味噌ジェラート@鹿教湯温泉(イズミヤ ジェラート)
1982年の鹿教湯温泉「’82 マイコン・イン」のことを書いた。古い湯治場に、まだ誰も見たことのない「未来」を持ち込もうとした不思議で魅力的な試み。
当時のチラシを見つけた場所は、鹿教湯温泉で9月12日(土) にオープンする「イズミヤ ジェラート」。廃業した巨大な「いづみや旅館 鹿教湯温泉」の再生事業。まず1階から。今後は素泊まりも稼働していくらしい。
イズミヤ ジェラートオープン前にご好意で食べさせていただいたが、これが実においしい!
今回いただいて驚いたのが、味噌ジェラートだった。


その味噌をつくっているのが、鹿教湯から近い丸子の大桂商店。ここがまた、とても素晴らしいお味噌屋さんなのです。我が家は、自分で作った手作り味噌と大桂商店の味噌とのマリアージュで食べているほど(小諸の山吹味噌も買います)。自分の腸内細菌は、長野の微生物でできてます。
大桂商店の創業は文政4年、1821年。200年以上にわたって丸子で味噌を造り続けている。原料は大豆、米、塩という、ごくシンプルなもの。麹室で麹蓋を使って育て、信州の四季の温度変化の中で自然発酵・熟成させる、昔ながらの仕事を守り続けている。
味噌も含め、発酵食は不思議な食べ物だ。人間がすべてを「作る」のではなく、大豆を蒸し、麹を育て、塩を加え、仕込む。そこから先は、菌と時間と気候に委ねる。人がつくり、微生物がつくり、土地がつくり、時間が完成させる食べ物だ。
それは、どこか温泉にも似ている。
温泉も、人間がつくることはできない。雨や雪が山に降り、地下へ浸透し、地球の熱で温められ、岩石からさまざまな成分を受け取り、長い時間をかけて地表へ戻ってくる。
だから私は温泉を、「地球がつくった病院(made in Earth)」と呼んでいる。
味噌もまた、小さな発酵蔵の中で、土地と微生物と時間が働き続けて生まれてくる。そして、その200年の味噌が、今度はジェラートになる。
温泉 × 発酵 × ジェラート。
そして店内には、1982年の坂本龍一とマイコンのチラシがあった(天井の照明を探してみてください)。
40年以上前、鹿教湯温泉は、温泉街に「コンピュータ」という未来を持ち込もうとした。そして2026年、そのすぐそばで、200年前から続く味噌が、新しいジェラートに姿を変えている。
ここには、鹿教湯という土地の面白さが凝縮されているように思う。古いものを保存するだけではなく、古いものを未来へ渡していく。大切なのは、その土地の奥に流れているものを失わないことなのだと思う。
大桂商店の味噌ジェラートを口に入れると、最初にやわらかな甘さが来て、その奥から味噌の塩味と旨味、発酵の複雑な香りが立ち上がってくる。
甘い/しょっぱい、では割り切れない発酵の深み。おいしかった。
温泉街に必要なのは、大きな施設ばかりではなく、小さな場所が一つ増えるだけで、温泉街の歩き方は変わる。
1982年、坂本龍一がポスターの中から見つめていた鹿教湯の未来。その未来の続きを、いま私たちは歩いていると思うと不思議だ。

湯けむりの中に、200年の味噌があり、その味噌がジェラートになり、その横にはマイコン時代の坂本龍一がいる。こんなに時代が混ざり合う温泉街は、なかなかない。
鹿教湯温泉に、またひとつ、立ち寄る楽しみが増えた。
温泉に入ったあとの一口に、ぜひ。
鹿教湯の「過去」と「未来」を一緒に味わえるジェラートです。
丸子(マルコと聞くと、いつも「ちびまる子ちゃん」を思い出すんですが)の大桂商店の味噌もすばらしいので、ぜひ通販で購入してみていただきたいです。
●イズミヤ ジェラート
〒386-0323 長野県上田市鹿教湯温泉1385
●大桂商店|文政四年創業の信州味噌醸造元
〒386-0404 長野県上田市上丸子991-1
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