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「カタストロフと美術のちから展」@森美術館

October 9, 2018

六本木の森美術館にて、「カタストロフと美術のちから展」を見に行く。

 

 


色々な作品があった。

『先行き不透明な混沌とした時代に、アートだからできること』

という副題もあり、そうしたことをボンヤリと思いながら、見た。

 


 

自分は、

生きる力、生き延びる力、復元する力、

のようなものが改めて求められているのではないか、と思うことが多い。

そして、それはどういう生命にも内在しているのだが、その種が花開き、果実を実らせるには、人間という土壌には何が必要なのか、と。

 


今の日本から、目に見える戦争は消え去ったけど、それは目に見えない戦争として、「戦い」は果てしなく続いているし、

今の日本から、目に見える飢餓は減ったたけど、それは目に見えない飢餓として潜伏化し、心や魂の飢餓として見えないところで損ない、むしばみ続けている。

 


だから、どんな状態にあっても、どんな時代でもあっても、命本来が持つ生生きる力を取り戻すような、呼びさますような、そうしたものを自分は芸術に求める。

 

医学は、物理的な身体を相手にするし、そのことは自分もプロとしての自負はある。

ただ、潜伏化して複雑化した問題には、総合的な力を必要とするから。

 


そうした意味で見ていても、やはり池田学さんの絵画から発される力、

そして『阪神・淡路大震災復興支援』で作られた横尾忠則さんのポスター作品からは、見ているだけで何かモリモリとした力がむくむくと湧いてくるのをわが身に感じたから不思議なものだ。

 

思わず立ち止まる。ある程度の時間見続ける。先に行くが、やはり気になってもう一度見戻って流れと逆行してでも見る。

体が、勝手にそれを繰り返す。

自分の趣味や好き嫌い、とかではなく、作品そのものから発されるものを身体が勝手に受信して反応した。

 


頭のジャッジではなく、身体が思わずスッと立ち止まり、身体がヒリヒリと反応したもの。

そういう意味では、横幅12メートルにおよぶ艾未未(アイ・ウェイウェイ)の壁画《オデッセイ》も、長時間行ったり来たりして、透視するように凝視してしまった素晴らしい作品だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


創造と破壊。

創造だけではなく、もちろん破壊だけでもなく。

それが一体となった作品には、ある種の透明さのようなものが、作品を通して深く感じられる。そこには思想やイデオロギーではなく、高貴さ、尊厳ささえ、感じられる。

作品を通して、作者と見る側に絆のような関係性が生まれる。

 


いろいろな人の表現を通過しながら、いろいろなことを感じさせられ、考えさせられる展示だった。

この混迷した世界の中で、目の前には無数の選択肢がある。こうした大きな会場で発表が許された有名な芸術家はこうした表現をとった。

さて、あなたはどちらへとその歩みを進めますか、と天から問われているように。

 


それぞれの人には、生きざまという形でしか表現できない、天という鑑賞者からしか見えない芸術表現があるのだから。

 

 

 


 

 


六本木ヒルズ・森美術館15周年記念展

カタストロフと美術のちから展

会期 2018.10.6(土)~ 2019.1.20(日)

 

 

<概要> HPより

東日本大震災やアメリカ同時多発テロ、リーマンショックなど世界各地で絶えず発生するカタストロフ(大惨事)。多くのアーティストがこのような悲劇的な災禍を主題に、惨事を世に知らしめ、後世に語り継ごうと作品を制作しています。その私的な視点による記録は、マスメディアの客観性を重んじる記録とは異なり、多勢の世論の影に隠れて見えにくくなったもう1つの事実を私たちに提示します。そこにはまた、社会の矛盾や隠蔽された問題の可視化を意図するものや、個人的な喪失や悼みを表現するものもあります。

 

カタストロフは私たちを絶望に追い込みますが、そこから再起しようとする力は想像力を刺激し、創造の契機となることもまた、事実なのではないでしょうか。東日本大震災以降、国内外の数多くのアーティストが復興・再生への願いを込めて理想や希望を描き、より良い社会のために新しいヴィジョンを提示しようと試みています。

 

戦争やテロ、難民問題や環境破壊など、危機的な問題が山積する今日において、美術が社会を襲う大惨事や個人的な悲劇とどのように向き合い、私たちが再生を遂げるためにどのような役割を果たすことができるのか。本展は、負を正に転ずる力学としての「美術のちから」について注目し、その可能性を問いかけます。

 

 

 

 

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