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MIMOCA「美しいとは何か」稲葉俊郎  インタビュー

Web記事のアナウンス。


わたしが心の底から尊敬するアーティストの一人である猪熊弦一郎。

いのくまさんが「美術館は心の病院」という言葉を遺して作ったMIMOCAにて、「生誕120周年記念 猪熊弦一郎回顧展 美しいとは何か」が開催されています。


<Blog 参考>



こちらの展覧会と関連して、展示の内容をより深く味わえるインタビュー記事が出ております。(しかも、これはなぜか軽井沢病院の院長就任後、最初の外部の仕事!)


ぜひお読みいただき、生の本物の絵を展示空間で見て圧倒されてほしいです。


うどん県の香川ですから、美味しいうどん屋さん情報も、MIMOCAスタッフに聞いてください。






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MIMOCAマガジン

「美しいとは何か」稲葉俊郎


丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(以下、MIMOCA)では、2022年4月2日(土)から2022年7月3日(日)まで、「生誕120周年記念 猪熊弦一郎回顧展 美しいとは何か」を開催しています。

開催を記念して、軽井沢病院院長であり山形ビエンナーレ2020の芸術監督をつとめた稲葉俊郎さんへのインタビューをお届けします。



「美しいとは何か」稲葉俊郎



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いのくまさんの絵をじっくり見ていると、自分の心の空間と交流して共感しあい、自分の心自体も適切な配置へとおさまっていく感じがしました。それは、まるで部屋の掃除みたいなものだなと思いました。部屋の掃除では、不要なものを捨てたりもしますが、家具や置物を適切な場所に配置していく過程ですよね。模様替え次第では、居場所が心地よい空間になったり、ソワソワしザワザワする違和感だらけの空間になったりもします。絵画を見る体験自体が、心の掃除のようなものであり、心の空間の模様替えのような行為に僕には感じられたんです。


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世界は今、すごくコンフュージョン(混乱)していますが、力で制圧するのではなく、絵画の中ではコンフュージョン(混乱)がオーダー(秩序)されておさまっているのです。

例えばいのくまさんの絵の中にある赤い大きな円をウイルスや戦争など強い力のシンボルのように見た時に、赤い円は完全に区切られずに空間の一部を空けて共存しています。

これは、何か巨大な力に対してのコンフュージョン(混乱)ではなく、ひとつのオーダー(秩序)なんですね。この配置であれば落ち着きますよね、おさまりますよね、と、いのくまさんの言葉が聞こえてくるようです。こうしたおさまり方は、高い次元での調和のあり方ではないかと思いますね。


絵画という限定された世界を介して、いのくまさんの絵を見れば見るほど心が成長するように思います。そうした次元も包み込んでいる画家だったんだろうと思いました。「癒やし」というやわらかい言葉ではなくて、もっと強く野性的で、それでいて朗らかで伸びやかなもの。どんな辛い環境でも、たくましく生きていくためのもの。

そうした意味で「美術館は心の病院」という言葉を残したのではないでしょうか。どんなに打ちのめされても、うちひしがれても、心が新しい高次の調和を求めて次のステップに向かって生きていくために。


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