イキウメ「関数ドミノ」@東京芸術劇場


「関数ドミノ」は、2005年に初演され、2009年、2014年、2017年と再演され、登場人物や結末が改訂され続け、今回は2022年版となった。



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「ドミノ幻想」

世界はある特定の人間を中心にして回っているとする考え。

その人間の願ったことは必ず叶う。

願った瞬間にドミノが倒れ、結果に向かって進んでいく。

周囲はそれに合わせて調整される。

また、ドミノは思いの強さに比例し、スピードを上げる。

最も速いものは「ドミノ一個」と呼ばれ、願った瞬間に結果が現れる。

それは俗に「奇跡」と呼ばれる。

なお、ドミノの力は期間限定である。ランダムに移っていき、誰に備わっているのか判定することは難しい。

当然本人にも自覚は無い_。

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Introduction

ある地方都市で奇妙な交通事故が起こる。

見渡しの悪い交差点、車の運転手は歩行者を発見するが、既に停止できる距離ではない。

しかし車は歩行者の数センチ手前で、まるで透明な壁に衝突するように大破した。

歩行者は無傷。幸い運転手は軽傷だったが、助手席の同乗者は重傷。目撃者は六人。

保険調査員の横道はこの不可解な事故の再調査を依頼される。

改めて当事者と目撃者が集められた。

そこで目撃者の一人が、これはある特別な人間「ドミノ」が起こした奇跡であると主張する。

彼の発言は荒唐無稽なものだったが、次第にその考えを裏付けるような出来事が起こっていく_。

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何層にも深く入り組む、とんでもない演劇体験!

わたしたちは、常に何か「思ったり」「考えたり」している。

ただ、「思う」「考える」だけでは、現実は何も変わらない。

そこに「行動」が伴うと、自分が行動したことで何かが変わることもあるし、変わらないこともある。

ただ、ある人が「思う」だけで、色々なことが現実化している(ように思える)とき、人は、その現実をその人をどう解釈するだろう?

「関数ドミノ」の舞台では、そうした人は「ドミノ」状態にあるとされる。「ドミノ」状態にある「思い」と「現実」が同時に動く人物の「思い」を、自分が得になるよう仕向けようと周囲は苦心する。もちろん、結果的に自分の願い通りになれば素晴らしいだろうが、もし「結果」が自分にとって都合よくなかった場合には、どう受け取めるのだろうか。それは相手の逆方向の思いが叶ったと考えて恨むのか、それともそもそも「ドミノ」ではない人間だった(もしくは「ドミノ」がだれかにうつった)、ということなのか・・・・。

誰もがこうしたことを考えたことがありそう。

「引き寄せの法則」を含め(思いが現実をつくる)、「モテ期」「運がいい人」「ついている人」・・・こういう状態に近いのかもしれず。

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人間には「心の空間」のようなものがあり、それは水の波紋のように、大きく他者に影響を及ぼす場合もあれば、小さくしか他者に影響を及ぼさない場合もある。

わたしたちが頭の中で「思う」こと自体は、「悩む」「考える」「苦しむ」「喜ぶ」・・・のように、心の内部で色々な形に変換されている。そして、心の世界では何かしらの仕事をしていているのだろう。心的エネルギーは内部で消費されているはずなので(「気疲れ」とか「消耗する」とか・・・)、やはり「思う」ことは、すでに何か別のことを生み出しているだろうと、思う。もちろん、「思い」と「結果としての現実」とをどういう関係性で結ぶのか、そこはどうとでも解釈できそうではある。

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モノづくりの現場を考えてみる。

芸術作品でも音楽作品でも演劇作品でも映像作品でも・・・誰かの「頭」の中にあったものが、何か現実の創造物として生まれて来た時、その「頭の中」から「頭の外」に移動するプロセスの中で、「どこまで深く考えたか」ということが、やはり「質」として顕在化してくると、わたしは思う。

そこで言う「質」とは、その作品に込められたエネルギー総量のようなもので、一見すると同じように見えるものでも、一対一で対峙した時に、思わず吸引されるような、惹きつけられるような磁場を放っているもので。

それは人間でも同じで、一緒にいるだけでとにかくうれしくなる人もいれば、とにかく疲れる人もいて、やはりその見えない心の空間では何かがやり取りされているだろう、といつも思っている。

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そうして、舞台を見終わったとき、哲学の深海へと体ごと連れて行かれ、気付いたら表に出てくるような旅のような時間だった。

そうしたことを意識の深い場所で受け取ったのだろうか?その後、徹夜で一気呵成に自分の本の文章を書き上げた。そのエネルギーは、果たしてどこからやってきたのだろう??

深く深く強く強く本心の本心で「思う」ことで、ダルマの目のようにして、本という創造物の中にも魂が宿るのではないか、とも思う。結果として。

そうした不可思議なエネルギーを与えてくれたこの演劇作品には本当に感謝だ!

やはり前川さんはすごい。

何か不思議な力を受け取る。

いつも期待を裏切らず、むしろ期待を越えてくれる。そんな作品をお客さんがみんな目をキラキラさせて劇場の中で待っている。こういうのを信頼関係というのだろう。

舞台の俳優陣も相変わらず、素晴らしかったです。

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6/12まで東京芸術劇場でやっていますし、大阪と豊橋の公演もあり。

人によっては、生き方が変わると思います。これは誇張ではないです。

ぜひ見に行ってほしい~~!!!



<参考>(以前のイキウメ舞台のBlog感想)

●June 1, 2021

劇団イキウメ「外の道」@シアタートラム


●November 2, 2019

イキウメ『終わりのない』@世田谷パブリックシアター


●May 28, 2019

イキウメ『獣の柱』@シアタートラム


●May 21, 2018

イキウメ『図書館的人生Vol.4 襲ってくるもの』 @ シアターイースト


●May 17, 2017

イキウメ「天の敵」@東京芸術劇場シアターイースト




■■■■イキウメWeb

 

[作・演出] 前川知大

[出演] 浜田信也 安井順平 盛 隆二 森下 創 大窪人衛 /

温水洋一 小野ゆり子 太田緑ロランス 川嶋由莉

イキウメ「関数ドミノ」

2022年5月17日(火)~6月12日(日)

東京都 東京芸術劇場 シアターイースト

2022年6月18日(土)・19日(日)

大阪府 サンケイホールブリーゼ

2022年6月25日(土)

愛知県 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール