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「島村洋二郎─無限の悲哀と無限の美」@梅野記念絵画館(長野県東御市)

  • 3 日前
  • 読了時間: 3分

長野県東御市にある梅野記念絵画館へ「島村洋二郎─無限の悲哀と無限の美」を見に行った。



情念が練り込まれるような凄まじいチラシの絵を見てから、実物を見に行きたいと思っていた。





島村洋二郎は1916年東京に生まれた。浦和高校に入学するも、画家を目指して退学。当時の画家は現金収入がほとんどない。極貧から抜け出せないことを承知の上で絵を描き続ける覚悟がある人間しか画家になっていなかった時代。

戦時中は従軍画家として戦場にも出るが、1945年に肺結核のため帰国。


当時は不治の病とされた結核を抱えながら日本中を転々としながら絵を描き続けた。


1953年に新宿の喫茶点でクレパス画展を開き、その最終日に大喀血し亡くなった。享年37歳の若さだった。



島村洋二郎の作品は、肺結核による死を意識しながら、どの瞬間に絶命してもいいようなエネルギーが込められている。お金がないため、安いクレパス(オイルパステル)を極限まで厚く塗り重ねて描かれていて、強烈な情念が絵の厚みとなっている。


厚く塗りこまれた絵の中をのぞいていると、戦後の混乱期、美に人生を捧げながら必死で純粋に生き続けた汗と涙。悲しみと諦め、そして静かな視線で世界や人物を見つめる透徹した視線。闇の中でもイデアのように内奥で輝き続ける美の世界に殉じた人生が垣間見える。絵をじっと見ているだけでその人生ががダイレクトに伝わってきて涙が出る。




絵を見るときは、じっと絵を見て、じっと絵を見て、自分の中で動いてくるゆらぎ、感情や感覚、あらゆる動き出した何か、をつかまないと、いい時間にはならないと思う。

絵はJPG画像のようなデータではなくて、そこから放たれる密度のようなものを受け取って、自分の中に何と反応しているのか、自己との対話が創発しないと、作者との対話もはじまらない。






東御にある梅野記念絵画館は、初代館長の梅野隆さんのコレクション430点の寄贈を受けて開館。

梅野隆さんの父(梅野満雄さん)は、画家青木繁の親友で、正当な評価を受けていなかった青木繁を支えた人。梅野隆さんも、素晴らしい作品なのに忘れらている作家、不遇な生涯を終えた作家を中心に日本近代美術を収集している。そこにはマーケットで売れる、というような打算は全くない。なぜこの画家が正当に認められていないんだ、という審美眼だけで収集し、世に問うている。



そんな梅野隆さんの在り方と、島村洋二郎の画家としての一人の壮絶な生きざまを見ることができて、素晴らしく胸に迫る展示だった。大きな集客数ではなく、一人一人の鑑賞者にむけて、一対一で文化芸術の力を示す骨太の展示だった。時代を超えて残り続けるものは、こうした高密度のものだと思う。自分も襟を正した。



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木雨賞受賞記念 生誕110年

島村洋二郎─無限の悲哀と無限の美

2026年 1月24日 - 3月22日

東御市梅野記念絵画館・ふれあい館

〒389-0406 長野県東御市八重原935-1芸術むら公園






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