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樹木希林さんの喪失


樹木希林さんが亡くなった。個人というものを追求して普遍という無限(夢幻)の世界へと到達した人。 「なにものか」を経て「なにものでもない」人へと至った稀有な方だった。

その生き様が演技の中へと染み込んで、深みと凄みと温かみと平凡さと非凡さとが同居した稀有な女性だった。 はっきりとした存在感と、それでいて無の存在感が同居できた女性は稀有だろう。 こんなにもみんなに愛された人は少ないだろう。 何でも思ったことを素直に発言し、それがすべて真理を貫通し、それでさらに愛された人はいない。ほんとうに人類の宝だ。 

娘さんの内田也哉子さんは、いつも自分の本を満面の笑顔で絶賛してくれる天衣無縫で素直で感受性豊かな素晴らしい女性で、このお母さんにしてこの娘さんあり、という方だ。悲しみは、いかばかり深いだろう。ただ、その悲しみは樹木希林を好きな人全員のかなしみでもある。 

ご自宅で息を引き取られたという。 臨終の場に居合わせた人たちは、きっと多くの見えない光を受け取っただろう。

死は、こちらの世界から見ると生の終わりのようだが、あちらの世界では新しい生のはじまりでもあるから。


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