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現代の迷宮・洞窟 三鷹天命反転住宅

三鷹天命反転住宅 ヘレン・ケラーのために(Reversible Destiny Lofts MITAKA (In Memory of Helen Keller))

2年ぶりに訪れて改めていろいろなことを思う。

三鷹天命反転住宅は、そのものが現代的な迷宮だと思った。

そして、中にある球体の部屋は、現代的な洞窟だと思った。

洞窟の現代アートであり、現代の洞窟アートである。

住まいの中に一見無駄と思われる空間がある。 実はそうした虚の空間こそが、実数の世界に対する虚数の世界のように補い合う。意識に対する無意識のように、わたしたちの意識活動を支えている。

球体の空間に入ると、声の反響も不思議だ。 すこし場所を変えるだけで自分の声が時差をもって増幅させたり反響して聞こえる。洞窟の体験に似ている。「自分」というバーチャルな自己認識の疑似体験のような。わたしが気づかないうちに「わたし」という箱の中で生きていることを再確認する視点を与えるような。

この球体の部屋に複数の人が入ると、すり鉢のようにズルズル滑るので、ある一定の距離に人と人とが出会うことを設定される。 距離が近いと、会話の内容も変容する。それは満員電車のような距離感とはまるで違う距離として。

きっと、わたしたちの暮らしには「現代の洞窟」が必要なのだ。そして「現代の迷宮」が。

わたしたち人類の起源を思い出すきっかけとして。 自然や動物におびえて暮らしていた時期、必要があって人々は群れとなり、洞窟の中で身を寄せ合っていた。 そして、洞窟の中で内省的で芸術的で宗教的な日々を過ごしていた時期のこととを。

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子供はもう少しで1歳。毎日朝から晩まで立つ練習をしている。立つ、という行為の奥深さを知る。

1歳の子供は、荒川さんが三鷹天命反転住宅に組み込んで塗り込んだ複雑な思い以上に、コンセントの方に関心を持ったりしているのも面白い。 子供は、まずは人類の進化の過程(狩猟、農業、工業、IT革命・・)を追体験して、そこから次の社会はどうなるのか?という夢想段階に入るのだろう。

今度は、子供の世界をささえているお母さんたちを主役にすえて、この場所で育児の会をしてみたい。そうすると、また別の面白い化学反応が起きるだろう。

生きる実感をもつ家。

単に自然に戻ることを言うのではなく。なぜなら、わたしたちはむき出しの自然の中には到底、戻れない。衣服、電磁気、通信、移動、、、あらゆる恩恵を受けている。

人工世界としての都市世界と、むき出しの畏怖すべき自然。

その間に立つ人間関係性を次の段階へもっていこうとした荒川修作さんの思いをこそ、大切にして受け取りたい。

三鷹天命反転住宅 - 荒川修作+マドリン・ギンズ 住宅なので今も一般の方々が暮らしていますので通常では見学できません。 お部屋の中を見てみたい方は、HPの見学会・イベント情報をぜひお探しください。 (2018/6現在、二部屋入居可能みたいです!)

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