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萬福寺 宝蔵院(京都 宇治)

April 3, 2017

先日、京都の宇治にある萬福寺宝蔵院に行った。

 

ここには「鉄眼版一切経版木」全6956巻があり、吉野桜に手彫りで彫った6万枚にも及ぶ膨大な版木がおさめられている。
400字詰め原稿用紙のフォーマットの最初ともされ、日本の印刷技術のパイオニアでもあり、日本で明朝体を始めたルーツともされる。現在も、この江戸時代の版木を用いて木版印刷と出版が行われている。
こうした歴史の重みを実際に足を運んで体感したいと思ったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一切経(大蔵経とも呼ぶ)は、漢訳仏典の集大成のこと。
日本は仏教国でありながら、まだ一切経が普及しておらず、そのことを鉄眼禅師は残念に思っていた。

 

当時の鉄眼禅師の趣意書によると、
お坊さんは病人を助ける人、仏さんは薬を調合する人、しかし肝心要の薬が無くて困っている人が多くいる。経本を薬にたとえ、一般の困っている人々を助けるため、一切経の開版を決意されたとのことだ。

 

 

鉄眼禅師(1630年 - 1682年)(なんと熊本の禅師だった)は、木版彫りの作成の構想を1664年頃から取り組み、すべてを喜捨だけで成就するために江戸にも資金を募る旅に出て、17年の歳月をかけて6万枚にも及ぶ膨大な版木を後世に残した。

 

鉄眼禅師は、出版事業を行っていただけの人ではない。
大洪水や大飢饉が起きた時、鉄眼禅師は集めた資金をすべてなげうって救済にあてている。

 

人びとを助ける一環として出版事業をされていたので、天災が起きた時にも同じ思いで素早く対応された。

 


53歳という若さで亡くなられた時、葬儀には約10万人もの人が参列したとのことで、いかに多くの人に敬愛されていたかがわかる。

熊本生まれのこんなに偉大な先人がおられとは知らなかった。

 

 

 

 

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この萬福寺宝蔵院の空間は圧倒的なものだった。

膨大な版木がすべて保管されて次の世代に受け継がれているのは素晴らしい。

 

 


現代アートで行われるインスタレーション(空間を作った美術展示)も、こうした空間の重みや厚みというものを、深く学んで受け継いでほしいと、切に思う。

 

 

 

 

 

 

 

刷師の矢野俊行さんは、30年以上もここで刷師を続けながら、病院では理学療法士の資格を持って働いているらしい。


矢野さんから丁寧な説明を受けながら、実際の刷りの作業を見せてもらう幸運に出会えた。
生き方そのものにすべてが滲み出ている骨太の人々が集まるのは美しいと思った。こうした人が歴史を受け継いでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


萬福寺宝蔵院には、高級な仏教美術品があるわけではなく、豪華な施設や庭園があるわけではありません。

ただ、歴史の中で純粋な思いで大偉業をされた人びとの祈りのような厚い重みが、収蔵庫の空間の中には満ち満ちていました。

 

空間の中で歴史の重みを体感できる稀有な場所でもあると思います。

是非何かの機会に、足を運んでみてください。

 

萬福寺 宝蔵院

〒611-0011
京都府宇治市五ヶ庄 三番割34-4 TEL 0774-31-8026

 

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