スパイラル聲明コンサート「千年の聲」
スパイラル聲明コンサート「千年の聲」。
スパイラルで1998年から20年以上続いている公演。


何とも表現しがたく奥深い時間を過ごした。
そもそも、声明自体が非言語的な世界、音の波動そのものの太古の呪術的な声の世界を残しながら、そこから意味世界として言葉が立ち上がるギリギリの世界を残している。
だからこそ、目をつぶって聞いているだけで、太古の森の奥にいるような、自分がまだ不定形で形がなく、この世に生を授かる前のような、浮遊した世界を色濃く感じながら時間を過ごした。
千年の聲、というタイトルにあるように、1000年という10世代以上の継承の中でつながってきた儀式や宗教、藝能や声楽の世界の中で、私たちの魂の核と時間軸とがしっかりとつながるための豊かで深い時間。
青山スパイラルホールは、空間自体がらせん構造でねじれているからこそ、時間軸がねじれるようにつながる。
多様な声が重なることで、倍音が倍音を生み、その場にいない動物の聲や女性の聲、子どもの聲や自然界の聲、何か森の奥のざわめきのような多様な声が、幻聴のように聞こえてくるが、声が重なることで生み出されるリアルな音。倍音が作り出す聲の中に、あらゆる祖先たちが確かに生きたという事実の重みが声明として伝えられてくる。
2021年という大変な時代の中、わたしたちがどう生きていくのか。
2021年は、伝染病の流行によりあらゆるものが分断され壊れた年でもあった。
2022年は、新しいつながりや創造こそがテーマになる一年になるだろうと思う。
春夏秋冬が巡るように、冬の時期は春の準備として静かに力を蓄え、新しい何かが芽吹く準備段階の大切な時期でもあるから。
自分の中、もしくは共同体の中にあって、形として顕在化されることを今か今かと待ち構えているものがある。
形になることを求めているものに対して、生命の息吹を与えて芽吹かせていくこと。
種から芽が出て、花が咲き、果実が実るためには、環境の条件が整えさえすれば、おのずから芽吹いてくる。
『花びらは散っても 花は散らない』
個人の花壇にある夢や希望だけではなく、夢を大きな大地で共有することで、現実世界に新しい花が咲く。
土の条件を整え、水を与え、太陽の光を与え、時には風雪から守りながら、育んでいくこと。
オノ・ヨーコさんは『一人で見る夢は夢でしかない。しかし、誰かと見る夢は現実になる』と語った。
誰かと見る夢は、生きた人たちだけではなく、死者も含めてみる夢なのだ、という思いを新たにした。
『生きるとは死者とともに生きるということです。』
存在と非存在とがあわさった世界の中で。
『死者の霊をとむらうことは花を手向けることではなく
その生きた人の咲かせた花に内側から光をあてることです』
自分と言う存在が、目の前にいない非存在と共に深まる体験。
12月1日が最終日で、もう満員御礼かもしれませんが、ぜひ今年の振り返りのためにも、足を運んでいただきたいです。


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【真言の散華回向句】
かれらは形ではない魂という別の姿を取ってわたしたちの前に現れます
生きるとは死者とともに生きるということです。
【真言の梵音出生段】
死者の霊をとむらうことは花を手向けることではなく
その生きた人の咲かせた花に内側から光をあてることです
【真言の錫杖一條】
その花はおそらくそうしたとむらいいたむ人がいなくなれば、そこでは咲く場所を失います
【天台の後唄・合殺】
それからその人をとむらいいたむ人がいなくなったとき
その魂、花は消えていくということです
【真言の錫杖三條】
しかしまた何十年、何百年経とうと、とむらい悼むことが営まれれば、そこではまた花咲くということにもなるのでしょう
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【日時】2021年11月30日(火)・12月1日(水) 開演20:30
【会場】スパイラルガーデン(表参道)
問い合わせ・チケット予約→NPO法人魁文舎 TEL: 03-3275-0220
※当日券は 20時より会場にて販売
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