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渋谷Bunkamura『ゴールドマン コレクション これぞ暁斎! 世界が認めたその画力』

渋谷のbunkamuraにて、天才絵師である河鍋暁斎の『ゴールドマン コレクション これぞ暁斎!』(2017/2/23(木)-4/16(日))がやっています。 暁斎を知らない方は、是非是非、もう一生訪れないであろう空前絶後のチャンスを逃さず、見に行ってほしい! 改めて暁斎の絵の全貌を見て、そのすごさに悶絶しておったまげたー。

◆◆ 自分は別冊太陽での河鍋暁斎特集号を穴があくまで読んでるほど好きなのです。 幕末に、こんなにも自由で独創的でユーモアの溢れた天才絵師がいたのかと。

(左が今回の図録。充実の内容! 右が別冊太陽の「奇想の天才絵師 河鍋暁斎」(2008年)

河鍋暁斎(きょうさい)は、天保2年(1831年)生まれで明治22年(1889年)に満57歳の若さで亡くなった絵師。ちょうどひいおじいちゃんくらいの世代でしょうか。比較的近い存在なのです.

暁斎が生きた時代は江戸から明治へと移る日本激動の時期。 鎖国政策を主として閉じて平和な時代を過ごした徳川時代から、全世界史的な植民地戦争に巻き込まれ、国の国境を大きく広げ、明治維新を経て西洋と化学反応せざるを得なかった当時の日本は、何から何までが激動の時代だったと思います。政治、法律、身分制・産業・経済・文化・教育・外交・宗教・思想・服装・・・・・あらゆるものが抜本から変化せぜるを得なかった時期だからです。

そんな時代を生きた天才絵師である暁斎は、江戸の狩野派と浮世絵とを絵画世界で統合させ、次の時代の芸術家へとバトンを渡した絵師でもあります。彼の自由な精神がなければ、日本の現代美術はまた違ったものになっていたでしょう。

暁斎は、3歳に精密な蛙の絵を描いたことで周囲を驚かせ、7歳にはなんと歌川国芳門下に入門して絵の修行をしています。9歳にはお茶の水の神田川で流れてきた生首!を写生したり、火事場で火事を写生したり、森羅万象あらゆるものを狂ったように写生し続けた人。 19歳には狩野派を習得し卒業し、その後は独自の画風を確立しながら、飽くなき探究心であらゆるテーマを内包させながら突き進みます。

大和絵、浮世絵などの伝統画法はもちろん。 動物画、美人画、戯画、風刺画、細密画、春画、幽霊画、漫画、絵日記、、、、あらゆるものを偏見なく吸収しながら、観察と写生という基本を死ぬまで続けた人生の探究者です。

自分は葛飾北斎や横尾忠則さんが好きで好きでたまらない人間なのですが、同じような魂を感じます。 あらゆる森羅万象を対象にしながら、飽くなき探究心でこの世界を新たに発見し私たちに提示し続けた画家の系譜として。。。

■■ 今回のbunkamuraの展示では、観たことがない絵ばかりで驚きました。

それもそのはず。 世界屈指の暁斎コレクションとして知られるイスラエル・ゴールドマン氏の秘蔵の品ばかりを持ってきた展示だからです。今は、もう日本を離れて旅をしている作品ばかりだからです。

ゴールドマンさんともレセプションで少しお話しさせていただきましたが、突き抜けて明るく陽気な方で、異国のこの方が暁斎に魂を射貫かれたのもわかる!と思いました。 暁斎の絵には、常にユーモア精神があふれている人だからです。細かい理屈を抜きにして、子どものような感性で高い技術を追求し続けた人なのです。

(右から3番目のお方がイスラエル・ゴールドマン氏!!いろんな方向から写真撮られて、どこ見ればいいか分からなかったー! 右端はデザイナーのJintoMachikoさん、左端はMachikoさんの素敵な旦那さん!Londonに行った時には泊めていただきありがとうございました!)

蛙やかぼちゃに人間を見立てた絵もなんとも面白く、春画・幽霊画・鬼神の絵でも常にユーモアと反骨心を忘れず描き続けた絵は、誰が見ても思わずニヤリニヤリ、ニンマリ、ニッコリしてしまうような、押し付けがましくないユーモアに満ち溢れているのです。

今回の展示は、そうして異国で大切に保管された暁斎コレクションが、再度日本に里帰りしてお目見えして実現できた展覧会。もう二度とこうして全貌を見ることができないものも多いかと思います。

暁斎の絵が海外へ渡り、あらゆる人種や宗教を飛び越えて、見る人々の心を明るくさせながら世界を巡回しているのかと思うと、自分も何だか嬉しくなります。

絵が分からない、という人でも、この人の面白さは誰もが分かるでしょう。 描いているテーマ自体が独創的で面白く、細部を見ると恐ろしい細密画で描かれているかと思えば、一気呵成に一筆で書かれていたりと、その筆使いの緩急はジェットコースターに乗っているように刺激的で愉快で痛快です。とにかく理屈抜きで楽しく面白いのです。

この貴重な機会を見逃さず、是非Bunkamuraで暁斎の絵に包まれてください!!聖も俗も、美も醜もあらゆるものをユーモアでコーティングしながら描き続けた暁斎のスピリットが心に波紋を起こし、きっと理屈抜きに好きになるはず!!

Bunkamuraは、いつも素晴らしいテーマのセレクションで、すこし違った角度から光を照射した展示が多く、芸術への深い愛と信頼を感じます。いつもありがとうございます!!!!

(図録より。 充実の図録!!)

こちらは別冊太陽。興味が尽きない人だ。。。。

P.S. 自分が愛読しているクロード・レヴィ=ストロースの「みる きく よむ」みすず書房 (2005年)という本がありますが、この表紙は河鍋暁斎の絵です!! 以前、河鍋暁斎記念美術館へ行ったときに生で見て悶絶して驚きました。

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