関係が、距離に関係なく成立する。 量子もつれも、私たちが住む3次元空間では離れた2つに見えるけれど、もっと深い次元では一つ


角川武蔵野ミュージアム
本好きとしては立ち寄りたい、と思っていた角川武蔵野ミュージアムへ。隈研吾さんがデザイン監修。外壁の「石」は花崗岩約2万枚!を使用し、約1,200トンにもなるらしい。 外観の重厚な「岩」のイメージと対照的に、内部は迷宮のような空間だった。 編集工学者・松岡正剛氏の監修による、約2.5万冊の本には大興奮。 2010年頃、丸善丸の内本店で松岡正剛さんによる「松丸本舗」という実験的書店空間があって、何度も訪れた。今回はその巨大版という感じ。 本の迷宮を歩いているだけで、書影を見ているだけで、読書した気持ちになる。 角川武蔵野ミュージアムの原点ともなる角川春樹さんは、出版・映画界での功績もさることながら、神がかり的なエピソードが多くて好きな方。獄中での神秘体験のエピソードは流石という感じだった。 角川春樹のような規格外、常人ではない方の会社だからこそ、こうしたミュージアムもできたのかな、とも。 角川武蔵野ミュージアムでは色々なレア本も読みふけることができて楽しい時間だった。 三島由紀夫を被写体とした細江英公氏の写真集『薔薇刑』。 初版は1963年に杉浦康平


素粋居 石の神さま ミシャグジ 後戸の宿神 能楽
アクアイグニス別邸となる、湯の山温泉の「素粋居」という宿泊施設もご厚意で見せていただいた。 自然素材をテーマにした12棟の独立したヴィラがあり、8つの素材(木、石、土、鉄、漆喰、和紙、漆、硝子)がそれぞれテーマになっている。 1棟ごとに建築家やクリエイターが異なり、間取りやインテリア、アート作品に至るまで、ひとつとして同じ部屋はなく、さらに源泉かけ流し露天風呂まで作られていて、パラダイスそのもの! 陶芸家・内田鋼一さんのプロデュースのようですが、アンティークや現代のアートのバランスが素晴らしかった。 贅沢したいとき、家族連れでお子さんに気にせず室内の露天風呂で湯治したい方には、お薦め。 すぐ近くのアクアイグニス片岡温泉のお風呂への送迎もありです。(ルフロのミネラルミスト浴は別料金ですが) この写真は、石の部屋。 石の神様のように鎮座されている! 地元・三重県産の「菰野石(こものいし)」の巨石とのことで、菰野石は伊勢神宮の玉砂利にも使われている質の高い石。 石の神さまと言えば、コノハナノサクヤビメの姉である石長比売(イワナガヒメ)は強さや永遠を象


アクアイグニス@三重県菰野町
三重県菰野町にあるアクアイグニスへ。 前から行きたかった。やっと行けた! ここは、近くに奈良時代!(開湯1300年)に発見された「湯の山温泉」という歴史ある温泉地がある。奈良時代から温泉地として愛されていたが、織田信長の伊勢侵攻で最澄が建立した三嶽寺(さんがくじ)(数百人の僧兵がいたらしい)も焼き討ちにあい、温泉も一時的に衰退(廃泉)。「僧兵まつり」として、戦った僧兵を称えた祭りが今も続いていいるほど。 その後は、江戸期での湯治場、西南戦争での傷病兵の療養所などで復興し、文豪にも愛された歴史ある温泉地(志賀直哉の『暗夜行路』にも登場)。衰退と復興の歴史がある。 「湯の山」という名前自体が素敵だが、アクアイグニスは、この湯の山のすぐふもとにあり、片岡温泉という。 湯の山温泉の発見伝説に「傷ついた鹿が癒やしていた(鹿の湯)」という歴史があり(那須も含め、「鹿の湯」は色々な場所にある)、「アクアイグニス」のロゴマークやデザインには「鹿の角」がモチーフとして使われている。 ちなみに、「アクアイグニス」の施設名の由来は「AQUA(アクア)」=水(温泉)+「


藤子・F・不二雄先生からの宿題(100%ドラえもん&フレンズ in 東京)
子どものバイオリン関係(スズキメソード)で東京に出たとき、有明に出かけたら、ちょうど 東京ドリームパーク がオープンの日で、そこでは「 100%ドラえもん&フレンズ in 東京 」がやっていた。 ただ、行けばすぐ見れる、というものではなく、無料エリアと有料エリアが複雑に絡み合い、しかも有料エリアは時間ふくめて事前予約制で、何も見れなかった。最近、よくあるパターン。事前予約制が増えると、なんとなく・ぶらぶら、ではうまくいかない。右脳よりも「予定、立案、計画、実行、任務完了」みたいな左脳回路が求められる。 ただ。 無料エリアに置いてあるドラえもんフィギュアや、エスパー魔美やパーマンだけでも十分に満足できた。 機械と人間との関係性は、日本では昔から漫画やアニメなどで取り上げられ、時間をかけて考えるべきテーマになっていた。 『ドラえもん』は人間の欲望に関する物語でもある。 困ったとき、のび太がドラえもんに助けを求めると、便利な道具が準備される。 困り事は簡単に解決するが、物語はここからだ。 あれもできる、これもできると欲望は膨らみ、スネ夫やジャイアンへの


『婦人画報(2026年5月号)』:「追悼―ファトマ・ハッスーナ」 (稲葉俊郎)
4月1日発売の『婦人画報(2026年5月号)』に、「追悼―ファトマ・ハッスーナ」として、私も文章を寄せています。 ファトマ・ハッスーナは、パレスチナ・ガザ地区出身の写真家(フォトジャーナリスト)。 ガザ紛争下での日常を世界に発信し続け、彼女を追ったドキュメンタリー映画『手に魂を込め、歩いてみれば』(イラン出身のセピデ・ファルシ監督、2025年)がカンヌ映画祭の出品作品となり、その報告をした翌日に、彼女は現地の空爆で家族と共になくなってしまいました。 映画『手に魂を込め、歩いてみれば』も、そうした戦時下の1日1日が命がけの日常がとられていて、複雑な気持ちになる映画です。 映画が見れなかった方も、2026年4月18日~5月17日に開催される第14回「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」でもファトマ・ハッスーナの写真が展示されますので、ぜひご覧いただきたいです。 世界中で戦争が起きていますが、領土、資源、そして宗教戦争など・・・、色々な争いの種があります。 一度争いが起こり、怒りや恨みや復讐がはじまると、なかなか止めることができません。...