

「奇才の画家 サルバドール・ダリ版画展―奇想の迷宮―」@南アルプス市立美術館
南アルプス市立美術館で、「奇才の画家 サルバドール・ダリ版画展―奇想の迷宮―」を見た。 私は昔からダリが好きだった。だから、山梨でも当然、足を運ぶ。 大学生の頃、バックパッカーとしてスペインを旅したことがある。バルセロナから列車に乗り、フィゲラスへ向かった。目的は、ダリ劇場美術館だった。 建物そのものが巨大な作品のような、あの奇妙な場所に足を踏み入れたときの感覚を、今でも覚えている。美術館というより、ダリという一人の人間の頭蓋骨の中へ入っていくようだった。 今回、久しぶりにまとまったダリの作品を見ながら、そのとき感じた奇妙な感覚が蘇ってきた。 ダリは「奇才」「シュルレアリスムの巨匠」と呼ばれる。 もちろん、それは間違いではない。 けれども、ダリを単なる奇抜な人として理解すると、その本質を見失うように思う。 むしろ彼は「現実とは何か」を異常なほど真剣に考え続けた人だったのではないだろうか。 興味深いのは、ダリが科学に強く惹かれていたことである。 精神分析、数学、物理学、原子物理学、DNA。時代の最先端にあった科学的知見を貪欲に吸収し、それを自らの芸


湯治文化 温泉の楽園 松本@松本市立博物館
松本の街を歩いていると、ときどき不思議な感覚になる。 目の前には城下町の整然とした道があり、少し顔を上げれば、その向こうに北アルプスの山々が連なっている。人間がつくった街と、人間よりはるか以前からそこにある山。その二つが、同じ風景の中に静かに収まっている。 けれども、松本という土地を本当に理解するためには、目に見える風景だけでは足りない。その地下には、もう一つの松本がある。 火山があり、断層があり、複雑な地質がある。何万年、何十万年という時間をかけて、大地の内部を水がめぐり、熱を受け、岩石の成分を溶かし込み、再び地上へと戻ってくる。 それが、温泉である。 温泉とは、単なる「温かい水」ではない。地下深くに隠されていた土地の記憶が、液体となって地上へ現れたものだ。 松本市立博物館の常設展示も素晴らしかった。 松本市立博物館の展示を見ながら、松本はまさに「温泉の楽園」だったのだと知った。 明治時代につくられた温泉番付には、全国409か所もの温泉が並んでいる。その中には、浅間温泉、白糸の湯と呼ばれた現在の美ヶ原温泉、そして白骨温泉など、松本周辺の名湯が名


「さくらももこ展」@松本市立博物館
「さくらももこ展」@松本市立博物館に行った。 我が家族は、「ちびまるこ」「コジコジ」の大ファンである。 私も小学生のころから、さくらももこファンだ。 さくらももこ展を見ながら、あらためて不思議に思った。 なぜ、こんなにも長いあいだ、さくらももこの作品は古びないのだろう。 『ちびまる子ちゃん』に描かれているのは、決して特別な世界ではない。 世界を救う英雄もいなければ、大事件が起きるわけでもない。 学校へ行き、宿題を忘れ、家族に叱られ、友だちに嫉妬し、くだらないことで笑い、時にはひどく落ち込む。 そこにあるのは、誰の人生にもあるような「たいしたことのない出来事」ばかりだ。 けれども、さくらももこの目を通すと、その「たいしたことのなさ」が、突然、人生そのもののように見えてくる。 さくらももこは、人間を美化しなかった。 子どもは純真で、大人は分別がある、というような描き方をしない。 子どもはずるいし、怠けるし、見栄を張る。 大人もまた、嫉妬し、失敗し、妙なことにこだわる。 家族だからといっていつも愛し合っているわけではないし、友だちだからといっていつも仲


