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【六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠】@森美術館

  • 執筆者の写真: inaba
    inaba
  • 2025年12月7日
  • 読了時間: 5分




六本木クロッシングは、注目の現代作家が「現代」を深い無意識で映し出した作品をあぶりだしているので、毎年見ている展示。


もちろん、芸術表現であまりにも「意識的に現代を表現」すると興ざめするところもある。むしろ無意識でいつのまにかあぶりだされた作品(突然飛び出てきたような作品)を見ると、最初は不可解としか言えない体験でも、自分の中の深い無意識とムゴムゴと呼応して、楽しい。意識に寄りすぎると社会に迎合したものになってしまうし、無意識が深すぎると他者にわかり難いものになってしまう。


ただ、横尾忠則さんと話していたときも「世間の流行の動きを感じたら、逆の方向に動いたほうがちょうどいい」と言われたこともあり、社会の特定の方向に動き出したら、あえて逆の方向へと、密な場ではなく疎な場の方向へ向かうようにしている。医療界でも大きな方向性には昔から馴染むことができず、思わず逆の方向へ動く傾向にあるのは昔から(でも、その方が自分にとっては居心地もよいから、頭ではなく体がそう仕向けているんだろう)。



・・・・

特に時間をかけて見惚れてしまった作品は、A.A.Murakamiさんの「水中の月」という作品と、

売店近くのMAMコレクション021でのハオ・ジンバン(郝敬班)さんの《見届ける者として》という映像作品。




「水中の月」では生命や霊魂という存在を感じる作品だった。EGO-WRAPPIN'の曲に「水中の光」という美しい楽曲があり、生々流転する煙を見ながら、勝手な連想で音楽が頭の中でなり続けた。







●EGO-WRAPPIN'「水中の光」






《見届ける者として》はパンデミックの中で愛する人を亡くした人たちの喪を弔うような映像作品。かなしみの当事者の中にある人たちが「体の動き」を介して悲しみをうけとり、そのかなしみの形を変換させながら生きる、人間の根底にあるいのちの力のようなものをじっくりと映像で感じる作品だった。



眼を閉じて即興的に体を動かすMoverと、それを見守るWitnessの関係で行われるダンスセラピーの一つである「オーセンティック・ムーブメント(Authentic Movement)」というものがあり、映像作品の中に含まれていた。

こうした人間の生命や魂に関わるセラピーには、人間存在にとって深い意義があり、医術と芸術は近いものだな、と感じた。


Authentic Movementでは、参加者(ムーバー)は安全な空間で「動かされる」体験をし、それを見守る人(ウィットネス)は評価せず「そこにいる」ことで、身体と心(無意識)のつながりを深め、自己理解や癒しを促すもの。つまり、マインドフルネス瞑想のようなものを動きながら、しかも他者や場との関係性の中で起こしていくダンスセラピー。

ダンスセラピーのパイオニアであるマリー・ホワイトハウス(Mary Whitehouse)はユング心理学を学んでいたので、彼女なりに身体と心の関係を探求する過程でこの手法を開発している。


Patrizia Pallaro (編集)

Jessica Kingsley Publishers (1999/5/1)


mary whitehouse class


ICCD's Authentic Movement (Invisible Centre of Contemporary Dance)





ユング心理学に「能動的想像法 active imagination 」というアプローチがある。目が覚めた状態でまるで夢を見るように(白昼夢を見るように)現実的ではない世界を体験していくもの。その能動的想像をイメージ世界だけでなく,実際の身体的な動きや存在、たたずまいのあり方ととして体験するものがオーセンティック・ムーブメントという場なのかもしれない。私も以前学んだことがあり、色々と思い出した。こうしたことも、医療が開かれてもっと医療応用が進んでほしい。





Carl Jung’s Active Imagination Explained By Marie Louise von Franz






active imaginationのように、色々なイメージが浮かんでは消えていく中で、【六本木クロッシング2025】から時間が巻き戻されて【六本木クロッシング2013】、12年前の同じ場所での展示が浮かんだ。


「六本木クロッシング2013」は「アウト・オブ・ダウト - 来たるべき風景のために - 」という展示で、友人のアーティスト小林史子さん(こばふみさん)が出展していて、こばふみさんの案内でゆっくりと全ての会場を巡った。もう12年前のことだ。


彼女は日常を非日常の位相に移すアーティストだったが、彼女本人も自分がやっていることをよく理解できていなかった。オーセンティック・ムーブメントのように、ただ体が動くから、その動くままに作品を作るタイプだった。こばふみさんは、2013年の展示の後に病気になり、2016年に40歳で亡くなられてしまった。私は彼女の生命がなくなっていくプロセスを共に見ながら、亡骸も見おくり、精一杯人生を生き切った彼女の魂にエールを送った。それは2016年のこと。



六本木クロッシング2025展のテーマが

【時間は過ぎ去る わたしたちは永遠】

というタイトルだった。


確かに時間は過ぎ去っていく、ある人は死に、ある人は生まれる。わたし個人という概念を超えて、「わたしたち」という集合で生命を考えてみれば、それは永遠という相の大河の一滴でもあり、何も不安やおそれを感じることはないのだ、とも思う。

そうした個人的なことと普遍的なことが交錯していくのも、芸術の力で深い無意識へといざなわれるから、なのかもしれません。

そんなこともあり、展示を見ながら、人間の命、魂のことを祈った。



会期: 2025.12.3(水)~ 2026.3.29(日)

会場: 森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)



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