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詩画集刊行記念 GOMA展@新宿髙島屋

July 6, 2019

新宿髙島屋10Fにて、GOMA展を見てきた。


GOMA×谷川俊太郎 詩画集「Monado モナド」発売記念も兼ねている展示で、素晴らしい展示だった。ちょうどGOMAさん本人のディジュリドゥ演奏も聞くことができて、鳥肌が立った。

 

 

 

 


GOMAさんは、ディジュリドゥ奏者として活躍していた。もともと絵画など描いたこともなかった。
2009年、いまからちょうど10年前に大きな交通事故に遭い、脳を損傷する。高次脳機能障害の症状に悩まされ音楽活動を休止せざるを得なくなる。10年前、37歳くらいの頃だ。

 

高次脳機能障害とは、なかなか一言でくくれない症状なのだが、脳は複雑な活動を同時並列に行っていて、その複雑な脳の活動がうまくかみ合わなくなることを言う。交通事故、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍など、、、脳の障害部位で多彩な症状となり、かなり個人差が大きい。

 

脳は、知覚、記憶、学習、思考、判断、感情(情動)・・・などの複雑な活動をして統合している。頭のことなのに、頭で考えるとこんがらがってくるほど複雑だ。
そうした情報処理の複数のルートが一部障害されただけでも、全体の活動としてはなめらかに働くなることがある。表面的には、注意が散漫になり、怒りっぽくなり、記憶がうまくできなくなり、段取りが悪くなり・・・など、生活に困る何とも表現できない障害が出て、本人や周囲をいらだたせ、悩ませる。

 

 

 

GOMAさんは一時音楽活動ができなくなるほどだった。奥様やご家族を含め、まわりの心配は大変なものだっただろう。

 

この高次脳機能障害は、子どもたちの発達障害と同じで、新しい脳や体の関係性が結びなおされる時間を辛抱強く、本人も周囲も待ち続ける根気が必要になる。


ただ、人間の生命とは本当に不思議なもので、それは数十億年の間、生き残り続けてきたいのちの力としか言いようがないのだが、誰もが思いもよらない場所と場所とが、働きと働きとが結びついて、新たな生命の関係性を作り直して立ち上がってこようとするのだ。

 

 

 


GOMAさんの場合は、それが絵画だった。


あるとき、絵筆を持ったこともないGOMAさんは、緻密な点描画を描きはじめる。

描く行為は、周囲へのいらだちを含め、外側へと注意力が散漫になってしまう状態を、ぶれずに一点に集中させるためにも効果的に働いただろう。
他にも、「病魔」という病そのものがもたらす魔や闇の力に引き込まれそうなとき、光を描くこと自体が自分自身を光の方へと向ける効果もあっただろうし、過去の回想に閉じ込められず現在の命の状態(命は常に再生を続けている)にとどまり続けること、自分を含め人間不信になりそうなときに自分を信じて前へ進む力を得ること、、、色々な効果を副次的に生んだと思う。


そもそも、「絵を描く」という深い衝動を生んだものこそ、「命の力」なのだから。その衝動に忠実に生きたことは、新たな可能性を生んだ。

 

 

 


わたしたちは起きて寝る。そういう何気ない意識活動を日々繰り返しているが、眠りのとき、意識状態はすべてバラバラにほどけて、内的な生命世界へと、水が拡散し、ガスが拡散するように意識はほどけていく。
わたしたちが目覚めるとき、意識は自動的にひとつの集合体として結集してきて、外部活動、社会活動をはじめる。何気ない日々の活動の中で、わたしたちは色々なものを生命に定着し、生命情報を更新し続けている。

 


ディジュリドゥの音色も、点描画というイメージ体験も、この何気ない意識活動の再生へと影響を与え続けていただろう。

 

内的生命の時間である眠りから目覚めるとき、意識活動で最初に立ち上がってくるのは「光」の体験だ。そこから小さい光の像が無数に結ばれ、それは色となり、形となり、この複雑な宇宙の色や形に適合させるように、外の世界を認識する。だからこそ、臨死体験では必ず「光」の体験が伴う。それは生命の深い場所で体験するはじめてのイメージ体験なのだ。誰もが赤ん坊のとき、最初に光の体験をしてこの世に生まれてくるように。

 

 


