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雷滝で水の風景の内側へ。

3 日前
読了時間: 2分

山田温泉、七味温泉と、松川の流域にある湯を訪ねる中で、雷滝にも立ち寄った。

長野県高山村、松川渓谷にある「裏見の滝」。

名前の通り、滝の裏側から流れ落ちる水を見ることができる。



滝の裏に入れることに、まず驚く。

滝が目の前を覆う水の幕になる。その向こうに岩や木々が見える。風景を見ていたはずなのに、いつの間にか、その風景の内側に立っていた。

圧倒的な水量だった。

絶え間なく落ちる水と、身体にまで響いてくる轟音。「雷滝」という名が、耳だけでなく、全身で分かる。



さらに印象に残ったのは、空気中を飛び交う水粒子だった。細かな水滴が光を受け、流れ、舞い、こちらへ届く。水は川や滝の中だけにあるのではなく、空気の中にも広がっている。周囲の空間そのものが、水のエネルギーで満ちているように感じた。


それは、落下する水が持つ力が、音や風や飛沫へと姿を変え、身体に届いてくる体験だった。



水には、いろいろなものを洗い流す圧倒的な力がある。


岩を削り、砂を運び、長い時間をかけて谷をつくる。その水の前に立つと、頭の中で繰り返していた考えも、日常の細かな気がかりも、しばらく遠のいた。何かを解決したわけではない。ただ、考え続ける力よりも、目の前の水の力のほうが大きかった。



音を聞き、水滴を感じ、流れを見ているうちに、身体が今いる場所へ戻ってくる。


温泉を巡る流れで訪れたことも、この体験を深くした。


七味温泉では、地下から届く熱を、白濁した湯の中で受け取った。

松川の河床では、水に運ばれた成分が石の色となって現れる様子を眺めた。

そして雷滝では、水が落下し、砕け、空気へ広がる力に包まれた。

湯の熱、石の色、滝の轟音。


同じ流域をたどりながら、水がこんなにも異なる表情を持つことに驚く。


山に降った水が地表や地下を巡り、岩石や熱に触れ、やがて川へ集まっていく。その大きな循環の中に、温泉も滝も、私たちの身体もある。


温泉では、湯に身体を預ける。

滝の裏では、流れ続ける水の前に身体を置く。


どちらも、水との距離が近くなることで、自分の感覚が変わる。眺めているだけでは分からなかったものが、皮膚や耳や身体全体を通して分かってくる。




雷滝を離れてからも、水の音と、空気を満たしていた細かな水滴の感覚が残っていた。


湯に包まれ、川の色を見て、滝の内側に立つ。


松川渓谷を巡る旅は、水を通して、地球と身体のつながりを感じる時間だった。



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