© All right reserved TOSHIRO INABA

バーンスタインと佐渡裕さんとの対話

July 23, 2017

佐渡裕,高橋敏郎「バーンスタイン名盤100選―LPジャケット美術館2」(とんぼの本) 新潮社 (2008/09)を、図書館で借りて読んでいる。

歴代のレコードが、簡単な解説と共に100枚あげられていて、面白い。

 

 

美しいバーンスタインのLPジャケットを何個か本よりご紹介。

 

 

 

 

 

佐渡裕さんは、お兄さんがカラヤン好きだったので、あえてバーンスタインを好きになり、最初に自腹で買ったレコードも、バーンスタイン指揮の「マーラー交響曲一番《巨人》」(1966年)だったと。(自分もこのLP持ってる!)。

 

佐渡裕さんが高校生の時、1979年に初めてバーンスタインが来日。
京都会館でマーラーの《巨人》を演奏するとのことでしたが、チケットは即日ソールドアウト。

 

どうしても行きたかった佐渡さんは、1979年6月22日、裏口からこっそり侵入しようとするも警備員にみつかり、こっぴどく説教されたとのこと。
(京都の次の東京での公演、1979年7月2-3日の「ショースタコーヴィチ 交響曲第5番」のライブ録音は、今でもロングセラーで売れ続けている名演とのこと。)

 

(すごくかっこいいジャケット!)

→○レナード・バーンスタイン「ショスタコーヴィチ:交響曲第5番&チェロ協奏曲第1番」(日本独自企画盤) 

 

 


それはともかく。

 

この本に書いてあった、バーンスタインと佐渡裕さんとの素晴らしいエピソードに心を惹かれた。

まるで禅での対話のようだ。

 


バーンスタインが、1985年に広島平和コンサートで来日し、ベートーヴェンの《レオノーレ》序曲第3番を演奏したが、その前に原爆の被害者に祈りをささげる姿に絶大な感動を覚え、佐渡さんはバーンスタインの指導を受けようと思い立つ。

 

タングルウッド音楽祭での指揮クラスに応募したところ無事に通過し、直接指導を受けれることに。

ただ、十分に英語を話せない佐渡さんは貝のように閉じこもってしまっていたとのことだった。

 

それを見たバーンスタインの対応がすごい。いまでいうと<神対応>か。

 

 

「お前は能を知っているか。何種類のマスク(能面)があるか知っているか?」
と突然聞かれたとのこと。

当時、能のことを何も知らない佐渡さんは答えることができなかった。

 

その後、バーンスタインから延々と能のレクチャーがはじまる。

 

役者が装束や能面をつける瞬間どうなるか。松明による照明のこと。囃子(楽器)の種類。役者の所作の意味・・・など。

 

 

以下、佐渡さんの文章を引用
========
○佐渡裕,高橋敏郎「バーンスタイン名盤100選―LPジャケット美術館2」(とんぼの本) 新潮社 (2008/09)より

 

 

そのうち、なぜか「握手をしよう」と言われた。

で、手を出したら「急ぐな。ゆっくり」という。


「目でわからないほどゆっくり、ほんの少しずつ、手を前に出せ。スローで。いや、もっとゆっくりだ・・・どうだ、俺の手の平の熱を少しずつ感じ始めただろう。急ぐな。もっとゆっくり・・・」

 

つまり握手を能の精神でやるんです。
やがて、「パン!」と音を立てて二人の手の平が重なりました。


その瞬間、僕の身体中を電気が走った。

いままで集中して溜めていたエネルギーが、一瞬にして手の平を通じて二人の全身を貫いたような感じでした。

 

そしてこう言った。
「これが日本人の持っている特別な才能なんだ。

日本人のお前には、こういうことができるはずだ。

たとえば、マーラーのアダージェット(交響曲第5番第4楽章)などは、この精神で振れ」

 

言葉が通じない欧米人ばかりの中で、コンプレックスの固まりになっていた僕は、自分が日本人であることに誇りを覚え、いっぺんに自信を取り戻す事ができたのです。
========

 

なんと素晴らしいエピソードだろう!!

能の発表会の後に読んだので、特別に深く自分の心の中に届いた。

Share on Facebook
Share on Twitter
Please reload