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2019/9/22:『いのちの働きから見た能楽』@熊本、長崎書店

すごく先のことのようにおもっていたら、いつのまにか今月になったのでアナウンス。

9/21土曜、熊本「万作・萬斎の会」でプレトークをします。

伝統芸能の意義や、狂言における「笑い」の意義(狂言は、死者が主役である能楽と必ずセットで演じられるのです)。 そうしたことを話したいと思います!

(萬斎さん主催の『狂言ござる乃座』に稲葉が寄せた文章から抜粋)

 

萬斎さんとは、『MANSAI解体新書 その弐拾六』(世田谷パブリックシアター)にて、ギタリストの大友良英さんと一緒に共演させていただきました。その瞬間にしか生まれない場が立ち上がり、素晴らしい会でした。 萬斎さんという果てしなく深く広い器の中で、出演者は触媒となり、お客さんも含めた場全体が化学反応を起こしていました。

舞台は、「あたま」で知的に理解するためのものではなく、「からだ」全ての細胞で感じ、「豊か」になるために行くものだと思います。 質の高い芸術により、いのち本来の全体性や調和が取り戻されます。

だからこそ、舞台などの空間芸術には極めて医療的な側面があります。現代医学が見落としていることです。 自分はそうした観点からも芸術を愛し、古典芸能への深い敬意を持ち、能楽の稽古に励んでいます(観世流梅若派能楽師 井上和幸先生)。

萬斎さんは野村家の長男として狂言師を受け継ぐ傍ら、世田谷パブリックシアター芸術監督もされ、ゴジラにもなり、ご活躍は多岐にわたります。 萬斎さんは、芸能が持つ可能性を信じ、受け取った全てを広い視野で次の世代に受け渡そうとされていると思います。「みずから」受け継ぐ強い覚悟と、「おのずから」の流れ。そのあわいの力を萬斎さんの存在から感じます。

ギリシャのエピダウロスに、紀元前4世紀に作られた古代円形劇場(世界文化遺産)がありますが、そこはギリシャ神話に登場する医療と健康の神(アスクレピオス)の聖地でもあります。この地に足を運んだとき、総合的な医療施設だと思いました。劇場以外にも、温泉場、神殿が広く配置され、心や体の全体性を取り戻すため、芸術や温泉を含めた心身の総合的なケアが行われていたのです。神殿には眠る場所もあり、そこで見る夢にはアスクレピオスが現れ、眠りや夢見体験そのものが人間の全体性を回復する聖地でした。

日本では、能楽や狂言や神楽など、伝統芸能や祭りの形で先人の技や思いは伝わっています。日本人は、文字で情報を伝えるのではなく、身体言語としてからだで一人一人に伝えていく手段をとりました。 なぜなら、からだは嘘をつけないからです。身体言語は「型」として伝承され、美へと変換され、能や狂言として体験します。 「型」は体の自然に沿った調和的なからだの在り方でもあり、伝統芸能ではたたずまいだけ(そこにいるだけ)で美しいのです。 筋肉と骨、からだは対立せず、からだ全体が調和的だからこそ、年をとればとるほど、動きの質は深まり、美しさを増していくのです。美は調和であり、いのちの原理そのものです。

伝統芸能は「いのち」を受け継ぎ、私たちを支える「いのち」へと働きかけます。日常と違う夢見の意識状態で舞台を体験することは、いのち、からだ、こころ全体の調和にもつながるのです。

萬斎さんをはじめ、日々の稽古で先人の「いのち」を伝える尊いお仕事をされている皆様が日本の霊性を深層で支えています。深い敬意を持っております。舞台にいつも感動しています。本当にありがとうございます。

 

9/21土曜は熊本に行きせっかくなので、、、ということで。

9/22日曜には熊本が誇る最高の本屋さん長崎書店で、医療と能楽について語る場をもらいました。 (9/21の夜には『囲む会』という名目でみんなで食事して談笑する会もあるようで!)

ちょうど、9月25日水曜に、稲葉俊郎「からだとこころの健康学」NHK出版という本が出ます。その先行販売もかねて、話せるのはグッドタイミング!

この本は、NHK出版「学びのきほん」シリーズの5冊目として出ます。(Amazonにはすで出てます)

●若松英輔『考える教室 大人のための哲学入門』 ●飯間浩明『つまずきやすい日本語』 ●安田登『役に立つ古典』 ●藤田一照『ブッダが教える愉快な生き方』

という並びでの5冊目。 尊敬する人たちのあとで、それだけで光栄。

9/22の長崎書店では、新刊のことと、能楽と医療との関係(特に、人間の「意識」の話しや、生と死との関係の話になると思いますが)、そのあたりを話します。

熊本近辺の方、ぜひお越しをー。 全冊に、違うイラストのサイン書きます。笑

■2019/9/21(Sat)(14:00-):熊本「万作・萬斎の会」狂言のおはなし&トーク(稲葉俊郎 野村萬斎)@熊本県立劇場(熊本県熊本市中央区大江2丁目7-1) <内容>狂言のおはなし&トーク(稲葉俊郎 野村萬斎),素囃子「神舞」,狂言「蚊相撲」,語「那須与市語」,狂言「博打十王」 (→問い合わせ:(株)ノマ企画 内 ふくおか・熊本・大分「万作・萬斎の会」(TEL:092-781-1267, 10:00-18:00)

■2019/9/22(Sun)(14:00-16:00):『トークセッション 医療と能楽 vol.2 『いのちの働きから見た能楽』』稲葉俊郎(東大病院医師)@リトルスターホール(長崎書店3階)(熊本市中央区上通町6-23) HP

●2019/9/25:稲葉俊郎「からだとこころの健康学」NHK出版

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