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映画「天気の子」(監督:新海誠)

August 20, 2019

新海誠監督の映画「天気の子」を見た。
感動して、泣いたなぁ。

 

 

 

 

 

自分は、村上春樹さんの「ねじまき鳥クロニクル」を読みこみすぎて、自分の現実に物語世界が侵入してきているほどだが(現実の光景とねじまき鳥の光景とがよくデジャブとして重なる)、「天気の子」と「ねじまき鳥」とは、井戸の『壁抜け』のように深い場所で響きあう物語だなぁと思った。神話のように。そして、これはたましいの話なんだよなぁ、と。

 

春樹さんだけではなく、観ている時、寺山修司の言葉がなぜか頭に浮かんだ。
「わたしはあなたの病気です」
「ふりむくな ふりむくな 後ろには夢がない」

 

 

 

新海さんの作品は、どれだけ僕らが思春期の心に寄り添えるか、思春期の感受性に立ち戻れるのか、ということを、強く感じる。
思春期の眼差しを、今の自分の眼差しと重ねわせながら生きていけますか、と。

 

生きていくことは、「自分と言う唯一の存在は何によって支えられているのか」という根源的な問いを抱えることでもある。
4歳頃に「自分はいつか死ぬのだ」という事実を認識するとされていて、10歳頃に「ここにいる唯一の自分」と言う存在を意識するとされる。

そうした宿命を持って生きていく人間は、かならず何らかの壁にぶつかる。
そのとき、ある人を支える物語というものは、不思議な普遍性をもつものだ。

 

自分という存在の根っこについて苦しんでいる時、聞き手も辛抱強く共に苦しんでいると、その人を支える存在が生まれてくる。それは医療現場でよく起きる。


はたして、何が自分を支えているのか?
それは、神話の知を産み出すようなもの。自分自身の神話を持つことで、自分を取り巻く存在が宇宙的秩序の中で意味を持つようになってくるものだ。

 

 

「天気の子」は、そういう古代から現代にまでつながる、深くかつ普遍的なテーマを、新海さんなりの現代の感性で捉えた作品だと思った。

 

 

自分は田端駅に5年ほど仕事で行っていて、映画で田端駅南口の場所が出てきたときは、のけぞるほど驚いたしうれしかった。そうそう、田端駅南口(と上野公園の噴水付近)は、都内でも異様に空が広いところなんです。自分はあそこを自転車で走るのが好きで、わざわざ遠回りしていたくらい。そういうマニアックな目の付け所も、新海さんらしくて素敵だった。

 

 

思春期に、この世界をどういう風に見て、どういう風に受け取ったのか。

そこには何万通り以上の無限に近いY字路があって、その無数の分岐を意識的にも無意識的にも選択し続け、今がある。

 

映画を見て、自分自身も思春期(14歳か15歳くらい)の時代に戻った気持ちを取り戻しながら見た。その時期に、自分の中にいる無数の自我が、あるものは脱落し、あるものは選ばれて、自我の最終仕上げをしていた不安定な時期だったから。

あの時期に違和感を持ちながら世界を受け入れていった苦痛に満ちたプロセスをこそ、もっと大切にしたいなと改めて思った。

 

 

思春期の記憶を思い出すには音楽こそが最高の手段で、あらためてミスチルを1stアルバム『EVERYTHING』(1992年)から聞きなおしているところ。5thアルバム『深海』(1996年)は、今聞きなおしても深い無意識に潜るような気持になる。(みなさんにとって、扉を開く音楽はなんだろう?ヤナチェックのシンフォニエッタとかだと、1Q84の青豆みたいで素敵だけど。)

 

ちょうど今聞いているミスチルの「少年」(15th『SUPERMARKET FANTASY』2008年)の中にある一節も、ぴったりだと思う。

 

『日焼けしたみたいに心に焼き付いた 君の姿をした跡になった
蝉が死んでいったって 熱りがとれなくて まだ消えずにいるよ

僕の中の少年は汗まみれになって 自転車を飛ばして君に会いたいと急ぐ
迷いも悲しみも すべてをぶちまけてくれたっていいよ
僕が全部受け止めるよ』

 

 

映画で主人公が読んでいた(一瞬だけ出た)、サリンジャー「The Catcher in the Rye(ライ麦畑でつかまえて)」も、改めて読みなしてみよう。今の自分が読んだら、何を感じ、そして何を感じないのだろうか?

 

 

 

・・・・・・・・・・・
過去は、生きているわたしたちにとって現在の出来事だ。
そして、過去だけではなく未来も、生きているわたしたちにとって現在の出来事だ。
過去も未来も、いま、考えているのだから、現在の出来事だ。生命は現在という地平で脈打っている。

 

自分の無意識に先導してもらいながら、芸術という扉や医学の扉、その他のいろいろな扉を開けて深く深く分け入っていけば、たとえ入口は違っていても、深く深く分け入った場所でしか出会えないことがあり、そこでこそ新しい関係性を取り戻すことができるのだろう。

 

 

映画『天気の子』公式サイト

 

 

 

 

●映画『天気の子』スペシャル予報

 


「君の名は。」から3年ー 新海誠監督最新作!7月19日公開「天気の子」
【原作・脚本・監督】新海誠 【音楽】RADWIMPS
【声の出演】醍醐虎汰朗 森七菜/本田翼/吉柳咲良 平泉成 梶裕貴/倍賞千恵子/小栗旬

 

 

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