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「新しい物語」の創造

「体制の物語」を生きている人たちは、自分たちは現実を生きていると信じ、物語の必要性を感じないか、価値を低く見ている。

わたしたちは「新しい物語」を必要としている。

体制の出世と無関係な女性が、「自分の物語」を書き始めた。 それこそが紫式部の『源氏物語』(1008年)という大著の、人類史的にも重要な意義であるとも思う。

そうした新しい創造のために、「ひらがな」という新しい言語の発明が必要だったことも示唆的だ。

わたしたちのこころは、ことばをそざいとして、つくられている。

ワタシタチノココロハ、コトバヲピーストシテ、ツクラレテイル。

 

舞台での体験や、小説や物語や神話、そうしたものを体験として受け取る意義は、そういう点にもある。

傍観者ではなく、自分も新しい物語の創造に関与したい、というのが、今年から来年にかけての強い思いです。

おきゃくさんではなく、じぶんもあたらしいものがたりをつくることにかかわりたいです。

ワタシタチハ、ダレモガ、ツクリテ、ソウゾウシャ。 ソウゾウノ イズミハ、ジブンノ アシモトニ アル。 トモニ ツクリアゲルセカイガ、ミライ。

 

(2017/12/30(Sat)(10:30-12:00):渡辺真也「ストーリーテリング学」:第4回(ゲスト:稲葉俊郎)『ヒーローズジャーニー』@自由大学(東京都港区南青山3-13 COMMUE 2nd内)へ寄せた文章から。)

わたしたちは、なぜ物語を必要とするのでしょうか。

「自分の体験」を「自分の心」に収めるために、体験や経験を自分の世界観や人生観に組み込んでいく必要があります。それが生きる、ということです。 受け入れられないものは無視され、排除され、なかったことにされますが、それは消えてしまったわけではありません。心の奥底に沈殿しているだけです。 自分の心はなんとか受け入れて欲しいと思い、異物とされたものは心の奥底でくすぶり続けています。微熱のように。

矛盾したように見える複雑なものを自分の心に収めていくためには、そこに一筋の、場合によっては複数の「筋道(プロット)」が必要になります。そうした「筋道(プロット)」の存在こそが物語の特徴でもあります。

相手が「事実」を述べているように見えることも、よくよく聞いていると、その人の心の中に収まるための筋道を持っていることに、気づくでしょう。わたしたちは、外的な現実と、内的な現実とが響き合い、リアリティーを創造して生きています。

自分にふさわしい物語をつくりあげていくことは、誰にとっても生きていく上で大切な仕事です。 自分の物語に組み込めないものが、心の病や心の症状につながっていることも多いものです。 人間関係や、体験した苦難や苦労、、、、自分の物語に組み込めているでしょうか。

「死」に関しても同様です。 わたしたちは生と死を関係づけるため、死の物語を必要としますし、自分の奥底からも死の物語を発見する必要があります。

自分の無意識の世界を自分なりに探索していると、これまで意識することのなかった心の働きを新しく発見し、新しい視点が獲得されるのです。

これまでバラバラに存在していたものを「関係づける」意図から、自分自身の物語が創造されます。 小説や物語や神話を呼んで感動するのは、そうした自分の心の動きを、うっすらと感じているのでしょう。

自分の体や心がどのように働いているのか、多くの人はまったく知らないものですが、それでもうまく機能しています。自分の知らない心の働きが生じて、全体としてうまく機能しているわけです。 ただ、全体的な統合が破たんしないために、わたしたちは「物語」を必要としているのです。

『ものがたり』は『もの』が語る話であるとすると、心の奥底にある『もの』とは、果たして何なのでしょうか。

そうしたことを共に考えていきたいと思います。

稲葉俊郎

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■2017/12/28+29+30:「食の鼓動 ──innereatrip」@スパイラルガーデン(スパイラル 1F)(東京都港区南青山5-6-23) 

Web

<食の鼓動 -innereatrip>@スパイラルガーデン(スパイラル 1F)  ●12/28(開場20:00/開演20:30)  ●12/29(開場20:00/開演20:30)  ●12/30(開場17:30/開演18:30)

*関連イベント

<いのちの鼓動 トークセッション>@スパイラルホール(スパイラル 3F)((定員:80名)

 ●12/28(15:00-16:30)Talk Session1朗読「言霊」:稲葉俊郎+永積タカシ(ハナレグミ)

 ●12/29(15:00-16:30)Talk Session2献歌「呼吸」:稲葉俊郎+UA 

 ●12/30(13:00-14:30)Talk Session3振動「リズム」:稲葉俊郎+熊谷和徳(タップダンサー) 

 企画・構成:野村友里  音楽構成:青柳拓次  出演:高木正勝、ささたくや、蘇我大穂、渡辺亮、 Vincent Moon (12/29)  勝見淳平(PARADISE ALLEY)、吉川倫平(Pignon)  ゲストパフォーマー:永積崇/ハナレグミ(12/28) UA(12/29)︎ 熊谷和徳(12/30)  テキスト・トークセッション:稲葉俊郎 (東大病院 循環器内科 助教)  メイングラフィック:さとうみかを  フライヤーデザイン:樋口裕馬  テクニカルディレクション:遠藤豊 (Luftzug)  音響演出:牟田口 景 (WHITELIGHT)  照明:田代弘明 (DOTWORKS)

■2017/12/30(Sat)(10:30-12:00):渡辺真也「ストーリーテリング学」全5回(12/29+12/30):第4回(ゲスト:稲葉俊郎)『ヒーローズジャーニー』@自由大学(東京都港区南青山3-13 COMMUE 2nd内)

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■2018/1/8(Mon)(18:00-21:00):音語り 新春特別編-医学と華道と音楽-:稲葉俊郎(医)、田島和枝(笙)、奥平祥子(花)、北川綾乃(箏)、本郷幸子(ヴァイオリン)@浅草公会堂(第3集会室)(東京都台東区浅草1-38-6)

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■2018/1/22(Mon)(20:00-22:00):「いのちを呼びさますもの —ひとのこころとからだ」(アノニマ・スタジオ)講演会@本屋 B&B(世田谷区北沢2-5-2 下北沢ビッグベン 地下1階)

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■2018/02/06(19-21時):第7回 道の学校 ○藤田一照(曹洞宗僧侶)、○甲野善紀(古武術研究家)

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