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朝崎郁恵さん 「うた」の力

昨日は奄美の唄者、朝崎郁恵さんとアニシモフ監督(東京ノーヴイ・レパートリーシアター)と稲葉との鼎談。司会もかねて。

朝崎郁恵さんはもう82歳になるのに、あの元気さはどうだろう。 背筋も曲がっていない、記憶力もすごい、頭の切れも早い。驚く。

今の西洋医学は病気を学ぶ病気学に関してはたくさんの知恵があるが、自分は健康とは何か、幸福とはなにか、そういう健康学をこそやりたい。 健康学では、音楽を含めた芸術の力は重要な要素になる。

そして、朝崎郁恵さんが伝えてきた奄美の「うた」は、僕らがおもっている歌とはかなり違っている。 文字文化をあえて持たないことを選択した先人たちの、会話であり、コミュニケーションであり、記憶術であり、鎮魂のわざであり、悲しみの秘儀であり、歴史そのものであり、あらゆる要素がうたの中に込められている。

1000年以上も前の「うた」。作者が誰かもわからない「うた」。作者というせせこましい概念がなかった、おおらかでのびやかだったころの名残。 それは、まさに声の響きそのものであり、それは空気を響かせ、自然を響かせる。自然や鬼神をも動かす力を持ったもの。

・・・・

そうしたことを思い出させてくれる時間だった。 アニシモフ監督はロシアの人でありながら、今は源氏物語の演劇化へむけて情熱を燃やしているという。 そのためには、当時の記憶そのものである「うた」の響きを必要としているとも。1000年近く前のことを現代にありありとよみがえらせるには、ある種の魔法が必要だ。

朝崎郁恵さんの「うた」の力により、わたしたちの地下深くに眠っている地下水の泉から、現代へと水が汲み上げられる。そこに新しい水路が生まれ、不安定な現代を支え、潤す大きな力になるに違いない、と思った。

今年は、奄美の朝崎郁恵さんと、アイヌの歌い手の方々とをつなぐCD化の企画も動いているようで、楽しみだ。 いつかみなさんにも生声を聞いてほしい。

この日は3曲ほどうたっていただいた。「おぼくり」など。 地鳴りのような音から、つむじ風のように一気に天空へと飛翔する歌声に、脳天が開かれるような心地がする。

(司会の大役を終え、ほっと一息お茶を飲んでいたら、緊急で病院に呼ばれてしまい、古代から一気に現実へと引き戻される。。。)

■2018/10/13(Sat)(14:00-16:00):『魂の記憶が開かれる時』朝崎郁恵(唄者(奄美民謡歌手))、レオニード・アニシモフ(東京ノーヴイ・レパートリーシアター芸術監督)対談(司会:稲葉俊郎(医師))@青山 ウィメンズプラザ ホール(東京都渋谷区神宮前5-53-67)

〇おぼくり・ええうみ

〇Ikue Asazaki - Utabautayun - 徳之島節

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