『暁の帝 -朱鳥の乱編-』@池袋シアターグリーン
舞台『暁の帝 -朱鳥の乱編-』@池袋シアターグリーン を見てきた。
とっても素晴らしい舞台!
ほんとに感動したなぁ。圧巻だった。
伊藤靖朗さん(舞台芸術集団 地下空港)の演出は素晴らしく、光、布、舞台、このシンプルな3つの組み合わせだけで、あらゆる奥行き、人々の関係性や心理描写、を表現(象徴?)していた。舞台の袖を隠してない(待っている役者さんが風景のように溶け込んでいる)のもとってもよかった。
今回の脚本を書いている橘さんも、こんなに緻密な脚本を書くとは!と、驚いた。それぞれの立場での思惑や葛藤も、互いの関係性が組み変わることで、常に変化し続けていく。星座の全体性が組み変わっていくような流れが、天体を見ているような気になった。
史実を大切にしつつ、謎とされている部分はいろいろと想像を膨らませて演出されていて、そのバランスも抜群だった。歴史家が見ても、納得するんじゃないかなぁ。小中学生にも見てほしい。きっと歴史を学ぶことが面白くなる。
演じる役者さんたちの熱演がみなさん欠けることなく素晴らしく、自分も登場人物の一人であるかのように舞台の中に入り込んでしまった。
物語の大きな流れが、会場を包み込んでいて、劇場が巨大な母船のようだった。
壬申の乱直後は、日本という国の王権を誰がとるのか、帝には誰がなるのか、まさにそういう時代で、男たちは権力欲や闘争心に溢れ、帝の座を闘おうとする。 ただ、天武天皇(大海人皇子)の妻である讃良(後の女性天皇である持統天皇)は、また違うスタンスと視点があり、その緩急や、人々の複雑な思いが重層的に合わさっているところ、女性である讃良が、なぜ自分が帝となることを決めたのか、死者の思いと生者のバトン、命を引き継ぎ生きるものの決意、生き様、すべてがぐっとくる演出で、とっても深い場所が活性化された。
ほんとうに素晴らしい舞台。何度も胸が熱くなった。 この感覚は、劇場で体感して共感してほしいなあ。
トルストイの「戦争と平和」という大作をなんとか読み終えたときの充実感に似ている。
トルストイ「戦争と平和」では、フランス革命後の皇帝ナポレオンが、ロシアに攻め込んできた時の戦争を描いている。歴史教育の中ではナポレオン含めた英雄の話しか出てこないが、作家トルストイは戦争の中で死んだ人、生き残った人、どんな人にも愛や恋、裏切りや絶望や希望、あらゆるドラマを引き受けるように一人一人が生きていて、史実の中には出てこない一人一人の生き様を丹念に執念深く描く大作だった。
舞台『暁の帝 -朱鳥の乱編-』でも、主役の讃良(後の持統天皇)だけをヒロインとして特別視して扱うわけではなく、讃良のまわりにいる必死で生きた人たちの生き様にも等しく光が当たっていて、日本版、トルストイ「戦争と平和」を読み終えたあとのような深い充実感が残った。
自分は朱チームの初日に行った。
藍チームと朱チームの二チームはまったく違う人選で、毎日交互にされている面白い舞台。
6/13木曜から6/23日曜までほぼ連日やっているので、ぜひぜひ池袋に足を運んで見に行ってください!あっという間の時間でした。
みなさんの演技が本当に熱をおびて素晴らしく、古代が現代のリアリティーとして立ち上がっていて、圧倒されたー!
ちなみに、別売りで販売されているパンフレットには、「生命というドラマの共同創造」というタイトルで自分も文章を寄せているので(力作!)、ぜひこちらも読んでほしいなぁー。
舞台「暁の帝~朱鳥の乱編~」
日程:2019年6月13日 (木) ~6月23日 (日) 会場:シアターグリーン BIG TREE THEATER
脚本:たちばなやすひと 演出:伊藤靖朗(舞台芸術集団 地下空港)
出演 – team朱 – 佐藤美希 越智友己 松大航也 玉元風海人 野田孝之輔 木本花音 高山侑子 佐々木恭祐 寺下怜見 小川 慧 近藤 築 樹麗 渡邊安理 阿部丈二
– team藍 – 十碧れいや 西野太盛 滝川広大 田中宏宜 竹岡常吉 小菅怜衣 矢吹世奈 佐々木恭祐 椚ありさ 中嶋海央 藤田晋之介 七味まゆ味 原 史奈 加山 徹 http://produce-party.com/akatsuki2