手塚治虫全集
自分は悩んでいた。
ぶらっと立ち寄った古本屋。目と目があってしまった。
自分から自分への誕生日プレゼントに欲しいものを見つけた。欲しいものを欲しいと素直に言うべきかどうか・・・、と。
手塚治虫に出会って40年弱。
自分の思想や哲学や倫理の根本は、ほぼすべて手塚漫画から学んだ。確かに学校の教科書は読んだ。確かに授業は聞いたのかもしれない。そこで知識や情報は得たかもしれない。ただ、より根源的なもの、生きることの根源、いのちの意味、知性以上の感性や霊性というような領域は、漫画の世界に没入して深海から獲得したとしか言えない。それくらい、自分は手塚治虫が自分自身の一部だ。
家族や親せきに悩みを共有してみた。
「出会ってしまった。欲しい。買うべきかどうか。」
「買うべきだ、買った方がいい、それは出会いだ。」
皆が後押ししてくれたのだった。
ついに、講談社版の全集を購入した。難しいことを考えず。
学生時代から、いつかこの全集が本棚に入ることを夢想していた。というのも、手塚先生は漫画を文庫版で読むことに反対していたのを知っていたから。手塚先生はあくまでもコミック版のサイズで読むことを想定して絵やセリフのコマ割りを厳密に考えていたらしく、漫画は文庫版以上の大きいサイズで読んでほしい、と。しかし、いま刊行されている手塚全集は文庫版になっている。本棚に収納しやすいように、とか、在庫管理とか、大人の事情だろう。ただ、手塚チルドレンとしては、常に文庫版で読むことに心の棘を感じていたのも事実。
とは言っても、勢いで買ったが収納する本棚がない!
これから不要なものを売ったりして、本棚つくりに励みたい2025年のはじまり。

結局、これはまた子に、次の世代に受け継がれるんです。紙文化のすごさです。
全集をまるごと古本屋に売った方も素晴らしいし、それを受け取った自分も素晴らしい。手塚先生が心血込めて人生込めて描いた作品を本棚のご本尊に据えながら、また人生修行に励みます。
部屋の中に「壁」が誕生しました。



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