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「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」@東京都現代美術館(MOT)










常に想像の次元を超え続け、天界に広がるような自由の境地で描き続ける横尾忠則さんの世界。

あらゆるイメージと色と記憶とインスピレーションの海。

インスピレーションの源泉は宇宙の果てまでも、霊界や異界の果てまで開かれている。

美醜や善悪や生死など、あらゆる二項対立を交わらせながら、その衝突と融合とが新たな生命力を生み、魔術のような調和で共存している世界。それは見たこともない世界でありながら、同時にわたしたちが「見たかった」世界でもある。


子どものように自由で倫理や常識や固定観念のとらわれがなく、それでいて横尾忠則の知性や理性や礼節や愛やユーモアは極まっていて、どの器にもどのカテゴリーにも入りきれず溢れ出している!

その巨大な母性と父性の前にメロメロに打ちのめされてしまう!


最後のフロア、寒山拾得(かんざん じっとく)という禅画の主題でも扱われる古典をテーマに、現在85歳!の横尾さんを通過した絵画のフロアはすさまじいものだった。

この会場の空気中に、粒子と波動として色やイメージが飛び出ている!

足元にも空中にも寒山・拾得が臨在しているかのような実在感。

椅子に座って絵を長く眺めていたら、足の上に彼らの実在感をすら感じてしまった。


「心の融合」をすべておし進めながらイメージと共演(狂演?!)した果てに、限られた人にしか見ることを許されない景色の一端を、横尾さんが命がけで私たちに見せてくれている、とでも言うべきか。


寒山拾得の絵は、掃除と排泄がテーマだった。これは横尾流の未来の予見なのだろうか。

これから地球規模で掃除や排泄がシンボリックに起きながら、わたしたちが魂の原郷を取り戻す時代が到来するのだろうか。

イメージ界の前で、ふと襟を正す。



横尾さんが戦前、戦中、戦後、そして現代と、生き続けながら発信し続けている。同時代に生まれていることを光栄に誇りに思う。横尾さんのように、生き方自体に霊性が宿るような、そんな生き方をできるよう、勇気をもらう展覧会だった。



実際の横尾さんは、魂の奥まで見透かしているような人だ。そう意味では究極的にフェアな方だ。自分のような若輩者にも最大限の礼節を図ってくれる方で感動しました。


あまりの熱量に、会場内でも迷子になりそうでした。ただ、そのおかげでいつのまにか2巡してしまい、すべてをもう一度見直した。見直すとまた絵画の中に新しい発見もあった。すべてのフロアがメビウスの輪のようにループしている。過去・現在・未来が、今という永遠の中で融合している会場!


日曜美術館で放映されたこともあり、今後はさらなる混雑が予想されますが、会場でカオスに包みこまれながら、横尾さんの迷宮の中で迷子になりながら、あなたなりの原郷へと、足を踏み込んでいただきたい。

展示を入って出るときには、別人生に入れ替わるかのような体験必至です。


売店横のホワイエに、自分の横尾さんマスク写真(2020年12月、長井朋子さん個展のオープニング着用時のマスク写真)も作品化して出ているものをやっと肉眼で確認出来て、うれしかったですー!















 

東京都現代美術館

GENKYO 横尾忠則  原郷から幻境へ、そして現況は?

2021年7月17日(土)- 10月17日(日)



巡回展

大分県立美術館 2021年12月4日(土)~2022年1月23日(日)[予定]



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