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音による場

神保町の温室で「音楽と医療」の講義をした。

3/11のNHKのスイッチ放映以降では初の講義だった気もする(本職が多忙すぎて・・)。

そして、奇遇にもこの「音楽と医療」のテーマになった。

大友良英さんと、音楽の原点のような話を深く長くしたからかもしれない。

初めてのスタイルとして、自分の好きなレコードをかけて紹介をしながら講義をするという、DJスタイルで講義をしてみたのだが、どうだっただろうか。 DJとは言っても、クラブなどに行ったことがないため、DJという職種がどういう仕事なのかはよくわかっていない。(レコードをスクラッチするのは、レコードへの愛を感じないで好きではない。レコードが痛いと叫んでいるようで見ていて辛い)

 

元々、なぜレコードプレイヤーとLPを持ち込んだかと言うと、季節と関連がある素晴らしい曲として、 宮城道雄さんの「さくら変奏曲」を、是非ともLPの音源で聞いて欲しいと思ったのがはじまりだった。

○Youtubeにもありますが、やはりLPの響きがいいなぁ。

この曲は宮城道雄さん29才!の作曲だ。

宮城道雄さんは7歳の頃に失明しているのだが、琴の作曲家だけではなく、演奏家としても超一流だ。そして、箏曲の伝統に根を下ろしながら洋楽を組み込んで新しい日本の音楽を創った人だ。

この「さくら変奏曲」は、宮城道雄(第一箏平調子)、牧瀬数江(第二箏雲井)、牧瀬喜代子(十七弦)による琴の三重奏になっている。なんと前衛的な音楽だろう!!!!

それ以外も、一応講義と関連があるものをかけたつもりだ。 ガムランの音楽や武満徹さんなどをメインとして。

音の響きそのものが渦となり場となるものを、西洋音楽の比較として実感してもらった。

元々、東洋と西洋では音楽に求めている物自体が違うのだ。それは優劣ではなく、世界観の違いとしか表現できない。それは風土に根ざしたものなのだろう。

ジョン・レノン(John Lennon)やマイルス・デイビス(Miles Davis)やバド・パウエル(Bud Powell)やセロニアス・モンク(Thelonious Monk)やマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)やキース・ジャレット(Keith Jarrett)は、単に自分がのってくるのでかけてみただけだけれど。

CDとレコードがこんなにも音響、音の響きの上で違うのか、ということを体感してもらいたかった。

現代の琵琶法師のように、音と語りと映像のイメージやVision、夢(Dream)の体感を総動員して聞くようなスタイルをトライしてみた。

 

現代音楽を聞きながら、その謎を共有しながら時を共有するのも面白いと思った。 特に武満徹さんは、もっとその深さが共有されていいと思う。

自分も日々武満さんからは発見をしている。

能楽や村上春樹さんや武満徹さんは、意識や心の深層を表現する点において、類をみない世界だ。

自分はそこに共通性を見出している。

それらの世界からは、深い生命へのまなざしや、ひいては医療的効果までも感じている。

なぜなら、それは人間の魂の領域を扱っているからだ。

 

昨日、富士レコードで発掘して、初めて出会ったLPがある。 ポーランドの作曲家、ルトスワフスキの<アンリ・ミショーの3つの詩>というLP。予感に満ちたすごい音楽だ。

ルトスワフスキーは、1961年にジョン・ケージと出会って大きな影響を受け「偶然対位法」という彼独自のスタイルを産み出す。この技法に基づき1962-64年の間に書かれた不思議な曲だ。

アンリ・ミショーの詩やVisionに影響を受けて曲を作っているところが、武満さんの創作の源とも似ている。

マルセル・デュシャンの星型にそりあげられた後ろ姿を夢で見て(《剃髪したデュシャン》(1921年、マン・レイ))、武満徹さんが<鳥は星形の庭に降りる(A Flock Descends into the Pentagonal Garden)>を作曲した(1977年、武満徹)。

《剃髪したデュシャン》(1921年、マン・レイ)

夢やImageやVisionの世界では、生きているとか死んでいるとかは関係なく、自分が尊敬して共鳴している人と、新たな関係性を結び続けることができる。

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