パフォーマンス記録映像 《S/N》 特別上映 + THE OK GIRLS SHOW@東京都現代美術館
1995年のスパイラルホール/東京での舞台の映像を見て、THE OK GIRLSのショーを見た。
東京都現代美術館(MOT)での展示も2019年の11月に見に行った。
あらためて、タイトルの《S/N》、SignalとNoiseというものの現代的な意味をガツンと受け取った気がする。今でも余韻が残っている。
色んな事情で世間での「当たり前」が作られ、「偏見」や「常識」が作られていく。そこで生み出された論理は巧妙に合理化されていて、論理的に崩すことも難しくなっている。そうした「偏見」を元に色々な差別や社会的圧力が生まれてきた。それは常に時代と共に変化する。病で言えば、以前はハンセン氏病(ライ病)だったし、1995年の当時はエイズ(AIDS)だった。つまりは、少数者の人たちは、色々な理由を口実に差別や迫害や圧力を受ける。別の言い方をすれば、社会は少数派を見つけることで、多数派全体の安定を図ろうとする、とも言えるのかもしれない。
そして、誰もが「何かしらの多数派(マジョリティー)」に属していて、「何かしらの少数派(マイノティー)」に属している。すべての要素において「多数派(マジョリティー)」である人は、現実的には存在しないのだと思う。
「偏見」は、場に力を与えてしまうから、その巨大な場の力学や流れに抵抗して、個人の素直な考え、それは愛や慈悲などのささやかな力をベースに、個の感性を保つことは難しいこともある。偏見が共同体、地域、国家、地球全体でつくられてしまうと、個の力は時に絶望的に見える。
ただ、やはり、芸術というのは、そういう閉塞した状況の中で、空気穴のように自分が息する通路をつくることができるのではないだろうか。そして、シアター(劇場)というのも、空気穴として作用する聖なる空間、それは生命を守る繭のような働きをもするのではないだろうか。
そして、そこに真実があれば、必ず時代は真実を見つけるし、そこで表現された魂の光は、必ずや仲間を得て、共同創造の種となる。
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ダムタイプはリーダーのいない集団創作が特徴で、自分も以前から影響を受けてきた。作品の内容はもちろん、その提示の仕方や表現方法、構成やテーマ、メンバーの流動性や場のあり方、そうした部分に分割できない全体性に対して。
こうした試みが、社会の中でできないものかと。
一見すると芸術と関係ないように見えても、ダムタイプに感動するような人から見れば、ああこの活動はダムタイプが目指したような指導者がいない支配的ではない集団創作の新しい形なのではないかと。
一見芸術と関係ないように見えても、社会実験、社会創造という意味でアートや芸術の運動のように思えることはたくさんある。自分もそうした大河の一滴になりたいと、改めて思った。
とても感動する映像と舞台。無意識を強く活性化された。そして、何か力や勇気、そして優しさや慈悲さえも感じさせる深い舞台だった!
帰りは、歩いて隅田川を渡って、川の流れを観察した。
「川」も、一滴一滴が入れ替わり続けているのに、同じ「川」とみているのは不思議だなぁ、と思いながら。生命の営みも、社会の営みも、水滴と「川」の関係と同じだなあぁ、と思いながら。
■「ダムタイプ|アクション+リフレクション」 関連プログラム
パフォーマンス記録映像 《S/N》 特別上映 + THE OK GIRLS SHOW
2020年1月13日(月・祝)14:00-16:00(開場13:30-)
https://www.mot-art-museum.jp/events/2020/01/20191212161405/
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《S/N》記録映像 (1995/2005, 86分)
インスタレーション等も含むプロジェクトとして1992年に始まった《S/N》。「S/N」とは「Signal/Noise」を意味し、信号の中にどれだけのノイズが含まれるかを計測する音響用語「S/N比」に由来している。パフォーマンスは、1994年、オーストラリアのアデレード・フェスティバルで初演。今日の社会が直面する切実な問題―ジェンダー、エイズ、セクシュアリティなどをテーマに、現代社会が抱える、人種、国籍、あらゆるマイノリティや性差別などを正面から捉え、パフォーマンスのみならず周囲の多様なコミュニティとの交流・連携など、具体的なアクティビズムを巻き込み展開された。翌1995年、ディレクターである古橋悌二がHIV感染による敗血症のため急逝するまで、約20ヶ月の間に12カ国16都市で上演され、大きな反響を呼び、古橋の死後も、古橋不在の《S/N》は5ヶ国・6都市で上演された。
パフォーマンス初演:1994年 オーストラリア、アデレード
出演:石橋健次郎、鍵田いずみ、小山田徹、ピーター・ゴライトリー、砂山典子、高嶺格、田中真由美、古橋悌二、薮内美佐子
映像編集:高谷史郎
翻訳:アルフレッド・バーンバウム
撮影:日本衛星放送WOWOW(1995年 スパイラルホール/東京) © dumb type
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