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映画「TECHNOLOGY」(監督:遠藤麻衣子)

May 13, 2018

 

 

昨日の映画「KUICHISAN」に続き、映画「TECHNOLOGY」(監督:遠藤麻衣子)を渋谷のイメージフォーラムに見に行ってきた。こちらはかなりぶっ飛んだ、それでいて不思議な余韻が残る体験としか言えないすごい映画だった。

 

 

家に帰り、HPの解説を見て驚いた。

へー!こういう映画だったの?か、と。笑

 

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映画「TECHNOLOGY」

謎の力によって月からさらわれ地球にやってきた少女。

彼女の風貌は目を引き、その匂いになぜか人々はなつかしさを覚える。

この地では、聖なる植物を巡り、絶え間ない争いが日々繰り返されていた。

そんな中、サックスを片手にまたひとりの運び屋がこの地に降り立つが・・・。

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この映画も、音楽と映像とがせめぎあっていた。

音楽の服部峻(Takashi Hattori)さんは、本当に不思議な音世界を構築している。

むかし、監督の遠藤麻衣子と同じバンドを組んでいた時期もあったらしい。

 

→●Takashi Hattori - 1st Album - UNBORN

 

 

 

それはともかく。

美しく幻想的な映像が満載だった。

そして、この映画は本当に言語化しにくい。

 

 

ただ、映画を見ながら自分が勝手に感じていたのは、女性の身体のことだ。

具体的には月経という女性にしかない身体感覚のことだ。

 

 

デビュー作の映画「KUICHISAN」ではすべてが少年の視点から語られていて、少年の視線でこどもからおとなへの移行期を感じた。

今回の映画を連続で見たからなのか、映画「TECHNOLOGY」では、少女が大人になっていく深い身体の内的感覚を、映像と音楽の力で神話の世界から覗くように思えたのだ。

 

 

思春期のとき、少女の内界はきわめて不安定になる。

身体が、月の満ち欠けと同期するように急激に変化していくこととも大きく関係があると思う。

それは少女漫画の世界を見ていてもいつも感じるのだ。

本人にとってもわけのわからない嵐のような内界の変化を経て、少女は大人の女性になっていく。

 

 

人間の内的世界は植物世界でできている。

植物という自然の内界は、特に女性は月の満ち欠けの影響を強く受けている。

 

この映画を見ていたら、そうした「言葉にならない」こどもからおとなになる女性の変化が、男性の自分がありありと感じてしまったから不思議なことだ。

 

 

月からやってきた女性。
日本だとかぐや姫であり、ふと思い出すのが、日本の平安後期の王朝物語である「寝覚物語(ねざめものがたり)」の内容(『夜半の寝覚』(よわのねざめ)とも言う)

 

 

そもそも、「寝覚(ねざめ)」というタイトル自体が、寝ていて覚めている、意識と無意識のあわいの状態を指している。

 

寝覚物語での主人公の女性、中の君(寝覚の上)は、13歳と14歳に「天人が降りてくる夢」を見る。
その夢は「琵琶の名手になること」、そして「生涯にわたり苦難を体験する」というものだった。
ただ、15歳の夢では天人は降下してこない。

天人が降りてこなかった、という夢の内容まで記されていることは、どちらもそれだけ大きな意味を持つということだろう。

 

 

 

14歳は、思春期の終わりでもある。
夢のお告げ、天使、精霊・・・そういう存在と切り離された、大人の世界に入っていく。
ただ、思春期に持った最後の夢は、人生に強い影響を与えるものだ。

 

 

自分という存在が、この世の日常的存在ではない存在とつながっているという体験により、
存在の不安感に揺れる。
思春期の女性が心の深層で体験すること。
もちろん、この体験がどんどん深いところまで行くと大変なことになるのだが・・・。

 


自分は病院でこうした思春期の女性の話を聞くことも多いが、それは天や月という超自然的な存在と直接的につながっていて、同時に切り離されようとする不安定な時期で、だからこそ何とも言葉で表現できず、自傷行為に走ったりすることもある。


