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With the Beatles and Sutcliffe (Happy Xmas (War Is Over))



12/26日曜は、FM軽井沢のラジオ「今こそ永遠」、全12回の最終回でした。


●【radio】2021/12/26(Sun)(AM10:30-10:55):「今こそ永遠」(最終回)(FM軽井沢 77.5MHz)(メインパーソナリティー:稲葉俊郎)(番組Facebookページ)(毎月最終日曜日(AM10:30-10:55))(FM軽井沢





最終回に何を話すかということで、やはり軽井沢に縁のあるジョンレノンの話をしました。


ビートルズは学生の時から聞いていますが、いまだに奥が深く、語りつくせません。マジカルな力が泉のように湧き出ています。

ビートルズの魅力を語る上で、「5人目のビートルズ」を共有したいと思い、ラジオで話しました。


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ビートルズは4人組のバンド(ジョン、ポール、ジョージ、リンゴ)ですが、ビートルズデビュー直前に夭逝したスチュアート・サトクリフという人の存在が、大きな影響を与えているのではないかと思います。若者だったビートルズが、サトクリフのいのちを受け取った。そのことで異界の窓が空き、不思議なコードを受け取るように天界の音楽を作るようになったのではないかと、ずっと思っています。



スチュアート・サトクリフはビートルズのバンドに加入していた美大生でジョンの親友ですが、1962年に22歳の若さで亡くなりました。リヴァプール・カレッジ・オブ・アートではスター的存在で、ジョン・レノンとは共同生活をするほどの親友でした。その仲の良さにポール・マッカートニーが嫉妬していたほどです。ジョンが彼とバンドをしたいとのことで無理やりバンド活動に引き入れました。


ドイツのハンブルクに演奏旅行で行ったとき、サトクリフは写真家のアストリッドと出会い、後に婚約します。

2度目のハンブルク巡業後、サトクリフは画家の道に進むことを決め、ビートルズを脱退します。音楽を辞めてハンブルク美術大学に入りますが、1962年に脳出血で突然死するのです。それは、ビートルズ3回目のハンブルク巡業前日のことでした。

ジョン・レノンは、サトクリフをもう一人の自分のような存在だったと語り、サトクリフの遺品であるマフラーは終生手放さなかったとヨーコは語っています。


ちなみに、ビートルズのトレードマークであるマッシュルームカットは、アストリッドがサトクリフに施したのが始まりです。

この辺りの経緯は、映画『バック・ビート』で紹介されています。






「With the Beatles」(2作目)のジャケット写真はまるで遺影のように闇から浮かぶ不思議な写真で、カラー写真が多いレコードジャケットで物議をかもしたと言われています。

実際、4歳の我が子も、このジャケットにはただならない霊的な雰囲気を感じ、近寄ることすらできなかったほどです。





この写真は、サトクリフが亡くなったことを聞いた後、彼のアトリエで呆然と佇むジョンやジョージをサトクリフの婚約者だったアストリッドが撮影した写真がモチーフです。まさに、サトクリフという死者への思いを表現するかのように。









また、世界で最も売れたとされる8枚目の「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」のジャケット写真にも、左上に若きサトクリフの写真が載っています。









その後のビートルズから、わたしはあらゆる形でサトクリフの「いのち」の形を感じ続けています。あなたは光のようにここに重なっているよ、と、画家であったサトクリフの才能を重ね合わせるように。


4人のビートルズも、それぞれ親の死など孤独を抱えた若者たちで、彼らなりに「いのち」を受けとり、孤独を隠さずに4人がハーモニーとしてぶつかりながら不思議な調和をして、それこそがビートルズの魅力です。ジョンとポールの音域に、ジョージの聲は倍音のように重なり、不思議なハーモニーを奏でるのです。



サトクリフの「いのち」は、ビートルズの楽曲に深く入り込み、そのことがビートルズやジョンの異次元の魅力となり、深みと翳りを付与しています。

光は、影と統合することで高次の光となるように。




 



1曲目にご紹介した曲は、

「Happy Xmas (War Is Over)」(3:34)(1971年)(作詞・作曲:ジョン・レノン&オノ・ヨーコ)です。






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So this is Christmas

And what have you done?

Another year over

And a new one just begun

今日はクリスマス

あなたはどんな1年を過ごしたの?

