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禅の公案 太陽の塔から

  • 執筆者の写真: inaba
    inaba
  • 11月5日
  • 読了時間: 3分

軽井沢から大阪に来ると景色はがらっと変わる。


ここまで都市を作り上げるには多くの人の汗があり、一本一本の鉄骨や鉄柱含め、関わったすべての人に人生のドラマがあると思うと、ぐっとくる。


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10年前、100年前、1000年前、1万年前、、と比較して、動物が見ても昆虫が見ても、人間が作り上げた都市の精密さや緻密さは、きっと驚異的に見えているのだろうと思う。



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大阪に行ったときに、

万博記念公園に太陽の塔を見に行った。


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岡本太郎は、人類は進歩も調和もしていない、と、宣言し、太陽の塔という神像を据えた。1970年のこと。


太陽の塔は過去・現在・未来の象徴。悠久の過去と遥かなる未来とが衝突して現在という時空が立ち上がる。

現在は過去と未来が衝突した火花のようなエネルギー構造物。


太郎と太陽の塔からの、禅の公案のようなものだと受け取ってみる。


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約700万年前、類人猿から分岐した「猿人」と呼ばれる初期の人類が誕生した(サヘラントロプス・チャデンシス:現在のところ最古の人類化石)。

700万年かけて、いまここにやってきた。農耕や産業・情報革命を経ながら。


「人類の現在」を考えるときに、700万年前の過去の人類の幼年期と、700万年先の未来形態の人類とをスパークさせて、「現在」の地平を見つめてみなさい、ということなのだろう。


おそらく、700万年後は太陽の塔も都市も地上からは朽ち果てているし、そもそも地球の大陸自体が分離、沈没、浮上、融合していそうだ。

そんな遥かな未来でも残り続ける生命体の中で、太陽の塔に似た天と地をつなぐものは、巨木だろう。


屋久島にある縄文杉も推定樹齢2000~7200歳とされているし、ギリシャのクレタ島にあるヴォーヴェスのオリーブも4000歳ほど。アメリカのカリフォルニアには「メトシェラ」と呼ばれるは推定5000歳の木もある。(969歳まで生きたとされる旧約聖書の登場人物メトシェラにちなんで名付けられたらしい)


ピラミッドが約4600年前に建造されたとされるので、石でできたピラミッドと巨大植物である最古の樹木は同じくらいの時、地球の営みを見つめてきた。


700万年先をイメージして現在を生きる(人類はそれだけの歴史を背負っている)、という太郎の公案は、やはり現世だけの視野だけではとらえきれず、死後の生も含めて、いのちの視野を広めなさい、と言っているのかもしれない。実際、ピラミッドは死後の生もイメージされた空間だ。


それは、横尾忠則さんと話すときにも常に問いかけられるテーマでもあり、芸術と霊性との関係は、死と生を、生と死を、ひとつのものとしてとらえない限り、永遠に解けない問いでもあるようだ。


この世の生は、「いのち」の幼年期とも言えるのだろう。

かけがえのない人生の中で何を学び、何を選択し、どのように成長していけるのか。それは現世の尺度では測れないもの。

目に見えない価値に、どれだけ人生の密度を込めることができるのか。


太陽の塔を見ていると、そうしたことがボンヤリと浮かんでは消えた。


訪れるその時その時で、感じること、浮かび上がってくる概念が変化することも不思議だ。


2025年万博で大屋根リングの中に入った人は、屋根を突き抜けた太陽の塔、そのものになった人であるともいえるから、影響しているのかもしれない。


軽井沢への帰路につく晩秋のこと。


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