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ハナレグミライブ「SHINJITERU」@東京国際フォーラム

ハナレグミのLIVEに行ってきた。 感動的なものだった。

場所は国際フォーラムHall A。 ついこの前、シガー・ロス (Sigur Rós)のLiveもここだった(気がする)。

すり鉢のようなものすごい大きなホールで、5000人!の超満員。 熱気がすごい。 見る人見る人、お客さんの頭から頭から蒸気が沸き出て見えるようだ。 期待とドキドキで顔が火照る。きっと自分も火照っている。

人のキラキラした表情は素敵だ。きっと自分の顔もキラキラしている。

Liveのはじまりは、ささやき声のようなアカペラで幕を開けた。

「線画」という曲。「Shinjiteru」というアルバムの一曲目でもある。 鳥肌が立った。脳より前に皮膚が反応している。 まるで耳元でささやかれているようだ。

永積タカシさんの風のように通り抜けて震える甘い声が、心の皺にまで深く浸透していく。

 

今回は2017年10月25日に出る「Shinjiteru」というアルバムがメインだった。 発売されて1か月半、ほぼ毎日のように聞いていた。体の穴という穴に歌声の余韻がしみ込むほど聞いた。

アルバム3曲目の「君に星が降る」という曲が、作詞:竹中直人さん!作曲:坂本龍一さん!だったことも驚いた。絵本を一冊読んだような気がするから不思議だ。

ハナレグミはすべての楽曲の完成度が高いが、 映画「海よりもまだ深く」の主題歌だった「深呼吸」は、本当に本当に名曲だった。

早朝、自転車で漕いで仕事に行くとき、よく鼻歌で歌った。

楽曲の中での「おーい」という呼び声が深く残った。

禅語の「主人公」を思い出していた。 「主人公」とは、元々は仏教である禅の言葉。「本来の自己」のことを指す。

「本来の自己」こそが、自分の人生の「主人公」としての主体だ。

中国の唐時代に、瑞巌(ずいがん)禅師という方がいた。 瑞巌禅師は毎日座禅をする時に、いつも独り言で「主人公よ」と自分に呼びかけ、「はい」と自ら返事をしていた。

「惺々著(せいせいじゃく)?(しっかりと目覚め、本来の面目を保っているか?)」 「人をあざむくこともあざむかれることのないよう、真実の自己の状態でいるか?」 「はい」と自問していた。 「おーい、主人公! 目を覚ましているか?」と、呼びかけるように。

=========== 「瑞巌の彦和尚、毎日自ら主人公と喚(よ) び、復た自ら応諾す。 乃ち (すなわち)云く、惺々著(せいせいじゃく)、喏(だく) 。 他時異日(たじいじつ)、人の瞞を受くること莫れ、喏喏(だくだく) 」 (『無門関』第十二則) ===========

「深呼吸」の中で何度も出てくる「おーい」という呼びかけ。

自分の中の「主人公」へ呼び掛けられているような気がした。

この「深呼吸」へと収束していくかのように、Live全体が構成されているのでは、と思えるほど、全体の流れは見事だった。音の大河に身をゆだねるように聞いた。

永積タカシさんの歌声は、心の繊細な場所を細かく震わすような歌声がメロウに響く。甘く溶け合うような響き。 そして、目の前の大切な人に語り掛けているような、語りがそのまま歌へといつのまにか変化していくような、そういうプライベートな音楽性が核にある。語りと音との間を揺れ動く。

「Shinjiteru」というアルバムは、目の前の人へ向けて語り掛け歌っている歌声が、偶然隣にいた自分に漏れ聞こえてきてしまう。そのおこぼれにひとり静かに感動しているような、そうした静謐さを感じさせるアルバムだった。

「Shinjiteru」のアルバムの抽象的な文字に示されているように、言葉になる手前、感情になる手前、そういう気配としか感じ取れない場所を歌へと救済していて奏でているようだった。

そこには喜びが音楽から溢れ出している。

ハナレグミは、次の扉をあけようとしている。 そこには不安を凌駕するような、純粋で透明な好奇心が溢れ出している。

素晴らしいLiveだった。

時間の縛りから解放されるように。

歌声の中に何重もの秘された情報が込められていた。会場すべてが柔らかく包まれていた。

 

永積タカシさんのこのLiveを聞いて、年末に青山スパイラルで共演する「いのちの鼓動」(12/28昼の部は満員御礼!すみません!)の色んなInspirationがわいた。 ご本人ともLive後に色々と打ち合わせをして、さらにワクワクしてきた。

タカシさんは、大友良英さんとの対談本「見えないものに、耳をすます ―音楽と医療の対話」アノニマ・スタジオ (2017/9/4)も、ツアー中にずっとずっと読み込んでくれていたようで、本当にうれしい。

お互い、新しく未知なる扉を開けようとしている。 その少しばかりのお手伝いをできるような、面白い時空間にできればと思います。

今後のハナレグミから、ますます目が離せません!!

●ハナレグミ /線画

●ハナレグミ – 深呼吸 【Music Video Short ver.】

<食の鼓動 -innereatrip>@スパイラルガーデン(スパイラル 1F)  ●12/28(開場20:00/開演20:30) ゲスト:永積タカシ(ハナレグミ)(歌手)  ●12/29(開場20:00/開演20:30) ゲスト:UA(歌手)  ●12/30(開場17:30/開演18:30) ゲスト:熊谷和徳(タップダンサー)

 (→HP)

*関連イベント <いのちの鼓動 トークセッション>@スパイラルホール(スパイラル 3F)((定員:80名)  ●12/28(15:00-16:30)Talk Session1朗読「言霊」    稲葉俊郎+永積タカシ(ハナレグミ)   ●12/29(15:00-16:30)Talk Session2献歌「呼吸」    稲葉俊郎+UA (→申し込み  ●12/30(13:00-14:30)Talk Session3振動「リズム」    稲葉俊郎+熊谷和徳(タップダンサー) (→申し込み

 企画・構成:野村友里  音楽構成:青柳拓次  出演:高木正勝、ささたくや、蘇我大穂、渡辺亮、 Vincent Moon (12/29)  勝見淳平(PARADISE ALLEY)、吉川倫平(Pignon)  ゲストパフォーマー:永積崇/ハナレグミ(12/28) UA(12/29)︎ 熊谷和徳(12/30)  テキスト・トークセッション:稲葉俊郎 (東大病院 循環器内科 助教)  メイングラフィック:さとうみかを  フライヤーデザイン:樋口裕馬  テクニカルディレクション:遠藤豊 (Luftzug)  音響演出:牟田口 景 (WHITELIGHT)  照明:田代弘明 (DOTWORKS)

P.S

タカシさんが、このRoland Kirkのブログ記事をすごく興味深く面白く読んだっていうのを聞いて、さらに好きになったって言われて、うれしかったなぁ。好きなものは、声を大にして好きだ!って言い続けることが、大事なんでしょう。だって、好きなものは好きなんですから。理屈なんて後です。

●Rahsaan Roland Kirk - Volunteered Slavery (Montreux 1972)

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