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失いかけ離れていこうとする古代の記憶

モロー反射という、赤ちゃんの原始反射がある。

頭を支えている手を緩めると、手を前に突っ張ってものを掴もうとする動作のこと。脳幹レベルで記憶が残っている反射の1つで、生後4ヶ月には消えるとされる。

お母さんから離れないように掴もうとする反射だとされるが、それだけだったら生後4カ月で消える必要はない。

だから、こうした消えてしまう原始反射は、進化の途上で必要なくなった働きだとも考えられていて、人間の先祖であるほ乳類が樹上生活をしていたとき、木から落ちようとした瞬間にとっさに掴もうとする反射でもあるとされる。

もちろん、すべては謎で、謎に満ちた行動から、こちらが勝手に解釈しているに過ぎない。

抱っこして下に降ろす時、ゆっくりと下ろすとこのモロー反射は出て来ない。

比較的早いスピードで下におろすと、両手を必死につかむようなモロー反射が出てくるのにも気付く。

このちょっとした少しの重力の変化を感じ取っているというのはすごいことだな、と改めて思う。

寝ている時も、よくそうした動作をする。

そのまま彫像のように固まった態勢となり、もじもじクン( 『とんねるずのみなさんのおかげです』)のように全身で訴えているように見える。

少しずつ人間になろうとするプロセスの中で、夢の中では、まだ進化の途上なのだろう。

海の中の時代や、樹の上で暮らしていた時代、歩いて大陸を横断して全世界に人類が散らばって行った時代、、、、様々な困難を乗り越えて人が人になってきた記憶。

ここは海でもなく、樹の上でもなく、野外でもなく、トラもいないしヘビやワニもいない。安全な家の中なのだ。

あなたは狩りをする必要もないし、木の実をとりに行く必要もない。

オギャーという吐息の中に、懇親の力を込めてあらゆる記憶を訴えているのかもしれないと思った。

失いかけ離れていこうとする古代の記憶を、掴もうとする動作のようにも見えたから。

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