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「ゲゲゲの先生へ」@東京芸術劇場(原案:水木しげる、脚本・演出:前川知大)

「ゲゲゲの先生へ」@東京芸術劇場 プレイハウス(原案:水木しげる、脚本・演出:前川知大) を観た!!!!

色んな思いが溢れる、胸がいっぱいになる舞台だった。

天才漫画家である水木しげるさん。

特定の作品を原作にしているわけではなく、水木しげる世界の全体像を、愛と敬意をもって受け止めて、水木作品に流れる、独特の愛と悲哀とペーソスとユーモア、そのすべてを受け止めたうえでイキウメの舞台にさせている、とんでもなくすごい舞台だった!!

一日経っても、感動さめやらん!!!!!

随所随所に、水木さん特有のいい感じで気の抜けた表現が出てくる。 主役の根津が出すおなら(=屁)。

いい感じで観客の緊張をやわらげ、舞台が持つ深さを身体に染み込ませる時間として機能していた。

からだ言葉は、頭を介さずからだにダイレクトに染み込んでくる!

たとえば二人の夫婦が錬金術に熱中するシーン。 資本主義の本質を、すこし距離をとってみたかのような気持ちになる。

「人間」が血眼を挙げてお金に遊ばれている様を、ほんの数分の舞台演技で垣間見せてくれるのだから、前川知大さんのすごさは計り知れないのだ!

水木先生が大切にされている「妖怪」とされる存在。

時に滑稽で、それでいて残酷で無邪気。

でも、人間の営みを何千年、何万年に渡り見守っている。 妖怪は、その視点こそが大切なのだ。妖怪から見た人類の視点。

わたしたちは、距離を持って自分自身を見つめなおすことを忘れやすい。

そのときに妖怪の視点を取り戻す。

妖怪は、この世とあの世のはざまに生き、その間をつなぐ存在でありながら、同時に「人間がいるからこそ存在できる」存在。 ただ存在している。

人間がいなくなれば、妖怪も存在しない。 存在か無か。

人間にとっての影のような存在として。 妖怪(と仮に呼ばれる存在)は、人間と常に同時存在していて離れることはない。 ただ、「影」と違うのは、影は光が当たることで影として認識できるが、妖怪は暗闇そのもの存在で、暗闇がなくなると存在しなくなる。

暗闇とは、わたしたちの深い深い無意識の世界かもしれない。 光を当てても見えない、漆黒の暗闇。

深いからこそ、わたしたちを支えている場所。人々の魂を支えていると言ってもいいだろう。

魂と呼ぶと私たちには訳が分からないから、妖怪という擬人的な存在を補助線として、わたしたちは「魂」のつながりを取り戻す。

・・・・・・ 実際、主人公の根津は、深い悲哀から人間の魂を半分欠損し、その欠損した魂にネコの魂が融合している。半分が人間、半分が妖怪という矛盾に引き裂かれながら存在している。(そして、ここへと至る流れは深い人生の悲哀と矛盾を含むものでもあった。)

妖怪が人間の世界から消えてゆき、また現れてくる時、その舞台での俳優たちが演じる存在感の強さに、自分は泣いた。

人類史の中で何度も繰り返された営みだろう。 わたしたちは、失い、そして取り戻す。

前川知大さんの素晴らしいセンスは、文明批評が目的なのではなく、そういうことをも大きく含み包み込んだひとつの巨大な塊として、わたしたちへ演劇体験をプレゼントしてくれることだ。

そこには人類への深い洞察と、悲哀と、矛盾とがある。ただ、それをさらに大きく包み込んでみるユーモアを含んだ視点もある。

何と素晴らしい演劇体験だろう! 俳優さんみんなの演技が素晴らしい!!!

言葉にできない体験を、無理やり言葉のフィルターを通すとこうした言葉になってしまうのだが、とにかく舞台を見てきいて感じてほしい。それがすべて。

前川知大さんの作品はいつも素敵だ。 そこには作り手と観客との、強い信頼がある。 僕らは前川さんの新作を楽しみにして、前川さんはそれを上回る。僕らはまた期待と希望を大きくして次の新作を待ち、その共同作業のように、また巨大な作品としてわたしたちの前に登場し、アッと驚きか、ワハハと笑い、ウルウルと琴線に触れ、失われた何かを取り戻す儀式を経て、会場を出て、日常へと帰還する。

・・・・・・・・ 「ゲゲゲの先生へ」という素晴らしく愛とユーモアに満ちた作品は、東京でも10月21日まで! その後は、松本、大阪、豊橋、宮崎、北九州、新潟・・・と全国を行脚するらしい。

ゲ、ゲ、ゲゲゲのゲー!!

是非是非行って体感してみてください。 自分は前知識ゼロで行きましたが、笑い、泣き、痛み、悲しみ、、、何かReborn(再生)するような深い体験でした。

「ゲゲゲの先生へ」公式サイト https://www.gegege-sensei.jp/

■東京公演 10月8日(月)-21日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス

■松本公演 10月27日(土)-28日(日) まつもと市民芸術館 主ホール

■大阪公演 11月2日(金)-5日(月) 森ノ宮ピロティホール

■豊橋公演 11月9日(金)-11日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール

■宮崎公演 11月14日(水) メディキット県民文化センター 演劇ホール

■北九州公演 11月17日(土)-18日(日) 北九州芸術劇場 大ホール

■新潟公演 11月22日(木)-23日(金・祝) りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館

 

●「妖怪たちはどこへ行った」 ~水木しげるのねぼけ人生 (1/2) 1989,5

●「妖怪たちはどこへ行った」 ~水木しげるのねぼけ人生(2/2) 1989,5

●水木しげるのアフリカ幻想(1989)

●【公式】ゲゲゲの鬼太郎(第1期) 第1話「おばけナイター」

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