K-BALLET Opto『踊る。遠野物語』@東京建物 Brillia HALL
- inaba

- 2025年12月27日
- 読了時間: 3分
年末の池袋(東京建物 Brillia HALL)に、「踊る。遠野物語」を見に行く。
舞踏とバレエと古代の音とが融合した、かなり挑戦的な舞台だった。

「踊る。遠野物語」では、1945年の戦争時の特攻隊員が神隠しにあった超自然的な少年に導かれながら彷徨う舞台。
生きているのか死んでいるのか。ここは、この世なのか、あの世なのか。この世とあの世のあわい・結節点である「遠野」をさまよいながら、オシラサマ、雪女、山姥などに出会い、許嫁の面影を重ね合わせながら、自分自身に問いかける魂の舞台。
「舞踏 (BUTOH)」(1950年代に土方巽らが創始した、日本独自の前衛舞踊(暗黒舞踏))を見たことがない人には衝撃だったのじゃないかと思う。「踊る。遠野物語」の主催は熊川哲也さんのK-BALLET(バレエカンパニー)で、多くのバレエファンが見に来ていた様子だったから。バレエは天に飛翔していくダンスだが、対照的に舞踏は地へと融合していくような舞踊。対照的だからこそ、対局主義は舞台という器の中で異次元の化学反応が起きていた。
私は大学生の時、大駱駝艦の舞踏(吉祥寺にある壺中天)をかなりよく見に行った。舞踏は身体内にある微細な振動など、内部にある体の勢いを丁寧になぞったような身体運動で、頭では考えつかないような動き。体の動きそのものをダイレクトにつなげるようなうごき。
今回は麿赤兒さん率いる大駱駝艦や舞踏集団と、熊川哲也さんのK-BALLETのバレエとが対等に交錯するスタイルで素晴らしい舞台だった。

また尺八奏者の中村明一先生が舞台音楽を作っていて、この音楽構成の深さが素晴らしく、舞踊と音とが空間の中で高い次元で融合していた。
「予感」としか言えないような空間に漂う何かを表現するには、西洋音楽ではノイズと言われる無限の音に意味を見い出してきた東洋音楽の真髄でもある。ちなみに、わたしは中村明一先生から、密息という特殊な呼吸法を学びに行っていた時期もある。

死者の魂が踊る。魂という役名もある。
魂の世界から、この世界を見つめれば、この世から戦争も亡くなるのにな、と思う。肉体の本能的な動きととらえれば、舞踊は人間に限られたものではなく、動物や精霊など含めた生命存在と心や魂を通わせてシンクロした動きだったのかもな、と思う。
遠野物語は「オマク」と「シルマシ(兆し)」の物語であるという。「オマク」とは生者や死者の思いが凝って形になったもの。「シルマシ」は、その「兆し」のこと。そんな「兆し」をどれだけ私たちが受け取れるのか。語り部による物語となり、唄となり、舞踊となり、時に総合芸術の舞台として。
ちなみに、今回のポスターは横尾忠則さんで、わたしがキューピット役で間に入らせていただいたことで実現したのは光栄な仕事でした。

●「踊る。遠野物語」
東京で12/26-12/28で上演されたあと、1月9日に山形、12日に秋田、15日に青森、18日に岩手と東北ツアーも続きます。ご興味ある方はぜひー。
=======
Orchardシリーズ
K-BALLET Opto『踊る。遠野物語』
演出・振付・構成:森山開次
企画:高野泰樹
舞台美術・衣裳:眞田岳彦
音楽監督・作曲・尺八演奏:中村明一 作曲:吉田 潔、アーヴィッド・オルソン
箏演奏:磯貝真紀 歌:菊池マセ
宣伝美術:横尾忠則(ポスタービジュアル)、森 洋子
出演:石橋奨也、大久保沙耶、他K-BALLET TOKYO、麿 赤兒、尾上眞秀、田中陸奥子、森山開次
村松卓矢(大駱駝艦)、松田篤史(大駱駝艦)、小田直哉(大駱駝艦)、奥山ばらば、水島晃太郎、小川莉伯
●K-BALLET Opto『踊る。遠野物語』トレーラー
●K-BALLET Opto『踊る。遠野物語』リハーサル映像
コメント