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舞台「神の子どもたちはみな踊る after the quake」@よみうり大手町ホール

August 7, 2019

舞台「神の子どもたちはみな踊る after the quake」@よみうり大手町ホール を見た。春樹ファンとしては、春樹関連はあますところなく見ずにはおれない。(どれだけ好きなんだって話ですが)

 

 

 

『神の子どもたちはみな踊る』(2000年, 新潮社)は、自分もかなり好きな短編集。この6篇からなる。

「UFOが釧路に降りる」

「アイロンのある風景」

「神の子どもたちはみな踊る」

「タイランド」

「かえるくん、東京を救う」

「蜂蜜パイ」

 

 

 

 

 

今回の舞台は、「かえるくん、東京を救う」と「蜂蜜パイ」を交互に織り交ぜた演劇になっていた(そうなると、舞台「神の子どもたちはみな踊る after the quake」のタイトルはミスマッチ?ほかの短編もうっすらと余韻が入っていればなぁ。少なくとも「神の子どもたちはみな踊る」は欲しかった。)。

 

「かえるくん、東京を救う」と「蜂蜜パイ」は、もちろんおなじみの名作なのだが、自分は「UFOが釧路に降りる」がとても好き。

小村という主人公が小さな箱を釧路まで運ぶ。ただ、その箱には何も入っていないことを後で知る。

 

では、空っぽの箱は、何を暗示しているのだろう?

魂が抜けた抜け殻のようなわたしたちの暗喩なのか?

 

「UFOが釧路に降りる」で空の「箱」が出てきて、最後の「蜂蜜パイ」にも、「箱」が呼応するように象徴的に出てくる。

 

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『蜂蜜パイ』より

沙羅「地震のおじさんがやってきて、さら(沙羅)を起こして、ママに言いなさいって言ったの。みんなのために箱のふたを開けて待っているからって。そう言えばわかるって」

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淳平「相手が誰であろうと、わけのわからない箱に入れさせたりはしない。たとえ空が落ちてきても、大地が音を立てて裂けても。」

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T・S・エリオットの「The Hollow Men」(虚ろな人)という詩(『地獄の黙示録』の映画でカーツが朗読するシーンが有名)に、こうした一節がある。

 

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We are the hollow men

We are the stuffed men

Leaning together

Headpiece filled with straw. Alas!

(わたしたちは虚ろ(空ろ)な人だ。

わたしたちはぬいぐるみのような人だ。

ともに寄りかかりながら

頭の中には藁が詰まっている(嗚呼))

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この「虚ろ」で「空虚」で、誰かに「藁」を入れられたぬいぐるみのような操り人形のような人間という警告は、「箱」が示唆するものと似ているように思う。

 

つまり、メディアが情報を管理する社会では、無防備でいると、いつのまにか、誰かの「あたま」の中、誰かの「情報」という「箱」の中に入れられていて、あなたの実態はすでに空っぽの「箱」のように虚ろなのではないか、と。

 

8月は終戦記念日とも近く、無意識にも戦争のこと、戦後のことを考えてしまう。

その時にも、巨大な戦争という箱を考える。

その巨大な箱に入れられてしまうと、箱の中に閉じ込められていることにすら気づけなくなる。考えや行動は、箱のパターンに支配されている。

では、その箱の中でわたしたちはどう生きていくのか。

やはり箱の存在と実態を知り、前提となる箱の外へと出ようと試みなければ、わたしたちは何も考えることができない藁人形のような存在になってしまうのではないか、と。

 

そうしたことを考えながら、今回の舞台を見た。

 

舞台自体は、春樹ファンにとってはもちろん楽しめた。

ただ、原作を知らない人、舞台ではじめて春樹世界に出会う人にとっては、あまりに原作に忠実過ぎること、テキストの分量とテンポが速すぎることもあり、「難しい」という感想になってしまい、原作の「むずかしさ」と無縁の音楽のような流れを楽しめたのかなあ、と不安は残る。

 

舞台と小説との関係は、どういう関係性が理想なのか、いろいろ考えさせられた。

 

 

春樹さんの短編小説「納屋を焼く」を映像化した「バーニング 劇場版」(監督:イ・チャンドン)は、大幅な改変が、物語をさらに深化させていて、心から感動した映画だった。舞台だとなおさら、これくらい思い切って改変してもいいのかもしれないな、と改めて思った。もちろん、その本質は共有しながら。

→◆「バーニング 劇場版」(監督:イ・チャンドン、原作:村上春樹)February 21, 2019

 

 

 

この小説で自分が未だに残響音が響いているポイントは「箱」の示唆するものを自分なりに深めたことや、「かえるくん、東京を救う」の世界が、小説家が挑んでいる内的世界、イマジネーション世界での攻防の暗喩ではないかと感じたので、創作に命がけで挑むクリエイターの深い心的創造の世界をこそ、カエルとミミズが示すものを共につかめればな、と思ったのだった(トルストイ、ドストエフスキー、コンラッド、ニーチェ・・・などがリスペクト共にサンプリングのように引用され続けるので・・・)。

『海辺のカフカ』でも示されたように、わたしたちの責任は、イマジネーションの世界からすでに始まっているのだから。

 

 

また、小説を読み直したい!

 

「ねじまき鳥」の舞台化のポスターもあり、それにも感動!

 

 

 

 

舞台は8月14日まで。春樹ファンは是非ー!

 

『神の子どもたちはみな踊る after the quake』

期 間 2019/7/31(水)~8/16(金)

会 場 よみうり大手町ホール

キャスト

淳平:古川雄輝

小夜子:松井玲奈

片桐、高槻:川口 覚

沙羅(子役):横溝菜帆、竹内咲帆 ※Wキャスト

かえる、語り手:木場勝己

 

スタッフ

原作:村上春樹

脚本:フランク・ギャラティ

演出:倉持 裕

 

翻訳:平塚隼介

音楽:阿部海太郎

美術:中根聡子

照明:杉本公亮

音響:高塩 顕

衣裳:太田雅公

ヘアメイク:宮内宏明

演出助手:松倉良子

舞台監督:足立充章

https://horipro-stage.jp/stage/kaminokodomo2019/

 

 

 

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