この世の原理を受け入れることはつらい。
他界への憧れは、死を願う心に通じる


不安定だからこそ大切な時期だとも言える。


映画「TECHNOLOGY」(監督:遠藤麻衣子)を見ながら、ふと少女が大人になっていく難しい時期のことを思い出した。
少年や男性には永遠に分からない世界なのかもしれない。

ただ、その大変な時期を理解して、暖かく見守ることはできる。

 

音楽は、境界を越えてやってくるもの。

ふいに挟まれる不思議な音楽は、境界を無視して突き抜けてくる魂の声のようにも感じた。

 

 

タイトルの「TECHNOLOGY」は謎めいているが、宇宙と地球、天体と人間との関係性を結んでいる蝶番になっているのが「身体」であり、人間という存在がすでに宇宙のテクノロジーでもあるのかもしれない。

 

 

 

精霊のような存在から赤ん坊に、そして人間になっていく。

子ども時代は、誰にも男性も女性もない。どちらでもあるようでどちらでもない。

 

そこからある人は少年となるし、少女となるし、どちらでもない性になる人もいる。

少年のこころ、少女のこころ。

そして、誰もがこどもからおとなになる。

 

何かそうした私たちの存在を支えるコアにある不安定な時期の揺らぎ(それは正気も狂気も含んだものとして)。

そういうものを受け取った気がします。

 

そして、監督なりに、そうした子供のときに見ていた風景から、もう一度この社会や文明をやり直したい、という強い決意や誘いのようなものも。

 

 

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本当に不思議な映画です。

月と海、女性と植物。

そこに唐突に挟まれる音楽とインドの風景。

何か生命の故郷を垣間見ているような感覚が残りました。

 

 

今までに見たことがない映画を見たい、という方にはぜひ見てほしい!

理性を使わず、体験してください。

日本初公開で、今週だけです!

 

 

 

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映画「KUICHISAN」

製作・監督・脚本・編集:遠藤麻衣子

|共同製作:ジェシカ・オレック、奥田彩子

|撮影監督:ショーン・プライス・ウィリアムズ(『グッド・タイム』)

|録音:アレックス・ロッシング

|音響デザイン:ブライアン・ハーマン

|音楽:服部峻、小林七生、J.C.モリスン、加藤英樹、ブライアン・ハーマン、遠藤麻衣子

|出演:石原雷三、エレノア・ヘンドリックス(『シティ・オブ・ドッグス』)、李千鶴(『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』)ほか
2011|日本、アメリカ|76分|35ミリ|白黒・カラー|1:33:1|ステレオ
助成:Cinereach   ©Selfish Club Productions

 

 

映画「TECHNOLOGY」

監督・撮影・録音・編集:遠藤麻衣子

|製作:遠藤麻衣子、クリストフ・オードギ(『私の名前は・・・』)|

|製作補:クリスチャン・マンズット、ジャスビール・シン・ソーニー|

|音響デザイン:ニコラス・ベッカー(『メッセージ』『ゼロ・グラビティ』)|

|リレコーディング・ミキサー:ケン・ヤスモト(『エンター・ザ・ボイド』)|

|音響編集:浅梨なおこ(『東京喰種 トーキョーグール』)|

|音楽:服部峻|

|出演:インディア・サルボア・メネズ(『5月の後』)、トリスタン・レジナート、スレンダーほか


2016年|日本、フランス|73分|DCP|白黒・カラー|1:85:1|5.1ch
助成:Fonds De Dotation agnès b.   © A FOOL, the cup of tea 

 

 

 

 

◎5月12日(土)よりシアター・イメージフォーラムにてレイトショー公開! 

連日21時から「KUICHISAN」「TECHNOLOFY」交互の隔日上映!

映画『KUICHISAN』『TECHNOLOGY』 オフィシャルサイト

www.kuichi-tech.com/

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