top of page

白良浜と鳴き砂と「あま」

  • 執筆者の写真: inaba
    inaba
  • 7月24日
  • 読了時間: 2分

南紀白浜温泉は、色々な立ち寄り湯があった。歩いているだけで、「・・の湯」に目が奪われてしまうのは別府と同じ。

時間がある時にすべて立ち寄ってみたい、という誘惑にかられる。


ree

南紀・白浜の純白ビーチは、ハワイに来たような気分になる。

実際、白良浜(しららはま)は、環境省の「快水浴場百選」や「日本の渚100選」にも選ばれている。

ただ、昭和の終わりごろ浜の砂が減り、平成に入りオーストラリア(フリーマントル鉱山)から砂が13万トン以上輸入されたらしい、という話を聞いた時は驚いた。


ree


砂が減る前の白良浜は「鳴き砂(Singing sand)」だったらしい。砂の上を歩くとキュッと鳴る砂のこと。

鳴き砂と言えば、十八鳴浜(くぐなりはま、宮城)、琴ヶ浜(石川)、琴引浜(京都)、琴ヶ浜(島根)などが有名。

砂が発する音のメカニズムについては、寺田寅彦も「砂の話」という随筆を書いているくらい。物理学者の間で昔から話題になっていた。Natureにも論文があるくらいで。


鳴き砂の砂は石英粒(二酸化ケイ素 (SiO2) からなる鉱物。無色透明なものが「水晶」)が主体で、砂の形と絶妙なバランスで、摩擦と圧と振動のハーモニーで音が鳴る。


京都の琴引浜の砂は0.3-0.8mmで、海の力が砂を絶妙な大きさ磨き上げている。砂が鳴る上で、大きさと共に大事なことは、少しでも汚れると砂は鳴かなくなる。常に砂が洗われ、浄化され、「きれい」な砂であることが砂が鳴り続けている理由らしい。

そう思うと、砂の粒子を見る目も、砂浜と海との関係を見る目も、変わって来る。



以前、琴ヶ浜(島根県)で鳴き砂の音色を聞きながら歩いていたら、意識変性状態となり、表層意識が浦島太郎のように海底のドリームタイムに入り込みそうになったことがある。



裸足と砂の音。


こうした原初の空間こそが、現代医学では到達できない人間の深層の治癒に働きかけるのではないだろうか。



そんなことを夢想しながら白良浜を歩いていたら、また大雨が降ってきた。

古代語の「あま」は、「雨(あま)」であり、「天(あま)」であり、「海(あま)」でもあった。

「天と雨と海」とが、水の雫で一続きになる。その驚きや感動を「あま」という二つの言葉に集約させた先人たちのワードセンスには感服だ。



ree
ree
ree
ree

コメント


© All right reserved TOSHIRO INABA

bottom of page