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「杉本文楽 女殺油地獄」

August 12, 2017

世田谷パブリックシアターの「杉本文楽 女殺油地獄」を見てきた。すごい舞台だった。

 

 

 

江戸時代の浄瑠璃や歌舞伎の作者であった近松門左衛門が扱ったのは、当時話題になった殺人事件。当時は不評でお蔵入りになったテーマを、杉本博司さんが再度生命を注入したのが今回の文楽の舞台。

 

初心者にはとっつきにくい文楽の世界を、杉本博司さん流の解釈と演出とで、見慣れない人にも見やすくする工夫が随所にされていた。伝統芸能を現代とシンクロさせていく杉本さんの思いとセンスにはいつも脱帽だ。

 


文楽とは、人形浄瑠璃のこと。
語り、三味線、人形遣い。こうした三位一体の芸術を指す。

 

闇の中で空中を舞い踊るかのような人形劇は、本当に美しく、同時に恐ろしくもあった。

手や足の繊細な動きで、こうも人間の繊細な感情や機微を表現できるものかと。すごい技術だ。
そして、人が狂気を帯びて急変し、変貌する様も、人形だからこそ、そうした人間の本質的なところだけがあぶり出される気がした。

 

紋付き袴を着た太夫の語り。時には漆黒の中で叫び飛ぶ唾が暗闇の空中に見えたほどだ。

語りはどんどん白熱していき、語っている人と聞き手とを同期させるように情と熱とで巻き込んでいく。
日本の芸能で、ここまで感情をあらわに出して語るのも、なんだか珍しい気がした。

 

三味線もすごい。ノイズのような音の響きが、演劇空間の異質さを補強し、心理的にも緊張感を与える。西洋の現代音楽の先を行っていると思う。

 

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自分は能はよく見に行くが、歌舞伎や文楽はそこまで見ていない。
あまりに抽象化されすぎた能楽の世界に対抗して、より分かりやすく一般向けを狙って発展してきたのが、江戸時代に起こった歌舞伎や文楽の世界。

 

 

杉本文楽を見て、あらためて文楽の世界にディープに触れていきたいと思う夜だった。

 

過去と現代とをタイムマシンのように行き来しながら新しい関係性を結び続ける杉本博司さんの活動には、未来への希望をいつも頂く。


古典世界との新しい関係性を結ぶきっかけを、杉本さんは作ってくれる。

そうした歴史や時そのものへの敬意は、杉本作品のあらゆるところから受け取っている。

 

世田谷パブリックシアター「杉本文楽 女殺油地獄」

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終演後、ロビーで野村萬斎さんをお見かけし(世田谷パブリックシアター芸術監督ですし!)、色々と近況をお話しできて嬉しかった。NHKスイッチでの大友さんとの対談や書籍化も、大本は萬斎さんのご縁つなぎなので、お礼もできてよかった。。

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