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SOIL Nagatoyumoto 新しい場の創造

山口の長門湯本では、同じ場に集う関係者が、互いを否定しあい、疎外しあうのではなく、肯定しあい高めあう場の工夫が随所になされていた。今後の湯治場や温泉地の再創造を考えていく上で、とても重要なフィロソフィーと実践を含んでいると思った。


地元の温泉旅館、大谷山荘、恩湯、星野リゾート(界)、そしてSOIL Nagatoyumotoなど。新しい場が同時に立ち上がっているが、そのために長く丁寧な助走があった。


まず思いの結集点として「長門湯本温泉観光まちづくりデザイン会議」を設置し、デザインや美という観点から、多くの人が対等に意見を出せる場をつくっていた。美の観点から少しずつコンセンサスを取っていき、身内受けで閉じるのではなく、外からの視点を貪欲に飲み込みながら、内と外との視点を両方から突き合わせていく。


温泉地に「おのずから」生まれた街並みももちろん美しい。ただ、場には浄化し洗い流す必要がある要素も含まれていくので、定期的に湯治に行くように、不要なケガレは洗い流す必要がある。大きな「おのずから」を受け取りながら、小さい「みずから」として町の絵を描き共に作り上げていく必要がある。

もちろん、日本はそうしたことが苦手だ。多くは局所最適化になり、自分のところがよければそれでいい、となり、場の力が打ち消しあってしまう。

定期的に大きな場の全体性を更新していく必要がある。浄化と再生は、個人の心身だけではなく、場にも必要な概念だ。そうでないと場全体がつぶれてしまう。高い美の基準を提示し、一つの基準線を共有することが大事な気がした。



長門湯本では、美意識を高く場の設計に関わった。高いラインの基準線が引かれ、美の基準が無意識に場を引っ張っていたような気もした。


こちらは新しくできた瓦そば柳屋 長門湯本店。










開業前のSOIL Nagatoyumotoは、岡雄大さんから話は聞いていたが、実際の建物や内装を見て、その美しさは素晴らしいものだった。

Puddleの加藤匡毅さん(同じ軽井沢!)が手がけた内装の空間設計は随所に唸るものが多く、最上階のサウナの作りは秀逸だった。あまりにも景色がよく、外からも丸見えだから、水着着用で入る。ここでのサウナ体験は野外の清浄な森と水を通過した清涼な風が心身深く通り抜けて、水と火だけではなく、風のエネルギーも含めて浄化させてくれるだろう。













私はあまりサウナは積極的に使用していない。が、昨今のサウナブームは「温浴空間」の場の創造性を確実に上げた。サウナは自分自身の心身との対話であり、人間が持つ自然治癒へと意識が向かうのは、医療界にとってもいい流れだ。空前のサウナブームで日本人の創造性が最大限に発揮されている。


その後に、日本の医療の原点である湯治というディープな日本オリジナルの養生文化に意識は向かうだろう。湯治は2000年近くの歴史がある。科学よりも歴史の厚みがその効果を証明していると思う。私は歴史の重みを科学のエビデンスよりも上位に位置付けている。


まだ開館前のSOIL Nagatoyumotoをご案内いただきありがとうございました。

若い人たちに新しい転地療養、養生文化を運んでくれる素敵な場だ。次はここでも一泊してみたい。海外の人たちもきっと喜ぶだろう。



●SOIL Nagatoyumoto

薪窯ピザのレストラン『TARU』もおいしそうだった!!一部屋料金なのでご友人や家族と行けばお得です。




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