また1年が終わり

新しい年が始まる


And so this is Christmas

I hope you had fun

The near and the dear ones

The old and the young

そして今日はクリスマス

楽しんでくれてるかな

身近な人も、親愛なる人も

お年寄りも、若者も


A very Merry Christmas

And a happy New Year

Let’s hope it’s a good one

Without any fear

心からメリー・クリスマス

そしてハッピー・ニュー・イヤー

良い1年にしよう

怖がらなくていいような


And so this is Christmas (War is over)

For weak and for strong (If you want it)

For rich and the poor ones (War is over)

The road is so long (Now)

そして今日はクリスマス(戦争は終わる)

弱者も強者も(あなたが望めば)

金持ちも貧乏人も(戦争は終わる)

遠い道のりだけど(今すぐに)


And so happy Christmas (War is over)

For black and for white (If you want it)

For yellow and red ones (War is over)

Let’s stop all the fight (Now)

そして今日はクリスマス(戦争は終わる)

黒人も白人も(あなたが望めば)

黄色い人も赤い人も(戦争は終わる)

争いはもう止めよう(今すぐに)

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War is over 

If you want it



ここでの「War(戦争)」は、実際の戦争のことも指していますが、概念(Concept)としての「War(戦争)」も意味していると思います。

つまり、物事を解決するときに、闘いや争いにより、戦争のメタファーを使ってわたしたちが物事を解決している限りは、この世から戦争は終わらない、と。

実際、国同士の戦争も、結局は人為的なものです。指導者も役人も、すべては人です。

わたしたち人間の頭の中から「War(戦争)」というコンセプトがある限り、この世から「War(戦争)」はなくならない。だからこそ、「If you want it」、あなたが本当に望み、実践し、あなたの頭の中から「War(戦争)」がなくなれば、「War is over(戦争は終わる)」と言っているのだと。


そのことは医学の領域でも同じです。体の中で戦争が起きていて、体が戦場である。と考えている限り、「戦争のメタファー」の呪縛から逃れられないのではないかと思います。それよりも、数十億年続く「いのち」の奥深い本質をこそ、見つめる必要があるのではないだろうかと。戦争ではなく、むしろ多様性と調和こそが、いのちの本質だと思います。


『happy Christmas (War is over) For black and for white (If you want it)』を聞くたびに、そうしたことが頭に浮かびます。



 

Xmas(クリスマス)の日に関して。


3世紀までのキリスト教は、12月25日をクリスマスとして祝ってはいませんでした。まだキリスト教を受け入れていなかったローマ帝国では、12月25日は太陽崇拝の特別な祝日。太陽崇拝としてのミトラス教の主祭日が「冬至」に当たる12月25日です。この日は、自然エネルギーがもっとも衰え上昇へと転換する分岐点の日でもあり、同時に死者の祭りでもありました。人類学者のレヴィ=ストロースも著作で語っています。



冬至の時期、太陽はもっとも力を弱め、世界はバランスを失います。そのとき、生者と死者の力関係のバランスが崩れることで、生者の世界に死者の霊が出現すると考えられました。生者は、そこで訪れた死者の霊を、心を込めてもてなし、贈り物を与え、彼らが喜んであの世に立ち去るようにもてなします。そうした死者の霊の代理を生者の世界でつとめたのが子どもたちです。子どもはあの世や精霊に近い存在です。大人は、子どもを通じて死者への贈り物をする必要があり、そのためにサンタクロース「遠方からやって来るやさしい老人」を媒介としていました。子どもに贈り物を渡す存在は、子どもと同様に霊界に近い存在、つまり老人や翁の存在が必要となりました。


大人は子どもに贈与し、そのお返しに子どもは大人たちの社会に、未来に対して来年の豊穣や豊かさ、幸をお返しするのです。クリスマスにおいて、生者と死者の間には、贈り物を通じたコミュニケーションが発生します。それは日本のお盆の儀式にも似ています。クリスマスとは死者をもてなし、死者のいのちを受け取る祭でもありました。

今は亡き人を想い、死者の命を受け取るのが年末の重要な再生の儀式です。みなさんは、どういう死者を思い出したでしょうか?



ラジオの最後の曲は、

「(Just Like) Starting Over」(1980年)(作詞・作曲:ジョン・レノン)(1980年:『ダブル・ファンタジー』)

にしました。ジョン・レノンとオノ・ヨーコの共作アルバム「Double Fantacy」に収録されている曲です。


ジョンが5年ぶりに音楽活動を再開した1980年10月に、シングルとしてリリースされましたが、ジョンの生前にリリースされた最後のシングルともなりました。

「Starting Over」とは、「新たな始まり」、「再出発」、「やり直し」を意味します。


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毎日、僕らは愛し合ってきたけど

心地よく、やさしく愛し合っていこうよ

今こそ、翼を広げて羽ばたく時

これからの日々を無駄にはしないよ、愛する君

それはまるで、新しい始まり、新しい始まりなんだ

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ジョンの最後の曲は、はじまりと終わりとが、生と死とがメビウスの輪のようにつながった曲で、この曲を遺してあの世に旅立ったジョンの曲を聴いて、みなさんは何を感じ、受け取るでしょうか。



ラジオの最終回は、ジョンやビートルズの話で終わりました。

ジョンとヨーコが滞在した軽井沢に敬意を込めて。

また、どこかのラジオ電波内でお会いできるとうれしいです!!



●John Lennon Just Like Starting Over








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