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岡本太郎が追いかけてくるかのように

本職の心臓の学会で岡山にきている。 座長やコメンテータや、一日中仕事がある。

ただ、、、、

出張で唯一の楽しみがレコード屋と古本屋巡り。時間をなんとか捻り出して。

Groovin 岡山表町店」はいいレコード屋だった。

買ったのは ・Van Morrison(ヴァン・モリソン)『His Band and the Street Choir(邦題:ストリート・クワイア)』(1970年) ・Dave Mason(デイヴ・メイスン)『Alone Together』(1970年)

偶然にどちらも1970年の作。音楽好きは二つとも知っている(と思う)名盤。

素晴らしいレコードは、ジャケットデザインからしてすでにアウラを放っている。

名前の響きもなんとなく似ているが、二人ともイギリス人(厳密にはVan Morrisonは北アイルランド)。 この時期のUK Rockは、本当に極まっている。

出張先ではレコードプレイヤーがなくて聞けないので、妄想で聞くのも楽しみの一つだ。

●Van Morrison Domino

●Dave Mason -" look at you look at me"

 

それはともかく。 レコード屋帰りに岡山駅を通ると、岡本太郎の「躍進」という、素晴らしいレリーフを偶然に発見して驚いた。金縛りにあうくらい。1972年作と書いてあった。

ちなみに、大阪の万博(EXPO'70)も、《太陽の塔》が完成するのも、1970年だ。

ひとり感動しながら、ホテルでPCのメールを開けたら、岡本太郎記念館館長の平野暁臣さんからメールが!初めて来ていて、シンクロに驚いた。

シンクロニシティーが起きているときは、その背景に目を向け、その布置(コンステレーション)を読み解かないといけない。

元々は1954年に刊行された本。

岡本太郎自身が、序文にて

「芸術を中心として話をすすめてゆきますが、問題は、けっして芸術にとどまるものではなく、われわれの生活全体、その根本にあるのです。

だから、むしろ芸術などに無関心な人にこそ、ますます読んでいただきたい。」

と書いている。芸術は特権的なものではなく、人間の根源的な欲求だから、と。

ちなみに、本書は文庫版で再発されているが、文庫版には横尾忠則さんの序文が収録されていてなんとも素晴らしい文で、こちらにも強く心を打たれる。

明日は学会での会議に出て、熊本に行き、TEDxKumamotoで話す。 なんだか、太郎さんが太陽のように進む先を照らしていいるような気さえする。

おーーーーい!こっちだよーーーー!!、と。

=============== (岡本太郎「今日の芸術」文庫版 序文より by.横尾忠則) 本当はもう一度読んで書くべきかもしれないが、読んでしまうと「ここは新しいが、ここは古い」みたいな解説をしかねない。芸術には古いも新しいもないはずだ。時代を越えて普遍的に存在しているかどうかが問題である。

去年より今年、今年より来年みたいに新しい概念と様式ばかりを求めた結果、今や現代美術は完全に閉塞状態で息もたえだえである。これみよがしのアイデアだけの作品が多い。もうそろそろ頭脳的な創造から、個の肉体を取り戻そうとする生理的な創造に1日も早く帰還するべきではないだろうか。そのことに気づけば、自ずともう一度岡本太郎の書を繙(ひもと)きたくなるはずだ。

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ピカソがかつてこんなことを言った・ 「1枚の傑作を描くよりも、その画家が何者であるかということが重要である」 岡本太郎のあの時代のあの作品がいいとかいう専門家がいるが、全くナンセンスである。 「岡本太郎は何者であるか」 太郎さんほどピカソの言葉がぴったりの芸術家は日本にそういないのである。

===============

まさに横尾さんの言うとおりである。

「岡本太郎は何者であるか」 そして 「横尾忠則は何者であるか」

ピカソの言葉がぴったりの芸術家は日本にそういないのである。

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