GOMAさんの絵は、こうして意識活動が立ち上がってくる瞬間の世界を映し出していると思う。


眠る瞬間、意識を失う瞬間、日常の行為だが多くの人は何も覚えていない。その毎日通る風景をしっかりと見て味わうことは難しい。
ただ、一部の人たちはしっかりとその風景をイメージとして焼き付け、日常につながる通路を経て表現することができる。

 


詩人の谷川俊太郎さん。ほんの数文字の言葉にわたしたちが感動するのも、そうした生命が立ち上がるときの世界にふれているからだろう。谷川さんとGOMAさんとは、一部の人しか立ち入ることができない場所で、魂が感応したのだろう。

 

そこは生命にとって根源の場所だからこそ、たしかに危険な場所でもある。長居はできない。
あらゆるものが意味をなさない場所だし、常識から自由にならないと、そうした場所に居続けることはできない。
ただ、そうした根源の場所こそが、根っこのように生命を深く支えていまここに生きているのも事実なのだ。

 

 

 

 


イメージの源泉、生命の根っこ。
命がけでそうした場所を生きている人だからこそ描ける世界だと思った。
そこには生命の強さだけではなく、弱さや儚さもある。

 


生命は弱く儚い面もあるからこそ、周りの人たちに支えられないと、人は生きていけない。
GOMAさんの絵の世界の周りには、奥さまやご家族、多くの友人・・・、周囲の人たちが暖かく見守り、太陽のように土壌を暖かく照らしている。そうした関係性すらも、透けて見えた。それは愛としか、表現できないものだろう。

 

 


GOMA展は、新宿髙島屋 10階美術画廊にて7/15(月・祝)まで。
GOMA×谷川俊太郎 詩画集「Monado モナド」も発売されています。
ぜひお立ち寄りください!


こうした世界が、光の波紋のようにもっともっと広まりますように。

 

 

 


詩画集刊行記念 GOMA展

開催期間:2019年7月3日(水)~7月15日(月)
開催場所:新宿髙島屋 10階美術画廊
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-2

 

 

 

 

 

 

 


「モナド」谷川 俊太郎 (著), GOMA (著)(講談社 (2019/7/11))

<内容紹介>
「頭に浮かんだ絵のイメージを描かずにはいられないのです」

思わず目を奪われる不思議な絵。
その絵に書き下ろされた谷川俊太郎の言葉。
絵と言葉が響きあう二重奏の世界――。

交通事故で脳を損傷、高次脳機能障害となった音楽家のGOMA。一方、事故の2日後からそれまで描いたことのなかった絵を突然描き始めた――。彼の脳裏に浮かびあがるイメージを描いた、なぜか人の心を惹きつけるその絵に、谷川俊太郎が詩を書き下ろしました! あなたの心に響く画集です。

 

<著者について>
谷川 俊太郎
1931年東京生まれ。詩人。1952年第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行。1962年「月火水木金土日の歌」で第四回日本レコード大賞作詞賞、1975年『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、1982年『日々の地図』で第34回読売文学賞、1993年『世間知ラズ』で第1回萩原朔太郎賞、「2010年『トロムソコラージュ』で第1回鮎川信夫賞など、受賞・著書多数。

 

GOMA
1973年1月21日大阪府出身。ディジュリドゥ奏者・画家
1998年にオーストラリアにて開催されたバルンガ・ディジュリドゥ・コンペティションにて準優勝。ノンアボリジナル奏者として初受賞という快挙を果たす。海外にも活動の幅を拡げていた2009年交通事故に遭い外傷性脳損傷と診断され、高次脳機能障害の症状により活動を休止。一方、事故の2日後、突然緻密な点描画を描きはじめる。プリミィティブな衝動に突き動かされた自由な発想と独特な色彩感覚が特徴的な絵画により画家として活動を開始し、全国各地で絵画展を開催。絵を描かずにはいられない衝動は止むことはない。2011年再起不能と言われた事故から苦難を乗り越え音楽活動を再開。2012年GOMAを主人公とする映画「フラッシュバックメモリーズ3D」が東京国際映画祭にて観客賞を受賞。2018年2月、NHK ETV特集「Reborn ~再生を描く~」で取り上げられ、番組内で、サヴァン症候群の世界的権威の精神科医ダロルド・トレッファート博士から「後天性サヴァン症候群」と診断される。現在もディジュリドゥ奏者、画家としてのみならず、講演会など多岐にわたり活動中。

 

 

 

 

 

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