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辰口温泉「田んぼの湯」@石川県能美市

  • 3 日前
  • 読了時間: 4分

せっかく石川県にまで行ったので、石川県能美市にある辰口温泉へ。


今回訪れたのは、旅館「たがわ龍泉閣」の名物露天風呂、「田んぼの湯」。

「田んぼの湯」とは、比喩ではなく、本当に田んぼの中から湧き出した源泉を使った温泉でした。



南には白山。周囲には里山と田園。その中に六つの露天風呂が広がり、しかも男女混浴。入浴用の浴衣を着て入るので、家族や夫婦、仲間と一緒に温泉を楽しむことができます。

この日は広大な露天風呂に私ひとりでした。



温泉好きとして各地を巡っていますが、これはかなり稀有な体験でした。

そもそも日本の温泉は、山の中、渓谷、海辺など、「地球の裂け目」から湯が現れる場所が多い。

ところが、ここでは田んぼから温泉が湧いています。

米を育てる土地から、人を温める湯まで出てくる。



辰口温泉には約1400年の歴史があるとされ、養老年間には、傷ついた馬が湯で脚を癒やしたという伝承も残っています。その後、手取川の氾濫などで源泉が埋まり、江戸時代末期の1836年、灰屋源助が再び温泉を掘り当てたことが、現在の辰口温泉につながったとされています。



しかも面白かったのは、入った瞬間に、「このお湯、意外と濃いな」と感じたこと。

あとで掲示されていた温泉分析書をじっくり見てみると、その感覚にも理由がありました。


泉質は、「ナトリウム―硫酸塩・塩化物泉」。pHは約8.0。

そして、温泉に溶け込んでいる成分、いわゆる「溶存物質」は、ガス成分を除いて約3.845g/kg。成分総計では約3.864g/kgあります。

主役となっているのは、

ナトリウムイオン 約1,068mg/kg

硫酸イオン 約1,439mg/kg

塩化物イオン 約918mg/kg。

かなり個性がはっきりしています。


「3.845 g/kg」という総量だけでなく、硫酸イオン約1.44 g/L+塩化物イオン約0.92 g/Lという陰イオン側の厚み。土地の水にはこれだけの地質情報が溶け込んでいます。



温泉は「何か一つ珍しい成分が入っている」ことだけが個性なのではありません。

どの成分が、どのくらいの量で、どのようなバランスで溶けているか。

それ自体が、その土地にしかない一つの「水の指紋」になります。


辰口のお湯は、硫酸塩と塩化物が二本柱としてしっかり存在する、ミネラル感の豊かな温泉でした。


ちなみに「成分が濃い」といっても、温泉医学的には少し注意が必要です。

この温泉は溶存物質が約3.8g/kgありますが、浸透圧による分類では「低張性」です。つまり、海水のような非常に高濃度の湯というわけではない。

それでも、単純温泉などと比べれば、湯の中に溶けているミネラルの存在感はかなり明瞭です。


実際、入浴してみると、刺激が強烈というより、身体の表面に湯がしっかりまとわりつき、出たあとにも温かさが残る感じがありました。


塩化物泉は、温泉成分が皮膚表面に残ることで熱放散を抑え、入浴後の保温感につながると考えられています。

一方、硫酸塩泉は、古くから「傷の湯」と呼ばれてきた系統でもあります。


つまり辰口の湯は、「派手ではないけれど、身体にじわじわ残る。」そんなお湯だと思いました。


「田んぼの湯」に入っていると、温泉というものが、浴槽の中だけで完結する医療ではないことがよく分かります。

湯につかりながら空を見る。

田園と里山の風景の中に、自分の身体も少しずつ溶けていく。

温泉とは、地球がつくった「環境療法」なのだと思います。


それにしても、田んぼの真ん中で浴衣姿で温泉につかっている風景はシュールでした。


CACLを訪ね、人と人を「つなぐ」ことについて考えた能美の旅。

その最後に出会ったのが、田んぼと温泉、人と自然まで、ゆるやかにつないでしまうこの湯だったことにも、不思議な縁を感じました。


工芸をつなぐ土地。人をつなぐ土地。そして地球の中から湧き出した水が、人と自然をもう一度つないでくれる土地。


辰口温泉「田んぼの湯」。

泉質を知ると、ますます面白い。

また一つ、忘れられない温泉に出会いました。



(写真は撮影不可なので、HPなどから)




辰口温泉 たがわ龍泉閣

〒923-1245 石川県能美市辰口町20


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