ワンヘルス(One Health)+DAO(分散型自律組織) =anima DAO
北海道の旅は温泉旅行ではなく、【ワンヘルスサミット】が主な目的! ワンヘルス(One Health)とは、「人の健康」「動物の健康」「環境の健全性」を1つの健康として一体的に守っていくという世界的な考え方。 人間の眼だけではなく、動物の眼、地球の眼、3つの眼から見て「三方良し」にしていく、という考え方は極めて重要だと思う。 「ワンヘルス(One Health)」のように複雑な要素が同時に関わっているものを、具体的にどう実現するのか? 今回のシンポジウムは【DAO(分散型自律組織)】を一つの突破口にしようというアイディアがあり、そこに強く共鳴した。私も、温泉の未来を「コモンズ(共有財産)」考える上で【DAO(分散型自律組織)】が突破口だと思っているから。 DAO(分散型自律組織)とは、中央管理者が存在せず、参加者同士がブロックチェーン上で自律的に運営する場のこと。 株式会社のようなトップダウン型ではなく、フラットな関係を大切にする。 温泉で言えば、温泉資源を守る(源泉の適正管理、配管の修繕、景観保全・・・)には多額の資金や人手が必要だけど、人口減


びえい白金温泉 白ひげの滝@北海道美瑛町
美瑛町にある白金温泉にも足を運んだ。 美瑛町は、北海道のほぼ中央(大雪山国立公園のふもと)で、「日本で最も美しい村」連合にも加盟している町。 白金温泉は標高約600メートルの山麓にあり、「杖忘れの湯」と称される名湯。 1950年に湧出した際、当時の美瑛町長が「泥の中から貴重なプラチナ(白金)を見つけた思いだ」と喜んだことからその名が付けられたらしい。実際にプラチナが出ているわけではないけれど、水の美しさはそのイメージをつたえている。 泉質: ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-硫酸塩・塩化物泉(低張性中性高温泉) 溶存物質総量(ガス成分を除くミネラル濃度)も5,200mg/kg(5g/L)と非常に豊富な成分を含んでいる。 日本の温泉基準「溶存物質量1,000mg/kg以上」を大きく超えているけれど、体液の浸透圧(約8,800mg/kg)よりは低いので分類は「低張性中性高温泉」となる。 陰イオンの硫酸イオン(SO₄²⁻)が多いので、肌の脂分を洗い流してすべすべにする美肌効果や、血管拡張での血行促進効果が強い。 陽イオンのカルシウムやマグネシウムが


就実の丘 五大に皆響きあり
就実の丘(しゅうじつのおか)。 旭川市西神楽地区にある360度の大パノラマと美しい一本道が魅力の場所。 旭川から美瑛町に向かう途中に立ち寄る。 雨ですべては見えなかったが、大雪山の主峰・旭岳や十勝岳連峰のすべてを同時に見渡せる、数少ない貴重な展望スポットらしい。 北海道は、でっかいどう!を全身で体感できる場所にかんどう! (北海道の面積は日本の国土の約22%(約5分の1)) 旭川ではエバレット・ケネディ・ブラウン (Everett Kennedy Brown)さんとも旅をご一緒させていただいた。 エバレット・ブラウンさんは世界的な写真家でありながら、同時に山伏修行の実践をされていて、頭や理屈ではなく、全身で真理を体得されている真の実践者だ。まず佇まいが美しい。 すべて身体知として本質的な深い理解をされているため、その眼差しと洞察はとても深い。 ほら貝を旭川の山間で何度も聞かせていただいた。 眼をつぶって、音の反響を聞く。 山の中に複雑に響くほら貝の音を聞いているだけで、山の地形が脳の中にありありと浮かび上がってくる。物理的な地形というよりも、聴覚


ハルニレぽっぽ@旭川
One Health Summitで呼んでいただいた「緑の森動物病院」のみなさんがとにかく素晴らしい方々ばかり。 旭川にある「緑の森どうぶつ病院 旭神センター病院」の隣にできた「ハルニレぽっぽ」は、ペットと一緒に過ごせるおしゃれなカフェ。 2024年9月にオープンし、「人・どうぶつ・自然のすべてが健康であること(ワンヘルス)」をコンセプトにしている。 土を敷いて、その上にウッドチップが敷かれた温かみのある店内。ペットがそこでおしっこをしても、次亜塩素酸ですぐに消毒することができるし、飼い主も気兼ねなくゆっくりできる。 そもそも、動物が落ち着く空間は、動物の一種である人間も落ち着くはずで、どうぶつを中心に作られた空間と商品構成には、日本や世界での最先端を行っていると感じる。 特に素敵だったのが、「アニマルウェルフェア牛乳」の飲み比べ。 アニマルウェルフェア(Animal Welfare)とは、動物の「心身の健康」や「幸福」を確保しようという考え方です。 動物を感情や痛みを感じる生きた存在として尊重し、できる限りストレスや苦痛の少ない快適な環境で飼育


定山渓温泉@札幌
「豊平峡温泉」は札幌から車で1時間くらいだった。 帰りに、豊平峡温泉より手前の「定山渓(じょうざんけい)温泉」に立ち寄った。札幌から40分ほどの距離だから、札幌から一番近い温泉街ではないのかな。 定山渓温泉の歴史は、一人の修験僧が私財と命をなげうって築いた湯治場から始まったらしい。 1856年には、北海道の命名者である松浦武四郎がこの地を訪れ、温泉が湧き出ている記録を残しているらしい。もちろん、ここは動物やアイヌの方々など、昔から北海道に住んでいた人たちは享受していたのだろう。記録に残っていないだけで。 1866年に、岡山出身の修験僧・美泉定山(みいずみ じょうざん)がアイヌの人々の案内でこちらの泉源と出会い(傷ついた鹿が湯浴みをしている光景を目撃したと)、病に苦しむ人々のための湯治場を開いたことが、温泉街の始まりになったとのことだ。 当時は道すらない原生林で、定山は独力で道を切り拓き橋を架け、正式に「定山渓」の名が誕生。定山自身も政府から「湯守(ゆもり)」に任命されている。 1874年には、開拓使の制度変更で湯守の職を解かれてしまい、1877年


ONSEN食堂@豊平峡温泉 藤井聡太 カレー
そして、豊平峡温泉に入ってさらに驚いたのは、ドアを入るとすでにカレーのスパイスに匂いがして、名物の本格インドカレーに大行列ができていたこと。 スタッフもすべてインドの方々、ではなくネパールの方々で、日本の温泉と思えない自然に溶け込んだ雰囲気。 豊平峡温泉の現オーナー(2代目社長)が、札幌・すすきので経営していたインドカレー店のスタッフと機材を、そのまま温泉へ移籍させたからしい。 「ONSEN食堂」では、本場のコック(主にネパール人スタッフ)たちが、数十種類のスパイスと大量の玉ねぎをベースにした絶品カレーと、特大の焼き立てナンを提供し続けている。 現在では「温泉に入るため」ではなく「カレーを食べるため」だけに訪れるリピーターも多いらしく、大行列ができていた。 とにかく、ナンが美味しかった。 2022年に札幌・定山渓温泉で開催された「王位戦七番勝負 第2局」にて、藤井聡太さんが2日目の昼食に選んだのが、豊平峡温泉(ONSEN食堂)の「エビカリー」。自分も将棋好きとしてエビカリーを注文して堪能。美味しかったです。 ちなみに、藤井さんはカレーが好物らしく


豊平峡温泉@札幌
北海道の旭川に、「One Health」のイベントでの講演のために上陸。 少し時間があったので、列車で札幌まで行き、札幌近くで一番お薦め、と言われた「豊平峡温泉」に。 豊平峡温泉の泉質は、ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・塩化物泉(重曹泉)。 加水・加温・循環を一切行わない源泉100%かけ流し!の温泉。 貯湯タンクを使わず地中から直接浴槽へ注がれるため、温泉成分が一切酸化していない。 温泉への強い愛を感じる。 お湯に含まれる炭酸カルシウムや鉄分が結晶化し、床や浴槽の縁が鍾乳洞のように波打っているのがアート。 入ってすぐに飲泉ができる場所がある。 豊平峡温泉は、札幌市内の温泉で唯一「飲泉許可(保健所許可済み)」を得ているらしい。湧き出たばかりの新鮮な源泉を直接飲むことができるのは格別だ。ナトリウム(塩分)や炭酸水素塩を含んでいるため、口に含むとほのかな塩気と、重曹成分による独特のまろやかさを感じる。飲みすぎないように注意したが美味しかった。 源泉かけ流しの露天風呂も広々として最高だった。 源泉の泉温も51.0℃程度と記載があったので露天などは丁度