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「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」東京都美術館


東京都美術館に、「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」を見に行く。

ちょっと前の伊藤若冲展はあまりの行列の長さに行くのを断念したが、今回の展示はあまり混雑もなく、見やすかった。この展示には、伊藤若冲の世界初展示の作品もあった。

この展覧会は、辻惟雄先生の『奇想の系譜』(1970年)で取り上げられていた画家たちにスポットライトがあたっている。 当時ではメインストリームではなかったものの、時代が追いついた今ではメインストリームを凌駕する圧倒的なイメージの力を持つ画家たちが、「奇想の系譜」と呼ばれた。

岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳に、白隠慧鶴、鈴木其一の8人。

自分は「別冊太陽 江戸絵画入門」を愛読していて、この奇想画家と呼ばれるラインの人たちは本当に好きだ。この8人が並んだのには本当に驚いた。(渋谷のbunkamuraで、河鍋暁斎の『ゴールドマン コレクション これぞ暁斎!』(2017年)もありましたが、今回は河鍋暁斎の作品はなかった・・・)

→〇渋谷Bunkamura『ゴールドマン コレクション これぞ暁斎! 世界が認めたその画力』(February 24, 2017)

実際、パソコンやポスターの印刷で見るのでは、生の肉筆で書かれた質感やサイズ感は大きく違う。

彼らも行儀よく当時の常識に納まる技法で描いているかと思えば、「型」や常識をあざわらうように筆のタッチに画家のエネルギーが封印されたような恐ろしい筆の流れでイメージを駆け抜けていたり、PC画像では永遠に再現できない独特の色合いに驚いたり(特に鈴木其一が描く「色」は恐ろしいほど妖艶だ)。

とにかく、生で見ると驚きっぱなしの展示だった。 自分の無意識が、イメージ界が強く活性化される。

西洋絵画の比較で言えば、彼らの絵画世界に「自分」や「自我」というものはあまり出てこない。自分が自分が、、、という自己主張はあまり感じない。でも、画家の人格が結果として深く刻印されている。この人だ、とすぐに絵を見て分かる。

彼らの「自我」は、当時の画壇を逸脱したものだったのだろう。 「型」を破らざるを得ない「型破り」の画家たちは、そうした東洋の新しい「自我」の誕生と共に胎動し始めた、ひとつの動きなのかもしれない。

実際、白隠慧鶴(はくいん えかく)は、江戸中期の禅僧だが、「わたし」を消し去った後に立ち現れてくる言葉やイメージを、悟りへの通路のように執拗に書きながら晩年を生きた人でもある。

絵をじっくり観ながら、「画家はどういう思いで描いているのだろうか」と、自分の意識を共鳴するように絵画の側からその画布の前に立って絵筆を握る画家を観ようとしたが、獏としてヌルヌルと実体がなく、つかめなかった。それだけ、彼らはイメージの世界を酔狂に遊んでいた人たちなのだろう。

「一期は夢よ ただ狂え」(閑吟集)

を実践して人生を駆け抜けた画家たち。

なんともすごいエネルギーが時空を引き裂くように音もなく静かに炸裂しているすごい世界だった。 彼らの絵を観たことがない人は、ぜひ見に行ってほしい。

最後にあった横尾忠則さんのスペシャルヴィジュアルとしての新作のポスターも、この系譜を受け継ぎながら先に進もうとしているようで、しびれた。

買ったポストカードで、だれかに手紙でも送ろう。

中から美術館のポスターを見たら、こう見える。

奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド Lineage of Eccentrics: The Miraculous World of Edo Painting 2019年2月9日(土)~4月7日(日) 東京都美術館

○みどころ 美術史家・辻惟雄氏(1932-)が、今から約半世紀前の1970年に著した『奇想の系譜』。本展はその著作に基づいた、江戸時代の「奇想の絵画」展の決定版です。『奇想の系譜』で採り上げられたのは、それまで書籍や展覧会でまとまって紹介されたことがなかった、因襲の殻を打ち破った、非日常的な世界に誘われるような絵画の数々でした。 本展では、同書で紹介された、岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳に、白隠慧鶴、鈴木其一を加えた8人の作品を厳選したラインナップになっています。 近年の「若冲ブーム」、「江戸絵画ブーム」、ひいては「日本美術ブーム」の実相をご存知の方も、またこの展覧会ではじめて魅力的な作品に出会うことになる方にも、満足いただける内容を目指しました。奇想天外な発想にみちた作品の数々を紹介し、現代の目を通した新たな「奇想の系譜」を発信する本展において、江戸絵画の斬新な魅力をご堪能ください。

公式HP

東京都美術館を見ていたら、いろいろと面白そうな予告が!

デンマークの画家、ヴィルヘルム・ハンマースホイの展示もまたあるんだ!2020年でオリンピックイヤーなのでえらい先だが、楽しみだなー。ハンマースホイの絵は、ぜひみなさん、見てほしい。存在、予感、気配、場のようなものを描いている。

ハマスホイとデンマーク絵画 https://artexhibition.jp/denmark2020/ 2020年1月21日~3月26日 東京都美術館


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