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「奈々福、独演。~銀座でうなる、銀座がうなる~」@観世能楽堂

ここ最近は、芸大大学院の修士論文のコメンテータのため、論文を熟読に熟読していたし、仕事もいそがしくてまったくブログを書く暇がなかった。。。

その中で、週末には観世能楽堂にて「奈々福、独演。~銀座でうなる、銀座がうなる~」へ行ってきた。

ほんとうに素晴らしく、感動した。

玉川奈々福さんの声はすごい。

突然、脳天の上?脳天の中?みたいなところから音が鳴っているような、不思議な音響がする。きっと、そのときどきの場や空間に共鳴して、人智を超えた倍音が響いているのだろう。

 

浪曲の世界とはいいものだ。 そこには「情」とも呼ぶべき、大自然の中では社会的弱者である人類が、ともに身を寄せ合い、助け合った、「お互い様」とも呼ぶべき世界が高らかに歌い上げられている。決して、センチメンタリズムでもなく。確固とした現実のリアリズムを歌い上げながらも、そこで流れる「情」、そして人はどんな時でも立ち上がり、前を向いて歩いていけるのだ、という人間賛歌や人間や生命への信頼、そうしたものを感じる。

人をおちょくったり、こ馬鹿にしたり、そういうものはあまり感じられない。ユーモアで優しく物語を包みながら、それでいて、巨大な母性的な膜ですべてを抱擁して肯定するような、そうした豊かな世界観がある。

浪曲には、落語・講談・義太夫節などの日本の日本の伝統芸能のエッセンスがすべて含まれている。そうしたことも、浪曲に巨大な母性を感じるところだ。母性でもあり、芸の母型でもある。

演目は、 高畑勲原作「浪曲平成狸合戦ぽんぽこ」 正岡容原作「浪花節更紗」

トークゲストに鈴木敏夫さん(スタジオジブリプロデューサー)が来られた。

「浪曲平成狸合戦ぽんぽこ」は、笑いだけではなく現代への批評と未来への希望のようなものが強く込められたいたし、「浪花節更紗」も、一見何もしないように思える無為の人物への存在肯定であったり、逆境で乗り越える人間のレジリエンス後からのようなものが込められていて、それをすべて奈々福さんの七色の歌声で包み込む(それを静かに支え続ける沢村豊子師匠の三味線)。

浪曲を見ていて、時にジーンと感じるのは師弟愛のようなものだ。みんなが師匠を大切にする。その光景を観客は全員が体験として共有する。奏した全ても、浪曲のエッセンスを表しているような気がする。そこに流れるおかげ様、お互い様の、日常の形。

とってもすばらしかった。 ぜひ多くの人に、浪曲の世界を味わっていただきたい。自分の子供にも、言葉が分かるようになったら是非見せたい。

玉川奈々福さんのしばしば見せる満面の笑顔も、いつも素敵です。

浅草木馬亭ふくめ、色々な面白い場所でされているのでぜひぜひチェックしてください。名もなき多くの民衆が支えてきた、芸の厚みとふくらみを感じます。

過去の日本が持っていたコミュニティーは、 寄席、温泉や銭湯、神社やお寺、です。 こうしたものを現代に新しく復興させていくことが、未来の医療の場とも接近していくと自分は思っています。 生きる力を得る場。生活を支える場。 そうしたものが、医療を支えているものだと思うのです。

今回の講演に関する、こういう素敵なInterview記事もあわせて。

名前:玉川奈々福(たまがわ・ななふく) 誕生日:三波春夫先生と同じ7月19日 性別:女性 職業:浪曲師・曲師(浪曲三味線弾きのこと)

一言:1994年10月、日本浪曲協会主宰三味線教室に参加。1995年7月7日、玉川福太郎に入門。三味線の修行をしていたが、師の勧めにより2001年より浪曲師としても活動。2004年「玉川福太郎の徹底天保水滸伝」全5回、2005年「玉川福太郎の浪曲英雄列伝」全5回をプロデュースしたが、全10回公演がすべて大入り満席となる。2006年12月、芸名を美穂子から奈々福に改め名披露目。さまざまな浪曲イベントをプロデュースする他、自作の新作浪曲や、長編浪曲も手掛け、他ジャンルの芸能・音楽との交流も多岐にわたって行う。かに座のO型。賞罰、なし。平成30年度文化庁文化交流使として、イタリア、スロベニア、オーストリア、ハンガリー、ポーランド、キルギス、ウズベキスタンの七か国で公演を行った。

 

■伝統芸能パースペクティヴ<第1回> 「語りもの」の声技(こえわざ) <PART 1>浪曲 [出演]玉川奈々福(浪曲師)、沢村豊子(曲師)

■奈々福の浪花節更紗

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